作戦会議
有栖はエリーを連れて自分の部屋に入った。
そしていきなり貴音が入ってこないように鍵をかける。
これからエリーと共にどうやったら貴音が付き合いたいと思うかの作戦会議をするために、彼が入ってきたら困るのだ。
もし、有栖が本気で付き合いたいって言えば、貴音は付き合ってくれるかもしれない。いや、間違いなく付き合うだろう。
でも、付き合ったとしても貴音は遠慮をしてしまう。
有栖のお願いなら基本は何でもきくだろうが、恋人同士がするような行為は一切してくれない。
そんなのでは今までと変わらないから、付き合ったと言えないだろう。
「お二人をくっつけたいと言った私が言うのは何なんですが、今のままの関係では不満なのですか? お兄ちゃんは彼女作る気ないのでしょう?」
エリーの質問はもっともだ。
さっき見ただけでも他の女の子が彼氏にくっついて、彼女が嫉妬したようにしか見えなかった。
それくらい二人は兄妹でなく、周りからしたら恋人同士のように思える。
彼女を作らないと宣言しているのだから、関係が崩れてしまうかもしれない恋人同士になる必要はない。
「そうかもしれませんが、兄妹という関係だけでは我慢できなくなってきました」
「あんなにイチャイチャしてるのに我慢できないのですか? そうですね。兄妹ではエッチなことできませんものね」
エリーの言葉に有栖は顔を真っ赤にさせる。
有栖だって年頃の女の子だ。
貴音とそういったことをする想像くらいしたことはあるだろう。
有栖はしてみたいのか恥ずかしながら頷く。
「そういえばお兄ちゃんがあの白河先輩とお付き合いしているという噂がありましたが、結局はどうなったのですか?」
可憐本人が付き合っていないと否定しているから噂されることはなくなったが、本当は付き合っているんじゃないかと疑っている人はいる。
「付き合っているわけではないですけど、白河先輩は兄さんのことが好きなようです」
「そのようですね。白河先輩はお兄ちゃんにあーんってしてお弁当を食べさせたようですし」
「なっ?」
一緒に食べたことは聞いたがそんな話は聞いてない。
「兄さんには後でお仕置きが必要なようですね」
有栖は嫉妬で怒り狂ってしまいそうだった。
風邪の時に食べさせてもらったことはあったが、食べさせたことはない。
それなのに他の女の人に食べさせてもらうなんて……
そんなことを思うとお仕置きしたいという気持ちがでてしまった。
「有栖さん落ち着いてください。お仕置きなんてしたら付き合うことなんてできませんよ」
「はっ……そうでした」
多少、辛辣なことを言うくらいなら貴音は全く気にしないが、お仕置きなんてしたら有栖に嫌われたんじゃないかと思ってしまうだろう。
そんなことをしてしまっては付き合うなんて夢のまた夢だ。
「それにしても有栖さんにはヤンデレの要素もあったのですね。目の光が失われつつありましたよ」
「そんなことないですよ」
有栖は否定したが、可憐がお弁当を食べさせたと聞いた時は目に光が宿っていなかった。
前にヤンデレ要素があるヒロインが出てきたアニメを貴音と見たことがあるが、あんな風にはなりたくないと思った。
独占欲が強いという自覚はしたが、貴音のことを傷つけたいとは思っていない。
「では、お兄ちゃんに彼女ができたらどうしますか?」
「殺します」
最早、有栖はヤンデレヒロインと変わらない。
「有栖さんは既にクーデレキャラなのですから、ヤンデレ要素は必要ありませんよ」
「クーデレ?」
「クーデレとは好きな人には冷たく当たってしまうことですね。今は超がつくほどデレデレのようですが」
「意味は知ってますよ」
そういえば冷たく当たっていたなと思う有栖。
ブラコン宣言してから冷たく当たることは少なくなってきているが、それ以前は恥ずかしくてついそうなってしまった。
「それでは作戦なのですが、ご飯を食べさせてあげたらどうですか? 白河先輩に食べさせてもらってた時のお兄ちゃんは相当恥ずかしがっていましたから、効果あると思います」
少しふざけ気味だったエリーだが、今は真面目な顔をする。
「……恥ずかしそうですね」
「抱き合って寝ているのに恥ずかしいのですか?」
「それは……」
エリーは二人が抱き合って寝ていることを知っている。
この作戦会議のために今の状況を事前に有栖が話していたからだ。
「恥ずかしいですが、兄さんが少しでも意識してくれるのであれば頑張ります」
有栖は両手をグーにして、早速昼ご飯からそれをすることに決めた。
「でも、エリーはやたら二人がお弁当を食べていた状況を詳しいですね」
「思い切り見ていましたから」
エリーはVサインを作ってそう言った。
中庭には昼休みご飯を食べに来る人が何人かいる。
だからエリーがその時に中庭にいたって不思議ではない。
「有栖さんがモタモタしていたら、私がお兄ちゃんを取ってしまいますよ」
「なっ……」
「冗談です」
エリーはくすくすと笑いながら答えた。
「うう~……エリーは絶対にSです」
「そうですね。否定はしません」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。