アニメショップでデート

 貴音が有栖に抱きついて寝るようになってから数日がたった。

 今日は土曜日で学校が休みなこともあって、二人はいつもより遅く起きた。

 天気は予想通りで空が雲で覆われている。


「絶好の買い物日和だ」

「普通は晴れの日のことをいうのですけど、そうですね」


 本日は貴音の抱き枕を買うために二人して家を出る。

 曇りでも有栖は肌を露出させることはなく、いつも通りの長袖だ。

 服の色は白と黒で少しゴスロリをイメージさせるヒラヒラが多いワンピースを着ている。

 こういったタイプの服であれば暑い季節にも長袖でも不自然ではないと、貴音に言われたから着ているだけだ。

 最初は恥ずかしがっていたが、今では慣れてしまってゴスロリっぽい服を結構持っている。


「首のとこにできたアザみたいの消えないんだよね」

「そ、そうなんですか?」


 貴音の言葉に有栖は少しだけ鼓動が早くなってしまう。

 そのアザは有栖がつけたキスマークだからだ。

 しかも消えないように毎晩つけている。

 貴音が寝ている時に内緒でつけているので、貴音は真相がわかっていない。


「まあ、あんまり気にしてないからいいけど」

「私がつけたのだから、少しくらい意識してほしいんですけど」


 有栖は貴音に聞こえないくらいの声で呟いた。


 話をしていたら最寄りのバス停まで着く。

 バスに乗って駅の近くあるお店まで行き、買い物をする。

 駅までは歩いて行ける距離だが、バスに乗って行くようにしている。

 曇りでも紫外線は出ているので念のためだ。


 バスの時間は調べてきたので、すぐに乗れて二人は駅前に着いた。

 土曜日だからか遊びに来ている人で賑わっていて、はぐれないように貴音は有栖の手を握る。

 それにより有栖の頬が少しだけ紅潮するが、嬉しくて前みたいに指を絡める。


「何で抱き枕を買うのにアニメショップなのですか?」


 二人が来たのは業界最大手のアニメショップだ。

 漫画やラノベはもちろんのこと、ここでしか買えないアニメのグッズなども多数ある。


「キャラ物の抱き枕はアニメショップに行くしかないからな」

「そうですか」


 有栖はこういったアニメショップに来ることはない。

 前に貴音に勧められアニメを見て面白いと思った漫画を持ってはいるが、普通の書店で買っている。


「明らかに妹がメインヒロインのラノベがいっぱいありますね」


 ちょうどお店を入ってすぐのところにヒロインが妹のラノベや漫画の特集をやっていて、有栖はそのコーナーをまじまじと見ている。


「有栖も兄妹のラノベに興味出てきた?」

「い、いえ、違いますよ」


 有栖はそのコーナーを見て、ラノベのキャラ達も自分と同じことをするのだろうか? と思ってしまった。

 そして前に貴音と一緒に見た兄妹のアニメでキスしているシーンを思い出してしまい、有栖は頬を赤くして下を向いた。


「とりあえず抱き枕見に行くよ」


 貴音は早く抱き枕を見たいから有栖の手を引っ張ってグッズがあるとこまで移動した。


「物凄く高くないですか? しかも抱き枕本体よりカバーの方が高いっておかしいですよ」


 抱き枕の値段を見て有栖が驚く。

 抱き枕カバーだけで一万を越えているのもあって、つい思ったことが口に出てしまったのだろう。


「人気あるキャラだとしょうがないね」


 貴音は抱き枕本体と人気のある銀髪のキャラのカバーを買うことにした。

 抱き枕は大きいので店員に言って押さえておいてもらう。

 せっかくアニメショップに来たのだから色々見て回りたいからだ。


 貴音は抱き枕以外のグッズはあまり興味がないのか、漫画やラノベ売っているとこに来た。

 何かいいのがないか探している貴音と違って、有栖は少し落ち着きがない。

 視線をチラチラとある方向に向けていた。

 それは先ほども見ていた兄妹物のコーナーだ。


「何か欲しいのあるの?」


 有栖の視線に気づいたのか、貴音が有栖に問いかける。


「い、いえ、欲しいわけではないですよ」


 でも興味はあるようで未だに兄妹コーナーに視線をチラチラとさせている。


「じゃあ、行こう」


 貴音も兄妹物のコーナーに興味があるので移動した。

 そこにはアニメ化された有名な物からそんなに有名でないマニアックな物まで様々なラノベや漫画が置いてある。


「妹で銀髪のキャラが出てきたら内容がどんな物でも手を出すのだが」


 兄妹物だけあってほとんど日本が舞台の話だ。

 だから妹の髪の色は黒がほとんどで、あったとしても明らかに染めたであろう金髪。

 だからか貴音が欲しいと思う物は中々見つからない。

 逆に有栖は興味がある物があるのか、ずっと見ている作品がある。

 作品を手に取って表紙を見てどうしようか迷っているようだ。


「それ買うの?」


 有栖が手に取っている漫画は少し前に見た兄妹が異世界に転生したアニメの原作だ。

 先日見たことにより興味を持ったのだろう。


「どうしましょう?」

「それは俺に言われても困る。俺はアニメで充分だし」


 有栖は少しだけ迷ったが、買うのはやめたようで本を元に戻した。


「そうですね。もしアニメの続きを見て面白かったら買うことにします」


 二人は兄妹物のコーナーを後にして他のコーナーを見てまわったが、他に欲しいのがなかったので抱き枕だけ買って外にでた。

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