告白……そして……

「夜景が綺麗です」


 色んなアトラクションに乗った貴音と有栖は、最後に遊園地デートの定番である観覧車に乗っている。

 二人が住んでる街はそんなに都会ってわけではないが、電気の灯りで綺麗だ。


「そうだな」


 貴音の綺麗だと思って頷いたけど、有栖は不満そうに頬を膨らます。


「そこはテンプレのように有栖の方が綺麗だよって言うとこですよ。そんなことを言えない辺り兄さんですね」


 やれやれ……といった感じで、ため息をつく有栖。


「有栖の可愛さ、綺麗さは宇宙一だからな。他の何かと比べるのは失礼ってものだ」

「兄さん……本当にしょうがないシスコンなんですから」


 そんなことを言いながらも有栖はニヤけている。

 その理由は至極簡単な理由で、貴音が有栖のことを他の何よりも一番だってことを言ったからだろう。

 有栖にとって貴音に褒められることが嬉しいのだから。


「だから俺はシスコンではない」

「まあ、もう兄さんがシスコンであろうとなかろうとどうでもいいことですけどね。こうやってイチャイチャできますし」


 ベンチの時と同じように、貴音に身体を預ける有栖。

 遊園地で二人きりになれる場所は少なく、有栖は貴音の言葉を待っているかのように上目遣いで見つめてくる。


「有栖……」

「はい……」


 もうすぐ頂上に差し掛かろうとした時、貴音は真面目の顔で口を開いた。


「俺は昔から有栖のことが好きだったけど、それは妹としてだ」

「はい。兄さんのシスコンぶりは他者から見ても凄かったですからね」

「だからシスコンでは……今はそんなことを言っている場合じゃない」


 シスコンがどうこうより、貴音には有栖に大事なことを伝えなければならない。

 最近はずっとイチャイチャしているから、貴音の言葉を有栖が拒絶することはないだよう。


「今まで彼女欲しいとか思ったこともなかったし、有栖が側にいてくれたらそれでいいと思っていた」

「はい。それは前から言っていましたね」


 学園のアイドルである可憐の告白を断るくらいに貴音は有栖優先。

 それはこれから先も変わることはないし、ずっと有栖から離れることはないだろう。


「でも、今は兄妹って関係じゃ我慢できなくなってきた。兄妹のままではこれ以上の発展は望めない。だから……」


 恥ずかしくなってきて、貴音は言葉に詰まる。

 少し前まで妹として好きで溺愛してきた……でも、今は妹としてだけじゃない。


「兄さん、頑張ってください」


 有栖からの声援。それが恥ずかしがって言えなくなっていた貴音に勇気を与えてくれて、続きの言葉を口にした。


「俺は……有栖のことが妹としてだけでじゃなく、一人の女の子として好きだ。だから俺と付き合ってほしい」


 産まれて初めての告白……やっぱり緊張してしまい、貴音は身体は震えてしまう。

 相手の気持ちがわかってはいても、告白というのは勇気がいる。


「兄さん……私は出会った時は何とも思っていませんでした」

「だろうな」


 有栖が丁寧な喋り方をしているのには理由があり、人と関わりたくなったから。

 昔からこの外見のせいで差別されてきたのだから、人と関わりたくない思っても仕方ない。

 母親の再婚で貴音が兄になったけど、親しくするつもりはなかった。

 でも、それは貴音がいじめから救ってくれる前の話。


「最初は兄さんと話すこともしたくありませんでしたが、兄さんは私に生きる意味を与えてくれました。本当にそれが嬉しかったです」


 もし、いじめを止めさせてくれなかったら、有栖は引きこもっていたかもしれない。

 部屋から出ずにずっと一人で生きる意味もなく、もしかしたら自傷行為だってしていた可能性もある。

 それほど有栖にとっては辛かったことなのだ。


「そこからずっと兄さんのことを意識してしまい、ブラコンになってしまいました」


 いじめから救ってくれただでなく、自分のことを綺麗と思ってくれた。

 それは有栖にとってこれ以上ないくらい嬉しくて、兄を好きになるのには充分なくらいに。


「そして兄さんに抱きしめられて寝るようになってからは……完全に異性として意識してます」


 有栖も顔を真っ赤にして告白をした。


「だから私を兄さんの彼女にしてください」

「ああ、もちろん」


 義理の兄妹とはいえ、二人は恋人同士になることを選んだ。

 周りからは何か言われる可能性はある。

 でも、何か言われようと、別れるということはないだろう。

 それくらい二人は愛し合っているのだから。


「兄さん……」

「ああ」


 潤いのある熱い有栖の唇に自分の唇を重ねる。

 恋人同士になってから初めてのキス……今までしたいたのより特別な気持ちになり、これから何回もしていくことになる。


「兄さん、私はとても幸せです」

「俺もだ。これからもっと幸せにするから」

「はい……んん……」


 二人は観覧車を降りるまでキスをしていた。

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