図書室にて
本日は図書室にて貴音と有栖は勉強していた。
家でだとイチャイチャしてしまう恐れがあるので、ある程度人がいる所でしようと思ったのだ。
今は放課後だからか、他にもテスト勉強している人や本を読んでいる人が結構いる。
場所的に静かだし参考書なんかもあるので、イチャイチャしないで勉強するには最適な場所だろう。
「銀髪ヒロインのラノベや漫画を探したい」
美浜学園の図書室には漫画やラノベが置いてある。
だから貴音はたまに図書室で借りたりしているのだ。
高校生で無駄遣いできないから、漫画やラノベが置いてあるのは有難い。
「そういったのはテストが終わってから借りてくださいね」
有栖に止められてしまう。
今は勉強しにきているのだから当たり前だ。貴音が銀髪ヒロインの漫画やラノベを見つけてしまったら、確実に勉強に集中しなくなる。
「高橋くんじゃん」
勉強していると樹里が話しかけてきた。
「どうしたの?」
「私も勉強しようと思って。家だとどうしてもサボりがちになっちゃうから」
貴音の向かいの席が空いているためにそこに座り、勉強道具を鞄から出していく。
「キミが高橋くんがベタ惚れの妹ちゃんだね。近くで見ると凄い綺麗……」
「兄さん、ベタ惚れなんてそんな……私もそうですよ」
自分が褒められたことより、貴音がベタ惚れだという事実が嬉しいようだ。
図書館という人が多い所でも、自然すぎるくらいに貴音の肩に自分の頭を置く有栖を見て、兄がシスコンなら妹もブラコンなのか……と思う樹里。
ここまで重度なのであれば、誰であろうと入り込める余地なんて余程のことがない限り難しいだろう。
「あのさ……」
樹里が話しかけると有栖は慌てたように貴音から離れ、「これでは家だと変わりません」と、頬を赤くして呟いた。
そして樹里は家だとイチャイチャしまくっているんだと察したようで、少しばかり苦笑いをする。
「お恥ずかしいところを見せてしまってすいません……兄さんのお友達ですか?」
「そうだよ。水無月樹里。よろしくね」
自己紹介をされて少し考え込む有栖。
他の女の子を近づけたくない有栖にとって、樹里のような人は危険だ。
可能性としては限りなくゼロに近いと思うが、誰にでも優しく接するから貴音が気を許しかけない。
そこから色々と発展されては困る。
「私は高橋有栖です。よろしくお願いしますね、せ・ん・ぱ・い」
「う、うん……」
若干、威圧的な態度をとる有栖に、樹里は仰け反ってしまいそうになった。
これ以上、兄と仲良くしないでほしいという牽制が伝わったのだろう。
樹里にとって貴音はアニメ好きのシスコンとしか思っていないから恋愛対象として見ることはないし、シスコンの人を彼氏にしたいとは思わない。
そんな人を彼氏にしたら自分より妹を優先してしまいそうだと、前に妹ークを聞いて思ってしまったからだ。
「貴音くんと有栖ちゃんだ。こんにちは」
有栖にとって一番注意しなければならない可憐が貴音の隣に座る。
それにより貴音に殺意のこもった視線が向けられるが、もちろんそんな事に貴音は気づかない。
「可憐も勉強するの?」
「ここではしないかな。漫画とか小説があるから借りにきたの」
可憐は何冊かの漫画を持っており、これを借りるようだ。
「でも、貴音くんが勉強するなら私もしようかな」
貴音くんが……と可憐の口から出たことのより、樹里はあることを確信した。
可憐が貴音のことを好きであるということを。
前に一緒にお弁当を食べたと聞いたことがあるし、間違いなく好意があるといっていい。
普通だったら学園のアイドルと言われる白河可憐に好意を向けられたのであれば嬉しいだろうが、貴音がシスコンだからかどう見ても可憐よりも妹。
いつも妹ークを聞かされている樹里は可憐に同情するしかなかった。
樹里は可憐に近づいてから「難しい恋だろうけど頑張ってね」と言い残してからその場を後にした。
その言葉を聞いて可憐が頬を紅潮させたのは言うまでもない。
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