第6話 ぼんやりと迫りくる唯ぼんやりした不安がぼんやり見えてくるのです
自宅の書斎で芥川龍之介は悩んでいた。
自分の将来に対する唯ぼんやりした不安がぼんやりしたままぼんやりした足取りで迫りくるのだ。
ぼんやりした不安が、日々自分の方をぼんやりした足取りで来るのである。
案となしにぼんやりしたそれが、ぼんやりしたままに、ぼんやりと輪郭すら失ってくるのである。
それが自分の将来に対するただぼんやりした不安であるのだが、それがただぼんやりしたままにぼんやりとくるこの感覚は、自分自身の自我すらもぼんやりとしたままにあいまいにさせる。
目の前に、ただぼんやり存在してぼんやり何となしに不安がある。
何が危険かというといえないが、ぼんやりと危機感を覚える。
ふっと、芥川龍之介は原稿用紙を見る。
「このぼんやりがぼんやりとしていることが真に理解できた時、ぼんやりと私は死ぬのだろうな」
1926年のある日のことである。
了
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