結婚の話

「……兄さんって本当に良く寝ますよね」


 有栖を抱いた翌日、貴音はいつものように彼女を抱いて寝て、今起きたところだ。

 今の時刻は十時を過ぎ、いつもより遅い時間。


「おはよ。昨日は初めてしたから」

「そうですね。それでも寝過ぎですが」


 昨日のことを思い出しているのか、有栖の顔は真っ赤。

 でも、とても幸せそうな顔をしており、優しく下腹部を触っている。


「避妊具なかったし、そのまま出したから妊娠するのかな?」


 昨日は貴音も興奮してしまっために、後のことは全く考えていなかった。

 一応、昨日は安全日のことだけど、妊娠する可能性だってゼロではない。


「私は兄さんとの子供なら喜んで産みますよ。たとえ学生の内だとしても」


 だから兄さんは気にせず、好きな時にしてください……そんな風に思える顔で有栖は貴音のことを見る。

 有栖の愛を感じた貴音は思い切り抱きしめた。


「お風呂じゃないのに裸は少し恥ずかしいですね」

「いいじゃないか。有栖の綺麗な肌を見放題だし触り放題」


 色んな刺激に敏感な肌なのに一切の汚れがなく、触るとスベスベで潤いを保っている。


「んん……兄さんが興奮したらいつでもしていいですけど、まだ少し痛いので控えてほしいです」


 昨日初めてだった有栖は、一晩たっても違和感が消えない。

 どうしてもしたいと言うならするけども、今は遠慮してくれると嬉しかったりする。


「そうだな。取り敢えず服を着るか」

「はい」


 おはようのキスをしてから、二人は服を着ていく。


☆ ☆ ☆


「有栖の手料理食べれるの幸せ」

「ふふ、ありがとうございます」


 服を着てから一通りの家事をして、貴音と有栖は昼御飯を食べている。

 有栖が本調子でないからいつもより簡単であるが、貴音にとって彼女の手料理は何でも美味しい。

 昨日は体力を商品してしまったし、いつもより美味しそうに貴音は食べている。


「有栖と結婚がしたい」

「唐突ですね。私も兄さんと結婚したいですよ」

「よし、今から役所に行って届けを出そう」

「どうしてそうなるんですか? 法律的に来年にならないと無理ですよ」


 高校二年生の貴音は来年の誕生日を迎えないと結婚することができない。


「じゃあ、十八歳になった日に役所に行って届けを出す」

「本当に兄さんは兄さんですね。いずれ結婚することは決まっていますから、急がなくても大丈夫ですよ」


 できることならきちんと就職してから結婚をしたい。

 もう兄妹としてじゃなく恋人として見てくれることは嬉しいが、いくら何でも焦りすぎだ。


「絶対に結婚するから」

「はい。約束です」


 二人は右手の小指を絡めて、指切りをした。


「結婚したら新婚旅行だ」

「本当に気が早いですね」


 結婚することは決定していることだが、もう新婚旅行の話をしてくるとは有栖も思っていなかった。


「父さんたちが今行ってるからさ」

「そうですね。新婚ってわけではないですが」


 二人の両親は六月から旅行で、もう二ヶ月ほど帰ってきていない。

 そのおかげでイチャイチャできるのだから全く問題ないのだけど。


「お盆には一度帰ってくるって先日連絡がきましたよ」

「そうなの?」

「はい。流石にお盆に帰ってこなければ私は怒ります」


 今の家族も大切だろうけど、きちんと前の家族も大事にしてほしい。

 だから命日やお盆の時は必ず家族で墓参りに行く。


「そうだな。皆に有栖とのことを知らせないといけないし」

「そうですね。兄さんのシスコンぶりは母さんたちも分かっていると思いますから、予想くらいはしていそうですけどね」


 貴音のシスコンは両親も知っており、特に母親は有栖を虐めから救ってくれたことに感謝をしている。

 だから両親は二人の関係を認めてくれるだろう。


「俺はシスコンではないのに……」

「どんなに否定していても、兄さんがシスコンなのは変わりないのですから」


 今や妹に性的興奮を覚える貴音は、完全にシスコンである。

 でも、貴音はシスコンなのを絶対に認めることはない。


「俺がシスコンだったら、全国のお兄さんはもっとシスコンだ」

「全国のお兄さんは妹のことを抱かないので、兄さん以上のシスコンは滅多にいませんよ」


 有栖の言葉に貴音は「なん……だと……」と驚いてしまう。


「……兄さんって本当に変です」


 やれやれといった感じで、有栖はため息をつく。

 初めて話した人ですらシスコンと感じてしまうほど重度なのに、何故こんなにも認めないんだろう? と有栖は思う。

 シスコンである分には全くもって問題ないことだが、少しは認めてもいいような気がする。

 こんなことを考えながらお昼が過ぎていった。

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