約束

「ごめんなさい。勉強の時間が少なくなってしまいました」


 貴音と有栖はキスしてたせいで、夜はほとんど勉強できなかった。

 でも、これ以上勉強をすると明日に支障がでかねない。

 だから今日はもうベッドに入ることにした。


「大丈夫。もし、赤点をとったら有栖が口を利いてくれなくなるから絶対に取りたくない」

「そうですね。まあ、兄さんは私のためなら頑張ってくれますから心配してはいませんよ」


 貴音にとって有栖と話せなくなるのは一大事なので、余程のことがない限り赤点をとることはないだろう。

 有栖といるためだけにテスト勉強をする……それが貴音だ。


「何で兄妹なのにこんなにも出来が違うんだろうか?」


 見た目が違うのはともかく、学力や性格なんかも全然違う。


「義理だからですね」


 それを言ったら元のこもない。

 でも、義理のせいだからお互いにここまで意識しているのかもしれないが。

 そして、今にも唇を重ねてしまいそうな雰囲気を二人は醸し出している。

 だからってこのままキスしてしまってはさっきまでの自分たちと変わらない。

 普通に貴音が抱きついてしまえばキスしないで寝ることができるだろうが、少し話しておきたいことがある。


「テストが終わったらどこか行かない?」

「どこかですか?」

「うん。二人きりで」


 それはいわゆるデートということだろう。

 有栖にはそれがわかったようで少し頬を紅潮させる。


「どこに行くんですか?」

「うーん……夜の遊園地とか?」


 有栖の身体を考えて遊園地なんてほとんど行ったことがない。

 たまに出掛けるとしてもカラオケとかの室内で遊べる所ばっかり。

 だから普段行かない遊園地に行くっていうのもいいかなと思ったのだろう。

 実際に夜の遊園地はライトアップとかされてデートには最適な場所だ。


「兄さんがまともなスポットを言うなんて……どうしたんですか?」


 貴音が提案する場所はアニメショップなどが多い。

 そんな貴音が遊園地なんて提案するなんて珍しいことだ。


「どうしたも何も有栖と行ってみたいなって。ダメ?」


 観覧車に乗りながら夜景を見たらとても綺麗だろう。

 どんな夜景も有栖と比べてしまえば霞んでしまうが、有栖にしたら貴音と一緒に見れるということで嬉しくなるはずだ。


「ふふ、兄さんにデートに誘われて私が断る理由なんてないですよ」

「デートって……」


 貴音も頬を赤くする。


「デートでいいじゃないですか。私は兄さんとデートしたいです」


 好きあっている二人が遊園地に遊びに行くのだからデートだ。

 しかも遊園地なんてデートスポットに行ったら間違いなく二人はイチャつくだろう。


「デート……」

「はい。楽しみにしていますね」


 飛びきりの笑顔を見せる有栖。

 当たり前だ。愛しの兄からちゃんとしたデートに誘われたのだから嬉しくないわけがない。


「だからちゃんと勉強教えてね」

「わかりました。キスは少なくしないといけませんね」


 今の有栖はイチャイチャしたくてしょうがなくなる。

 だから自重しなければいけない。

 今や有栖の方からイチャついてしまって勉強に支障が出てしまうのだから。


「じゃあ、そろそろ寝ようか」

「はい。おやすみなさい」


 キスをしてから貴音は有栖に抱きついて寝た。


「兄さん、デートに誘うってことは、そう思っていいのですよね?」


 貴音は寝ているので反応はないが、きっと遊園地で告白してくれるはず。そう思うとニヤニヤが止まらない。

 でも、少しだけ不安でもある。

 告白してくれるとは思うが、好きだけど兄妹でいようと言われたらどうしよう……

 ほぼ杞憂でありそうだけど、有栖は貴音と恋人同士になりたいと思っている。

 だから兄妹ままでいようなんて絶対言ってほしくない。


「愛してます」


 そう言ってから貴音の首筋にキスマークをつける。

 絶対に恋人同士になるという想いを込めて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る