第29話『サービスエリア』
ジジ・ラモローゾ:029
『サービスエリア』
ジジ、こんなのがあるぞ。
ぬるくなったお茶を飲み干して、マスクに手を伸ばしたところで声がかかる。
ツケッパのパソコンを見ていたおづねだ。
「え、なに?」
返事をして振り返ったら、高速道路のサービスエリアになった。
おっと。
観光バスが、わたしを掠るように進入してきて、一発で定位置に停めた。
続いて、もう一台が隣りに侵入して、これまた一発で停止させ、わたしはバスの谷間に挟まれる。
プシュー
バスのドアが開いて、私服の生徒たちがゾロゾロと降りてくる。
流れに乗ってバスの前に出ると、同じ観光バスがずらりと駐車していて、フロントガラスには『○○高校2年〇組』とお品書きみたいなのが貼ってある。
そうか、修学旅行に行く途中なんだ、トイレ休憩だな。
察しの通り、半分以上の生徒がトイレに向かい、残りの生徒はお土産コーナーやフードコートのあたりを目指している。
『あれはジージ殿ではないか?』
二台向こうのバスから三十代半ばのジージが下りてきて、駆け足で駆けていく。
他にもバスからは、先生たちが下りてきて、サービスエリアのあちこちに散っていく。
「なにしに行くんだろ?」
中学や小学校の経験から言っても、こういう時は、先生たちは生徒と行動を共にする。
先生たちもトイレに行ったり、お土産コーナーに行ったりして、ゆったりと監督している。
そうだ、小学校の時は、下りるたんびに先生も交えて写真撮ったよ。
『ジージ殿を追ってみよう』
おづねを追って行った先は、サービスエリアの変電室の裏だ。
「こんなとこに来る生徒いるんですかねえ」
連れの若い先生が、ちょっぴり不足そうにジージに話しかける。
「いるかもしれません、ほら」
二人連れの男子が横っちょから顔を出して、ジージは二人にサムズアップして見せた。
「お、おう」
ハンパに挨拶すると、フラフラとよそに行く。
「偵察隊ですよ」
「喫煙ですか?」
「クスリの受け渡しかも?」
「え!?」
「関西の学校であったからね」
「そんな、真顔で言わないでくださいよ屯倉先生(;^_^」
「まあ、一本どうぞ」
「仕事中ですから」
「タバコ型の駄菓子です」
そう言うと、呆気にとられている先生を横目にポリポリ齧った。
『修学旅行というのは、なにかと面白そうな』
「ジージの学校って、大変だったんだあ」
『他にも、修学旅行では面白そうなのあるみたいだぞ』
おづねが、次のファイルを指さすと音がした。
コンコン コンコン
慣れっこになったので、視野の端っこに捉えてみる。
やっぱり。
チカコが怒ったような顔で窓ガラスを叩いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます