第30話 戦争で大事なこと
「戦争で一番恐ろしいのはやさしさだ」
ある士官がそういった。
「ほう、それは興味深い話だね」
士官の友人である若い政治家が、そう答えた。
「いやはや、戦争に出ているとね……どうしても恐ろしいやさしさというものがあるのさ」
士官はそういうと、一本の棒を取り出す。
「これは……なんだい?」
若い政治家はそれを見る。
「それはね、先日平定した現地民が使っていた矢さ」
「奇妙な先端をしているな。これがなんで優しいんだ?」
すると、士官は苦笑いしながら言った。
「彼らからすると、この返しがあるおかげで人は即死しない。じわじわと感染症で苦しむのに、一思いに殺さないことが優しさだったそうだ……おかげで、私の部下も数人脚を切ってしまったよ」
それを聞いて、若い政治家は身震いした。
了
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