第36話


ジジ・ラモローゾ:036


『かずのみやおやこないしんおう?』  






 ああ……まただ。


 ユーチューブで『宇治観光』の動画をクリックすると、了解しましたって感じでスクリーンが現れるんだけど。グルグルが出て止まらない。


 こうなると、ユーチューブそのものを終了するしかない。


 ほかに対応の仕方があるのかもしれないけど、パソコンが苦手なわたしはお手上げだ。


「うーーん、お祖父ちゃんのパソコンは難しいからねえ……」


 お祖母ちゃんでも手に負えない。


 お祖父ちゃんのパソコンはデスクトップで、どうやら、ほとんど自作したみたいだ。


「買ってきた時にはボケてんのかと思ったわよ」


 お祖父ちゃんが買ってきたデスクトップには中身がなかったらしい。


「大きなボディーの割に、嘘みたいに軽いでしょ。メッシュの隙間から覗いたら本当に空っぽなんだもの『ちょっと、大丈夫?』って頭を指さしたわよ。そしたら『アハハ、それは筐体だよ』って、筐体がボディーのことだってことも分からなかったけど、それから、いろいろパーツを集めてひと月ほどで使えるものにして、なんだか難しいから、わたしは触ったこともないからね。なんならお祖母ちゃんの使う?」


「いいよ、暇つぶしに動画見たかっただけだから」


「そーお、じゃ、使いたくなったら言ってね。あ、お昼はパスタでいい?」


「うん、時間になったら手伝いに行くね」


「あ、パセリが切れてるんだった」


「あ、ラッキー! パセリにチャレンジしてみる!」


「そ、じゃ、頼んだわね」




 ダラダラしてるよりは労働した方がいい。つっかけを履いて庭に出る。




 ノンノン茂ったパセリの株。これがパセリだと教えられた時はビックリした。


 野蛮に茂ってしまって、雑草にしか見えなかったから。


 その猛々しいパセリの奥の方から若いパセリの葉っぱをちぎってザルに入れる。


 キッチンへ持ってって水洗い。まな板に横たえて、これでもかってくらいみじん切りにする。切ると言うよりぶっ叩く。


 トントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントン


 粉みじんになったところでガーゼに包んで水に漬け、ギュッギュッって絞る。ボールの水が青汁かってくらいになるまで絞る。


 あとは、お皿にあけて自然乾燥。お昼のパスタにかかるころには立派な乾燥パセリのできあがり。


 そこまでやって部屋に戻る。




 パソコンの画面に画像が出ている。




 お雛様みたいな衣装、髪は……おすべらかし? だったっけ、天皇陛下のご即位の時の皇后さまのような姿。


 ソフアーみたいなのに掛けていて、写真で見ても分かるくらいに小柄……。


 どこかで見たような……。




 ジジ ジジ




 呼ばれて気が付いた時は、お祖母ちゃんは部屋に入っていた。写真に集中して気が付かなかったんだ。


「あ、お祖母ちゃん。この女の人、だれだか分かる?」


「え、ああ、直ったんだね……この人は……」


 十秒ほど見て、お祖母ちゃんは本棚から辞書みたいなのを引っ張り出した。


「国史大辞典?」


「うん、日本史の辞典……ええと……あ、これだわ!」


 お祖母ちゃんが示したページには画面と同じ写真が載っている。


 写真の下に名前がある。


 和宮親子内親王……かずのみやおやこないしんおう?


 プ


 お祖母ちゃんが吹き出した。




 

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