シスコン兄が選ぶプレゼント

 貴音と有栖は休憩と昼ご飯のためにファミレスに入った。

 まだご飯には早いが、混む前にご飯を食べてしまいたいからだ。

 基本的に二人はあまり外に出ないために外食することがないが、まだ用事があるから外食をする。


 二人は席に着いてメニューを見た。

 ファミレスなので小さい子供向けから大人向けの料理が色々あってどれにするか迷っているようだ。


 少し悩んだ後に店員を呼んで注文をする。

 料理が届くまではドリンクバーも頼んだので、飲み物を取りに行く。


「抱き枕目立ちますね」

「うん。正直言うと持つの面倒」


 抱き枕だけあって一メートル以上の大きさがある。

 これも持って外に出ているのだから邪魔だと思うだろう。

 前に買った時はネット通販だったので貴音は深く考えていなかったが、抱き枕を最後にすればいいと少しだけ後悔した。

 でも、目的のを買えたので満足はしている。


「思ったのですが、中学の修学旅行の時とかは寝れたのですか?」


 修学旅行などで泊まりになった場合は旅館には抱き枕などない。

 それでどうやって寝たのか不思議に思ったのだろう。


「もちろん抱き枕を持って行ったけど」

「普通、抱き枕を持って行きますか?」


 貴音の思ってもいなかった回答に驚きつつも呆れている有栖。


「流石に三日寝ないとぶっ倒れるからね」

「むしろ一度倒れた方が抱き枕なくて寝れるようになるのでは?」


 有栖の辛辣な言葉が貴音の胸に突き刺さる。

 貴音に抱きつかれて寝るようになってから刺が少なくなっていたが、それは気のせいだったようだ。

 兄に一度倒れた方がいいと言うとか、辛辣と言う他ないだろう。


「有栖は俺が倒れてもいいのか?」

「病気で倒れてられるのは嫌ですけど、寝不足で倒れる分には構いませんよ」


 貴音は本当に手厳しいと思いながらお茶を飲む。


「もし、寝不足で倒れたら私が付きっきりで診ててあげます」


 有栖は貴音に聞こえないように、お茶を飲むふりをして小声で呟いた。


 料理が運ばれて来たので、二人して食べる。

 貴音はハンバーグを頼んで、有栖はピザだ。

 ピザ全部を有栖が食べることはできないが、もし残ったら貴音に食べてもらおうと思い頼んだのだ。



「うえ、お腹がいっぱいだ」


 貴音はお腹をおさえてゲップを出してしまう。


「汚いですよ」


 案の定、有栖は全部食べられなかったので、貴音に食べてもらった。

 それにより貴音はお腹いっぱいの状態だ。


「少し休憩させて」

「しょうがないですね」


 貴音は机に突っ伏す。


「何でピザを食べきれなかったのに、アイスを食べているのかな?」

「甘い物は別腹なので」


 ここのファミレスはドリンクバーを頼むとソフトクリームが食べ放題になるので、有栖はそのアイスを食べている。

 本当ならピザも全部食べて欲しかったが、お腹いっぱいなのと、有栖が幸せそうにアイスを食べているのだ、怒る気にはなれなかった。


 少し休んでマシになったので二人はファミレスから出る。

 次は約束していた有栖に何かをプレゼントするために駅前にあるショッピングモールに来た。


「どこ行きたい?」

「兄さんにお任せしますよ。私が喜ぶのをプレゼントしてくださいね」


 貴音はさりげなく有栖に欲しいのを聞くが、全く答えてくれない。

 それは貴音が選んだ物が欲しいからだ。

 有栖にとって貴音が真面目に選んでくれるのであれば、どんな物でも大事にするだろう。


「それで何をプレゼントしてくれるんですか?」

「いや~、まだ決まってないんだよねー」

「そうですか」


 貴音の答えに素っ気なく返事をする有栖だが、内心は嬉しく思っている。

 プレゼントは決まっていないが、この分多くの時間を一緒にいることにできるから。

 家でも一緒にいることはできるけど、休日にこうして一緒に外に出かけることができて有栖は幸せだ。


「じゃあ、まわりながら決めてくださいね」

「はいよ」


 二人はまた手を繋ぎ、ショッピングモールを回る。


「候補とかあるのですか?」

「お兄ちゃんが攻略対象の乙女ゲーム」

「それは絶対にやめてください」


 絶対に嫌と言わんばかりに真面目に回答した有栖。


「そんな考えしかできない兄さんにヒントを出します。私は身につけられる物が欲しいですね。安くてもいいので」


 そう言われ貴音は少し考える。


「人気キャラの指輪?」

「指輪はいいとしてもキャラ物はないですよ」

「じゃあ、指輪ね」

「キャラ物はダメですよ」


 貴音はわかってるよと言い、指輪が売っているお店まで向かった。

 指輪が売っているアクセサリーショップは休日だからか少しカップルが多い。


「色は限りなく白い銀色の指輪ね」

「せっかく一緒に買い物に来ているのに色の指定はさせてくれないのですね。まあ、いいですけど」


 貴音は店員を呼んで銀色の指輪を何個か出してもらった。

 その中から有栖に選んでもらおうかと貴音は思っていたが、完全に貴音に選んでもらいたいためか有栖が自分で選ぶことはしない。


「じゃあ、これください」


 何個かあった指輪の中から有栖に似合うのを選んで買うことにした。


 ショッピングモールにあるベンチに二人は座っている。 


「指輪つけていいですか?」

「うん」


 有栖は先ほど買ってもらった指輪をつける。

 左手の薬指につけてとても笑顔だ。


「大切にしますね」

「うん。喜んでくれて良かった」


 目的の物は買えたので二人は最後にスーパーで晩ご飯の買い物をして家に帰った。

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