今までで一番気まずかった時のこと
まぁ色々ありますけどね。
これまでに書いた、バーで知らない子の肩に血液付着させたときとか。人間ってなんで煙になったりできねぇんだろうなって思ったし。
私ならではの気まずいことを考えてみると、母のことを書こうという気持ちになりました。ほら、レズが彼女とイチャついてるところを誰かに見られるとか、結構ありがちなので。私ならではって感じじゃないんですよね。ちなみに私はイチャ付いてるところじゃなくて、彼女がイチャつこうとしてるのに「なんでそんなことしなきゃいけないの?(半ギレ)」なところを母に見られたことがあります。せめて彼女大事にしてるとこ目撃されろよお前。
というわけで今回は母との気まずい出来事を。
突然なんですが、私の母は腐女子なんですよね。なんか腐マダムを自称してます。その娘が美少女を自称してるということになりますね。気狂い一家だな。
で、母のBL好きってすごい昔からなんですよね。学生時代はスケバン的な不良だったんですが(昔の写真見せてもらったらヨーヨー装備してそうな風貌でクソ笑いました)、何をどう間違えてあんなになったのか……。
私は母の趣味に口出ししたりしないですが、すごい&怖いと思ってました。毎月毎月ツタヤの新刊情報(色んな出版社から出る漫画が細かい字でずらーーーっと書いてあるやつ)をチェックしては、メモ帳に作品名と作者名を書き込む熱心さね。
母はこんな感じで毎月新刊をチェックしては、カウンターで注文して帰る、ということを繰り返していました。
BL本のエッチなやつって、ホントに「いやそれやべぇよ」ってタイトルの作品があるんですよね。入荷連絡の電話を受けるとき、若い声の男の子がそれを読み上げてくれたときの母の笑顔。いやね、マジでヤバいから。にこっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥ ってしてる。
バイトくん「ツタヤですー。入荷連絡でお電話しましたー」
ママン「いつもありがとう。タイトルは?」
バイトくん「えぇと、数冊ありまして」
ママン「あらそうなの! なんてタイトル?」
バイトくん「…………………………○○○○○○○○○(えっちなタイトル)と、△△△△△△△△△(えっちなタイトル)」
ママン「はぁい♥ 分かりましたぁ♥」ガチャッ
ママン「ねぇ〜!!♥♥ お姉ちゃん聞いて聞いてー!♥ 今ねー!♥」
ななせ「聞いてたよ(この人マジでやべぇな)」
こういう感じのことがあったんですよ。で、私も母も、なんなら妹二人もみんな漫画が大好きで、結構な頻度でみんなでツタヤに行ってたんです、当時。
ある日、私は雑誌の在庫を調べてもらうのに、レジカウンターの横に立ってました。私の対応をしてくれている店員さんはどこかへと走って行ったので、その場でぼーっとしてました。そこは予約受付等をする場所なので、お会計の邪魔にもならないところです。戻ってくるのに時間掛かりそうだし、椅子に座ろっかなーっと思ったその時でした。
カウンターを挟んだところにいる、若い男性店員二人の会話が聞こえてきました。レジに背を向けて少しだけ小声で話していましたが、私がそんなところにいたから聞こえたんです。
「それ入荷?」
「うん。これから電話する」
「多くない……? あ、いつものあの人か」
「うん。BLおばさん」
BLおばさんとか、小学生も思い付かないようなあだ名やめろ。
私は「BLおばさんって呼ばれるおばさんが存在する」ということに驚きつつ、笑いを噛み殺しました。
そして背後から私を呼ぶ母の声。
雑誌を探してもらっているところだと伝えた直後、鳴る母の携帯。
もういやだ。それは駄目だ。
だけどやっぱりBLおばさんは私の母でした。
カウンター越しに会話してる店員さんと母。母は男の子に「ねね!♥ 後ろ見て!」とノリノリでした。まさか店にいるとは思ってなかったみたいで結構ガチめに驚いてて面白かったです。あとお前気付いてないと思うけど、実の娘にBLおばさんとかいう激んこ失礼くさいあだ名聞かれてるからな。
そして母が私のところにやってきたのは、私を探す為ではありません。母はお会計をしにきたのです。そう、たった今バイトくんが入荷連絡入れたBL本を。
ダブって買おうとするのやめろ。恥ずかしいだろうが。バイトくんは快く「大丈夫です! 戻しておきますんで!」って言ってくれたけど。うちは確信したね。これ絶対BLおばさん武勇伝となって後でバイト連中に共有されるだろって。
あぁ、でも、馬鹿にする感じじゃなかったのが唯一の救いですね。面白い変なおばさんとして認知されてるっぽかったです。
車に乗り込んでから、その話を母に伝えました。BLおばさんって呼ばれてるよって。まぁ母は怒ってましたね。
「やー! 普通おばさんでなくてマダムって呼ばないかい!? こんな綺麗なのに! 言葉知らないのかい!?」って。
「あ、そこなんだ」って思いました。
いやビビるかもしれないけど、これ前フリなんですよ。
お前自分の母親がBLおばさんって呼ばれてること以上に気まずい気持ちになったことあるの? ヤバくね? って思うでしょうが、あるんですよ。
まぁこんな感じで、私の母のBL好きってマジでガチなんですね。
自分で作品を書く程じゃないですが、私もBLは普通に読めます。面白いですよね。
実家に帰省すると、母はおすすめの本を数冊貸してくれるんです。2、3冊ですかね。ちょっとした隙間時間に読める感じの量です。
ある年、帰省した私は妹の部屋にいました。何してたか覚えてませんが、多分ゲームとかしてたんだと思います。そこに母がノックをして現れました。
「お姉ちゃん、これ読んでね!」
手渡された本は可愛い絵柄のBL本。ふむ、今年はこう来たか……等と考えながら受け取り、私はすぐに本を開きました。何故か私の横に座る母。母と妹は何やら話をしています。
「お姉ちゃん、それ短編集だから。最後のお話読んだ方がいいよ」
「そりゃ読むよ」
「いま読んだ方がいい」
「えぇ……? できれば順番に読みたいんだけど……」
「大丈夫。ちょっと繋がってるとか、そういう話じゃないから」
「わ、わかった……」
やけにしつこい母。折れてしまった私。
最後のページを開いて異変に気付いたっていうか、多分一瞬顔に出たと思います。
あのさ。
BL漫画の短編集に百合作品載せるのやめろ。
母は明らかに私の反応を見ている。ネットでこんだけ「うん、レズだよ」って言ってますけど、親には言ってないんですよね。なんか言うタイミング失った感じっていうか。今更なんて言うねんっていう。多分、母親も気付いてはいるんですよ。
漫画は、なんか淡い恋みたいな短編だった気がする。思春期特有の一過性の……みたいなオチじゃなくて、ちゃんと百合として成立してる、そこそこ幸せなハッピーエンド、だった、ような。いや、覚えてないんですよね。
逆に聞くけど、自分の母親が自分のセクシャリティ見極めの為に秘蔵の百合漫画貸してきて平常心で読める?????????????????
読んでる最中、ずっと横から顔覗き込まれてるの。やめれやって思ったけど、反応したら負けだって思ったから黙々と読みました。
そして求められる感想。もうね、意味分かんない。
「感想……? いや、いいんじゃない?」
「ホントに? ねぇ、百合……………好きだよね?」
「う………………………………………………………ん、まぁ好きだけど」
「ちょっと待ってて」
妹の部屋を出た母は、何かを抱えて戻ってきました。3冊くらいある。
「百合好きだったっけ、これも読んだらいい」
「ふふ」
追加で出てくるとは思ってなかったから思わず笑っちゃったよ。
あれ、マジでなんだったんでしょう。母なりに言い出すきっかけを作ってくれようとしたのかもしれません。カミングアウトのきっかけがBL漫画のおまけの百合漫画とかイヤだわ。
そのあとは普通に百合漫画を読んで返しました。それまで知りませんでしたが、母はBL漫画に収録されている漫画の他に、BL作家を作家単位で追いかけているので、その作者達が描いた百合漫画も一部カバーしていたのです。すげぇよ。そういえば、水城せとなの放課後保健室とか、母に教わったような……。あと、BL漫画にはゲイにかっこよくアドバイスするレズビアンのお姉さんとか、たまに出てきますしね、多分元々嫌悪なんてないんだと思います。
というわけで、今までで一番気まずかったこと。
母(BLおばさん)に百合漫画を読んでるところをじっくり観察される、でした。
こんな理解ありそうな母に打ち明けない私、ちょっとおかしいですよね(笑)
次点は、彼女を連れて帰った時にお茶碗が用意されてて「これ○○(彼女の名前)に買ったの?」って聞いて、「うん、家族が増えたんだからね」って言われたときですね。あれもかなり気まずかったです。あ、その人とは別れました♥
お茶碗用意してくれたのに……ごめんな、ママン……。なんかそれを買った時の母の気持ちとか想像したら申し訳なさで結構死ねますね。
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