第3話『お祖母ちゃんとアニメ』
ジジ・ラモローゾ:003
『お祖母ちゃんとアニメ』
ジージは早期退職というのをやった。
それまでは二十五年くらい高校の先生をやってた。
二十五年て、あたしが、もう十年歳とって「ああ、もう若くねえなあ」なんて言い始めるくらいの年月。
想像つかないけどね、その二十五年の教師生活に打たれたピリオドが『願により本職を免ず』なんだ。
なんか風が吹いてきた、エアコン君のじゃなくてね、心の中にさ。
心の中に吹く風って、萎えちゃうんだよね……ひとまず止めてココアを飲みに行く。
「お手上げかい?」
「ううん、ココア気分」
お祖母ちゃんに気取られるのやだから「さてと!」と掛け声かけて再挑戦。
がんばったけど、やっぱエアコン君は世間の風しか吐き出さない。
それも、夜になったので、より冷たい世間の風だ。
キッチンに戻って、お祖母ちゃんと晩ご飯作った。
炊き込みご飯 かす汁(豚肉が入ってるので豚汁と言えなくもない) 出汁巻き卵 温野菜
お祖母ちゃんは、もう一品作りたそうだったけど、あたしはそんなに食べないからと断る。
遠慮してるわけじゃない。お祖母ちゃんが変なのだ。
年寄りのくせにアニメが好きで、アニメの中で女の子がいっぱい食べてるところとかが嬉しいらしい。
京アニの名作『けいおん!』なんか観てて、放課後のティータイムが大好き。『けいおん!』のメンバーが楽しそうにティータイムしていると幸せな気分になって自分でもお茶を淹れるそうだ。キャラ的には『ガルパン』の五十鈴華がイチオシなんだって。華道家元の娘で、立ち居振る舞い言葉遣いなど完璧なお嬢様で、あんこうチームは四号戦車の砲手で無類の射撃名人なんだけど、食べる量がハンパじゃない。まあ、ギャップ萌えっちゅうやつなんだろうね。
離れて住んでるのに、なんで知ってるかと言うと、よくお父さんに電話してくるから。
「五十鈴華って大飯食いなのよ!」
なんて一々ゆってたからね。
夜は、お風呂に入った後、お祖母ちゃんといっしょに寝る。エアコン君が働かないジージの部屋の寒さはハンパじゃないからね。
ためらう気持ちが無いわけじゃないけど、これからいっしょに暮らすんだ、乗り越えるものは早く乗り越えておいた方がいいってこともあるしね。
ちょっぴり心配した加〇臭なんかしなかったしね。
ジージの退職辞令の話、聞きそびれる。
エアコン君をどうしようかとかも思ったけど、布団に入ったら五分もたたずに爆睡してしまった。
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