すっかり見慣れた場所

「んん?俺は確か?」


地面の固さと、少しばかりひんやりした感触に目が覚める。俺の記憶では、ナフティカを倒したあと、フェータにいる、ティターンさんに報告に行き。その後フェータで馬鹿騒ぎをして、家に帰りベットにダイブしたはず...


なのだが、ようやく視界が良好になり。辺りを見渡すと、そこは自分の部屋などではなく。

何もない白い空間、終わりはなくただただ真っ白いだけの空間...

そしてつい最近、何なら昨日来たばかりの空間だ。

ここは、


「転生の間じゃねぇか!」


いや、なんでだ?さっぱり分らない?もしかして騒ぎすぎて死んだか?そんなあほな話あるか?

考えれば考えるだけ分らなくなる。

1人考えながら唸っていると、目の前の空間が歪み、人が、いや神様が現れた。


「あぁ、ドゥエサス...じゃない!」


目の前に現れたのは、最高神でお爺さんの神などではなく、見た目は完璧なお婆さんだった。

これはもしや...


「ドゥエサス、お前...性転換できるのか?でも何故お婆さんなんだ?どうせ性転換するなら、もっと可愛くて、若い女の神とかになればいいのに?」


「若くなくて悪かったね、そしてあたしゃドゥエサスじゃないよ」


ため息混じりに、お婆さんが返答していると、また空間が歪み、そこからドゥエサスが「すまん、遅れた」と軽い感じで現れた。

では、この目の前にいるお婆さんは一体何なのか?そもそも何故俺は、此処にいるのか?わからない事はどんどん増えていった。


「そうじゃった。シオンは、初めて会うのじゃな。このババアはニュクス。わしの嫁じゃ」





「いやぁ、ニュクスさんも大変ですね」


「ケェケェ、本当だよ」


ドゥエサスに紹介してもらい、すっかり意気投合した俺と、ニュクスさん。お互いこの神様に色々苦労を掛けられてる。


「ところで、俺はどうして此処にいるんですか?」


ちょっとお話が楽しすぎて、本題を忘れる所だったが、俺はまだ此処に来た理由を教えてもらっていない。話していた限りでは、死んではいないと思うけど。


「そうじゃな、此処に呼んだのは、お主にお願いがあるのじゃ」


「お願い、一体どんな?」


「それは...」


「ゴクッ、それは?」


ドゥエサスは、かなり間を取って焦らしてくる。俺も思わず唾を飲み込んでしまう。この一瞬に緊張が走る。神様からのお願いが一体どんな物なのか!?


「世界を救って欲しいのじゃ」


「はい?」


訳の分らないお願いに、思わず素っ頓狂な声が出てしまった。ドゥエサスの横で「こりゃダメだ」みたいな顔をしているニュクスさんを見て。言葉が足りてないのだけは分った。



「お主が戦った、ナフティカ。あの者は、邪神の使いじゃったろ?その邪神の名はティファ。そいつを、お主に倒してもらいたいのじゃ」


お願い自体は、よくある物だし、異世界転生の醍醐味の1つと言ってもいい気がするのだけど。そのお願いをしている時のドゥエサスの顔は、どこか苦しそうで、何かを決断した表情に見える。その表情が俺の頭の中に強く焼きついていた。


「ティファは、元々はとてもいい神じゃった。だけどある時、邪神になってしまってのぅ。そして今、奴はシュテルクスト内に何人か、使いがおる。ナフティカもその1人じゃった。ティファの最終目標はおそらく、あの世界の支配じゃと思う。じゃから、それを何とか食い止めて欲しい」


話は理解できた。もちろんこれに協力はするが、ドゥエサスが「最終目標は」と言っていた事から。おそらく、まだ時間があると考えられる。それまで俺は、邪神と渡り合う為にこれからも強くならなくてはいけない。

そんな事を考えていると。徐々に体が薄くなった。


「シオン、時間のようじゃな。今度はシオンからこの空間に来てもよいのじゃよ」


「またあんたは、半神とはいえこの場所と、シュテルクストを行き来すると面倒だろぅ、まぁ遊びに来たくなったら来るといいさ」


「分りました、色々ありがとうございます」


俺は2人に一礼して。転生の間での意識が消えていった。





「戻ってこれたか」


次に目を覚ますと、そこは馴染んだ部屋、見慣れた天井だった。起き上がらずに首を動かすと、そこには俺の片手を持ちながら、ベットではなく地面に座りながら、寝ているルリの姿があった。起こすのは、若干引けたが、仕方ないと思いつつ肩を揺さぶった。


「おい、ルリ夏だから暖かいけど、風邪引くかもしれんぞ」


「んん?あれ、し...おん?」


「ん?どうした?」


ルリは眠そうな目を擦りながら、何度も俺の顔を見つめてくる。ルリは可愛いから見つめられるだけで、俺もドキッとしてしまう。だがルリは違ったようだ。


「あぁ、シオン、う、うぇぇぇぇぇん」


「え、何?どうした?!」


急に号泣し始めて俺は、パニックに陥った。ルリの声に吊られたのか、キャロとシャロが俺の部屋にやって来た。この状況の説明を頼もうとしたら、2人まで俺を見た途端泣き出してしまった。

その状況に俺は、さらにパニックに陥った。

結局、3人が泣き止むまで、俺は待ってるしかなかった。

と言うか、俺も泣きたい。本当になんなんだよ状況










~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ニュクス「シオン、何か困ったことがあれば、わしを頼りな」


シオン「分りました、ニュクス様」


ニュクス「ケェケェ、堅苦しいね、さんでいいよ」


シオン「分りました、ニュクスさん」

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