第29話 太公望の釣り
太公望は釣り糸を垂らす。
釣り針は真っ直ぐだ。
もちろん、魚はつれない。
「ははは、この男魚釣りを知らないな」
「馬鹿な爺さんだ!」
周辺の口汚い住民は太公望を罵った。
しかし、太公望は必ずこのように返すのであった。
「ふはは、儂はもっとでかいものを釣ろうとしているのだよ」
太公望はそれを街に行っても言うのであった。
常に何かでかい物を釣ろうとしている。さらに彼の弟子である武吉は言う。
「師匠は奥の書物を読みその知識は三皇にも通じる」
そのようなことを常々言うのだ。
武吉は街でも有名な無骨な木こりだ。その武吉がそのようなことを言うということは、そんなにあの男は何か巨大なものを釣ろうとしているのだと街では噂になった。
さて、そんな噂がうわさを読んでついには文王の耳に入る。
「ふむ、賢人が大きなものを釣ろうとしている、それは私のことであろう」
こうして、文王は太公望の元に向かい礼を尽くして軍師として迎え入れたのだ。
「何とも計画通りよ」
文王に招かれた太公望は笑う。
「畏き人は無意味に仕掛けられたものを大きく見る。儂という額を治めただけの老人の価値を、文王は何とも大きく見たものよ」
桃をたべながら、そのように笑っていた。
しかしながら、それを聞いていた武吉は思う。
(それを思いつくからお師匠様は招かれたのでは?)
と。
了
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