第12話 自閉症は恥じゃない

「先生、私の息子……自閉症なんですか?」

「はい、おそらく高機能自閉症です」

 母親は顔を青ざめさせる。

 自閉症というのは、世間一般からすればマイナスイメージだ。母親は、慌てる。

 が、医者はにっこりと笑う。

「大丈夫です、お母さん」

 優しい声で言った医者の一言に、母親はきょとんとする。

「何が大丈夫なんですか?」

 医者はゆっくりと母親に語る。

「お母さん、世間一般で大成している人の中には、自閉症とされている人は多いです。また、物語の主役とされる人にも、自閉症と思われる人が多いです」

 じっと母親の眼を見て医者は言う。落ち着いたほほえみを浮かべながら、医者は言葉を続ける。

「自閉症、というのは周囲の理解と導きによって普通の子では至れない場所に行ける可能性もあるのです。実際、息子さんは今昆虫に夢中で、だれよりも詳しいでしょう?」

 母親はうなずく。

「自閉症とは、ただ発達の偏りがあるだけなんです。それを、周囲のサポートによって伸ばしていけば立派な人間になります」

「……ほう」

 医者は、上を見て遠くを見て、いうのであった。

「いや、斯く言う私もおそらく自閉症でね。両親の支えがなければ、医師にはなれなかったですよ。お母さんが起因と支えれば、自閉症なんてハンデにはなりません」

 それを聞いて母親は安心する。

 自閉症の中でも、高機能自閉症という知的障害を併発しない自閉症の子は周囲のサポートできちんと社会に適応できるのだ。



          了

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