第37話『親子 チカコ』
ジジ・ラモローゾ:037
『親子 チカコ』
かずのみやちかこないしんのう
お祖母ちゃんが正しく読んでくれる。
「ルビが振ってあるわよ」
「あ、ああ……」
写真の下は漢字だけだけど、本文の見出しにはきちんとルビが振ってある。難しい文章は無意識にパスしてしまうんだ。ま、17歳の女子ってこんなもんだし。
「えと、お姫様?」
「そうだねえ……孝明天皇……明治天皇のお父さんね。その孝明天皇の妹さんで、十四代将軍の徳川家茂……」
「いえしげじゃないよ、いえもちだよ、お祖母ちゃん」
「え、あ、ほんとだ」
今度は、わたしが一本取る。
「文久二年……1862年にお輿入れしてるんだねえ。明治維新が1868年だから、もうちょっとで明治だったんだねえ。大変だっただろうねえ……」
「どうして?」
天皇の妹さんの嫁ぎ先として将軍様って釣り合ってると思うんだけど。
「だって、15歳だよ。ジジより二つも若くて、将軍と言っても一度も顔なんか見たことも無いだろうしね……あらあ……すでに婚約者が居たのを婚約破棄までして結婚させられたんだ」
お祖母ちゃんが示したところには『熾仁親王との婚約が決まっており……』と書いてある。これはむごいなあ。
「公武合体って言うんだねえ」
「なにそれ?」
音の響きから『サクラ大戦』の霊子甲冑光武とガンダムの合体が浮かんだ。
はっしれーー光速の~帝国華撃団~(^^♪
「公は朝廷で、武は幕府のことね。幕末で衰えた幕府の権威を天皇の妹を迎えることでパワーアップしようとしたんだね」
「ふーん、そうなんだ」
「歴史の勉強でもしてるの?」
「京都のこととか調べようとしてたら、勝手に出てきた」
「ハハ、ジージのパソコンだからね」
「不思議なパソコンだ」
そこで終わった。
だって、お昼ご飯のパスタが作りかけだったから。
予想より美味しくできたパスタとサラダを食べているうちに、和宮さんのことは忘れてしまった。
昼からは、お祖母ちゃん『輝けユーフォニアム』を借りて観る。
おづねに宇治に連れて行ってもらって、宇治を舞台にした『輝けユーフォニアム』をもう一度観たくなったのだ。
黄前久美子が宇治川の川岸のベンチ……幼なじみの秀一と座っていたり、葵と話していたり。
今日は、宇治川のせせらぎの音やら川岸のヒンヤリした空気まで感じる。
やっぱり、じっさいに行ってみると受け取るイメージがこんなに違うんだ。
場面は、吹部に入る決心がつかない久美子がベンチでボンヤリしているところに、秀一がヌソ~っと現れて驚くところ。
ウワア!
わたしもリアルに驚いた。
いつのまにか、おづねとチカコが横に座っているのだ。
ああ、ビックリした!
ん?
チカコ……和宮さんも親子(ちかこ)だったよね?
ジジ・ラモローゾ 武者走走九郎or大橋むつお @magaki018
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