第34話『隠し忘れて宇治神社・1』
ジジ・ラモローゾ:034
『隠し忘れて宇治神社・1』
宇治神社に行きたい!
おづねが言う前に言ってやった。
前回は、口にする前に先読みされて八坂神社に行った。
八坂神社で不足はないんだけど、心の内を読まれたことがシャク!
だから、読まれる前に口にする。
心の奥では、別の所に行きたがっているのかもしれないけど、読まれるってのはやだ。自分の意思で自分の行きたいところを命令してみたい。
「ほう、宇治か……宇治十条、源氏物語終焉の地だな」
「終焉じゃないわよ、始りの地よ」
「分かった、準備しながら目を閉じろ」
「う、うん」
目をつぶると、風が吹いてきた。前回と同じく、そよ風程度なんだけど、少し強い。前よりも速く飛んでいるのかもしれない。
『なんで宇治神社なんだ? 由緒ある神社だが、八坂神社ほど面白みのある神社ではないぞ』
「……始りの場所だから」
「始まり……あそこで始まると言ったら、源平の争乱だな。源三位頼政(げんざんみよりまさ)が以仁王の令旨を受けて挙兵したはいいが、平等院に立てこもり早々と白髪首を打ち取られたところだ」
「そう言うんじゃなくて……」
『着くぞ、玉砂利の上だから立っておけ』
「う、うん」
ジャリ
ウ……素足は痛い、直ぐに持っているスニーカーを履く。
目の前に朱塗りの鳥居があって、背後には宇治川が流れる音がする。
『ここで、なにが始まったのだ?』
「『響け! ユーフォニアム』だよ、黄前久美子が北宇治高校に入って、吹部に入ろうかと思うんだけど、あまりの下手さに迷って、でも、滝昇って先生が赴任して来るんだけど、第一回目の終わりで滝先生が、ここにお参りに来るんだ。滝先生はおみくじの読み方が分からないアベックに、おみくじの意味を教えてあげて、その時アイポッドを落として、それがスイッチ入って音が流れるんだけど、それが『天国と地獄』って曲。運動会の徒競走とかリレーとかの定番曲、ちょっとコミカルで、これから徒競走みたいなドラマを暗示、雰囲気だけじゃなくて、これからのドラマが天国と地獄なんだぞって、そういう暗示でもあって、そして、主人公の黄前久美子が中学の吹部で、この曲の練習にがんばってる姿とも被って……」
『ようは、憧れたのよね』
え!?
突然の割り込みに、わたしもおづねも振り返った。
河川敷に通じる階段を上がってきたのは……黄前久美子? 一瞬勘違いしたのは、セーラー服のシルエットだったから。
「チカコ!?」
チカコ、それも、いつもの1/12のフィギュアサイズでは無くて等身大だ。
『ジジ、おまえ左手を隠すのを忘れたな』
「え!?」
あ、おづねに咲き越されるのやだったから……左手隠すのは魔よけのためで、それで、出てきたってことは?
チカコって、魔物!?
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