第5話 川へ洗濯へ行ったおばあさんの悩み
おばあさんは川の前で呆然としていた。
なんてことはない、今目の前に巨大な桃が流れているのだ。
どんぶらこどんぶらこ、そんな擬音が湧きそうな長閑な風景であるが、巨大な桃が浮いている。
物理的に水上に浮いているし、絵面的にも浮いている。
「……これは、桃ですかのぉ」
おばあさんは桃をじっと見て、そうつぶやいた。
どっからどう見ても、桃だ。立派な、桃である。しかしながら、おばあさんの身の丈の半分くらいある桃だ。
でかい。
大ぶりなものはまずい、というのはよく言われることだ。
おばあさんはこの桃はまずいと思った。
「うむ、見なかったことにしましょうかの」
おばあさんはそのまま桃を見逃した。
桃はどんぶらこどんぶらこと下流に流れていった。
結局、その後鬼が島に住む悪辣な鬼によって町は滅び、おじいさんとおばあさんは刈った柴を売りに行く相手がいなくなって、窮乏の中死んでしまったのである。
了
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