学園のアイドルと電話
「ヤバい。眠れない……」
貴音は暇になったので自分の部屋で寝ようとしたのだが、抱き枕に抱きついても眠れない。
いつもなら抱き枕に抱きついて横になった瞬間に寝るはずだが、目を閉じると有栖が浮かんできてしまい、どうにも眠ることができない。
それは貴音が有栖と一緒に寝すぎたから寂しくなって眠れないからだろう。
貴音はテレビをつけてアニメを見る事にした。
最近は有栖が隣にいるから見れなかったために、見ていないアニメが結構ある。
それで時間を潰そうと思ったのだ。
「何ていうか……物足りない」
アニメを見出してから少したったが、面白さを感じない。
今見ているのは兄妹物のアニメなので貴音にとっては面白いと感じるはずだが、つまらなくなったのでテレビを消す。
貴音はまた抱き枕に抱きつくがやっぱり眠ることができない。
しょうがないからスマホを手に取って、ある人に電話をかけることにした。
『もしもし、どうしたの?』
貴音が電話をしたのは可憐だ。
何となくという理由だけで可憐に電話をした。
「暇すぎて電話しただけ。だから話そう」
『え?』
可憐は貴音の言葉を聞いて頬を紅潮させた。
暇だからという理由でかけてきたが、それは逆を言えば自分を暇つぶしの相手に選んでくれたということ。
あんまり貴音と話すことができない可憐にとってはそれだけでも嬉しいことなのだ。
『そ、そそそそれで何話すの?』
可憐は嬉しすぎたのかテンパって声が裏返ってしまう。
「何を話すって言われても……少し落ち着け」
『落ちちゅいてまちゅ』
全くもって落ち着いていない。
落ち着いていたらこんなに噛むことなんてないのだから。
可憐にとってここまで異性を意識したのは初めてのこと。
そして意識している人から電話をもらったのだから、少しくらいあがってしまってもおかしくはないだろう。
「それにしても話か……可憐のこと聞かせてよ」
『わ、私のこと?』
「うん。まだ良く知らないし」
可憐は少し考える。
でも、せっかく貴音から電話してくれたのだしいっぱい話したいことがあったのだが、何を話していいのかわからない。
『え、えっとね……最近アニソンを聞き出したんだよ』
可憐は何とか話題を絞り出した。
貴音と一緒にカラオケに行くようになってから可憐はアニソンを聞くようになった。
聞くアニソンは貴音がカラオケで歌ったものだ。
もちろん貴音との話題作りのために聞き出した。
「そうなの?」
『うん。結構いいのがあるね』
聞き出した動機は不純だったが、毎日聞いている。
聞き出してからアニソンにハマってしまったのだ。
『だからね……また、一緒にカラオケに行ってくれると……嬉しい、かな』
可憐にとって前のカラオケで貴音にフラれてしまったようなもの。
それでも一緒に行きたいということは何かあるのかもしれない。
「う~ん……」
少し考えこむ貴音。
『やっぱりダメかな?』
考えこむような貴音の声を聞いて、少し不安そうにする可憐。
「ダメというか何ていうか……嫌ではないけど多分行けない」
有栖が独占欲強いということは貴音にもわかる。
そんな有栖は貴音が他の異性とカラオケなんて許すはずないだろう。
だから可憐と一緒に行くことなんてできない。
もし、行けたとしても、確実に有栖と一緒にになる。
『そっか……ごめんね』
「いや、こっちこそごめんね」
『ううん、大丈夫』
断られることはわかっていたがやっぱり悲しい。
『そういえば有栖ちゃんは今、一緒じゃないの?』
このままでは泣いてしまいそうなので、可憐は話題を変える。
もし、泣いてしまったら電話を切ってしまうかもしれない。
なるべく長く電話をしていたいので、必死に泣くのを我慢する。
「今は友達が家に来ていて自分の部屋で話してるよ」
『そっかー、彼氏だったりして』
「女の子だったよ」
『まあ、有栖ちゃんはブラコンだから彼氏なんて作らないか』
有栖は可憐にこれ以上貴音と仲良くしてほしくないから自分がブラコンだと宣言した。
そんな有栖が彼氏を作ることは絶対にないだろう。
むしろ貴音を彼氏にしたいんじゃないかって可憐は思っているくらいだ。
兄妹であれは普通じゃない。
でも、有栖が兄である貴音のことを好きになっていても不思議ではない。
「もし、有栖に近づいてくる男がいたら殺す」
本気なのか物凄く低い声を出した貴音。
そんな貴音に可憐は苦笑いするしかなかった。
冗談じゃなくて本気でやりそうで怖いと思ったのだろう。
『そ、それよりオススメのアニソン教えてよ』
また咄嗟に話題を変える。
「そうだね。オススメは……」
二人は電話でアニソンについて長時間話し合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。