第4話『パスワードは二回目でいけた!』
ジジ・ラモローゾ:004
『パスワードは二回目でいけた!』
ジージの家に来るにあたってスマホを手放した。
停学中は友だちとかと連絡を取ってはいけないと指導されてる……のを律儀に守っているというわけじゃないんだ。
学校からも電話とかメールとかくるしね。友だちとかからもウザいしさ。
で、指導されてることを理由に家に置いてきた。
それで困ったんだ。
人恋しくなったわけじゃないよ。
エアコンの事をねスマホで調べようっ思ったのさ、修理とか手入れとかについてね。
「ジージのパソコン使っていい?」
お祖母ちゃんに聞いてみる。
「パスワード分からないわよ」
開きかけたラノベを伏せて祖母ちゃんが答える。
「メインのは、初期化してわたしが使ってるんだけどね、サブのやつは分からないのよ。ま、大事な情報は、みんなメインにあったしね」
「じゃ、開けたら使っていい?」
「うん、いいわよ。なにか新発見があったら教えてね」
そう言うと、再びあたしでも知ってる古いラノベのページをめくって、最初のページでアハハと笑ってる。
パスワードは二回目でいけた!
ji-jiと四文字打った後で、ジージの生年月日をいれてみたんだ。
これはダメだった。ベタすぎるよね。
それで、二回目はjijiと四文字打って。あたしの生年月日を入れてドンピシャだった。
ジージの愛情……というよりは、まあ、孫の生年月日なら漏れる可能性低いだろうしね。
うわああ……。
なんと壁紙は、中学入学の時のあたしの写真だ(n*´ω`*n)。
ま、それは置いといて、必要なことを検索する。
「エアコンのお手入れ」と打ってエンターキーを押す。
直ぐに分かった!
氷山の一角という言葉が浮かんだ。
というのは、エアコンと言うのは室外機があるという事実だ!
そうなんだ、エアコン君は室内機と室外機の兄弟でワンセット。
普段は室外機なんて見ないからさ、うっかり、その存在を忘れてるんだよね。
室外機手入れの方法というのを読んで、エアコンクリーアーのスプレー缶と歯ブラシの古いのを持って庭に回った。
ウッワーーー!!
室外機のヒダヒダってかフィンが完全に目詰まりしている。
なんか、泥色のフェルトで一面を覆ったみたいになって、通気能力を完全に失っている。
地面に接するところはコンクリートブロックの上にプラスチックの台が載ってるんだけど、カビだかコケだか分からないのに覆われていて、ラピュタに出てくる天空都市の遺跡みたくなってる。
まずは、泥落としだ。
ヨッコラセと、室外機を動かす。
すると、頭上からダクトやパイプを覆っている劣化したあれこれがハラハラと落ちてくる。
パイプを揺すって、これ以上落ちてこないことを確認して、いよいよ歯ブラシでヒダヒダの掃除。
ゴシゴシ擦ると面白いように詰まってたのが落ちていく。
詰まっているのは、ホコリに動物の毛……ネコ? 鳥? それに葉っぱとか葉っぱの砕けたの。そういうのを八割がた取ったところで、スプレーをブシャーっとかける。
ジュワジュワジュワワワ……すぐに泡立って、しばらくすると真っ黒けの汁になって滴り落ちる。
きっちゃねー!
これを二回繰り返すと、真っ黒だったヒダヒダが大方シルバーの地金の色を取り戻した。まだ三割ほどは黒いんだけど、もうほっとく。
スプレーが空になったのと、心が折れそうになったから。
「室外機なんて初めて見たわ……」
いつのまにかお祖母ちゃんが後ろに立って眉をひそめている。
「アハハ、これで直るといいんだけど……」
家に入って、シャワーを浴びて着替える。
シャンプーまでやったので、風邪をひかないようにワシャワシャ拭いてジージのドテラみたいなのを羽織る。
「じゃ、いくよ……」
「うん!」
お祖母ちゃんに立ち会ってもらってエアコン君のスイッチを入れる……。
ブィ~~~~~~~~~ン
それまでとは微妙に違う起動音がして、エアコン君は設定よりも一度低い暖気を吐き出しはじめた。
まあ、85%くらいの回復。
めでたしめでたし。
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