第30話『サービスエリア』


ジジ・ラモローゾ:030


『サービスエリア』  






 ジジ、こんなのがあるぞ。




 ぬるくなったお茶を飲み干して、マスクに手を伸ばしたところで声がかかる。


 ツケッパのパソコンを見ていたおづねだ。


「え、なに?」


 返事をして振り返ったら、高速道路のサービスエリアになった。


 おっと。


 観光バスが、わたしを掠るように進入してきて、一発で定位置に停めた。


 続いて、もう一台が隣りに侵入して、これまた一発で停止させ、わたしはバスの谷間に挟まれる。


 プシュー


 バスのドアが開いて、私服の生徒たちがゾロゾロと降りてくる。


 流れに乗ってバスの前に出ると、同じ観光バスがずらりと駐車していて、フロントガラスには『○○高校2年〇組』とお品書きみたいなのが貼ってある。


 そうか、修学旅行に行く途中なんだ、トイレ休憩だな。


 察しの通り、半分以上の生徒がトイレに向かい、残りの生徒はお土産コーナーやフードコートのあたりを目指している。


『あれはジージ殿ではないか?』


 二台向こうのバスから三十代半ばのジージが下りてきて、駆け足で駆けていく。


 他にもバスからは、先生たちが下りてきて、サービスエリアのあちこちに散っていく。


「なにしに行くんだろ?」


 中学や小学校の経験から言っても、こういう時は、先生たちは生徒と行動を共にする。


 先生たちもトイレに行ったり、お土産コーナーに行ったりして、ゆったりと監督している。


 そうだ、小学校の時は、下りるたんびに先生も交えて写真撮ったよ。


『ジージ殿を追ってみよう』


 おづねを追って行った先は、サービスエリアの変電室の裏だ。




「こんなとこに来る生徒いるんですかねえ」


 連れの若い先生が、ちょっぴり不足そうにジージに話しかける。


「いるかもしれません、ほら」


 二人連れの男子が横っちょから顔を出して、ジージは二人にサムズアップして見せた。


「お、おう」


 ハンパに挨拶すると、フラフラとよそに行く。


「偵察隊ですよ」


「喫煙ですか?」


「クスリの受け渡しかも?」


「え!?」


「関西の学校であったからね」


「そんな、真顔で言わないでくださいよ屯倉先生(;^_^」


「まあ、一本どうぞ」


「仕事中ですから」


「タバコ型の駄菓子です」


 そう言うと、呆気にとられている先生を横目にポリポリ齧った。




『修学旅行というのは、なにかと面白そうな』


「ジージの学校って、大変だったんだあ」


『他にも、修学旅行では面白そうなのあるみたいだぞ』


 おづねが、次のファイルを指さすと音がした。




 コンコン コンコン




 慣れっこになったので、視野の端っこに捉えてみる。


 やっぱり。


 チカコが怒ったような顔で窓ガラスを叩いていた。


 


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