寝る前にイチャコラ

 ゲームを終えてお互いにお風呂に入った。

 基本的には有栖が先に入ることが多い。

 貴音がお風呂から上がり有栖の部屋に行くと、特に何かしているわけでもなく、ベッドでボーッとしていた。


「もう寝ますか?」


 貴音が入ってきたことに気づいて有栖が声をかけた。


「いや、まだ寝ない」


 貴音はまだ寝る気がないので首を横にふる。

 まだ二二時にもなっていないし、高校生が寝るにはまだ早い時間だ。

 貴音の言葉を聞き、有栖は「そうですか」と呟いたらまたボーッとしだした。


「ボーッとしてどうした?」


 ボーッとしている有栖をあまり見たことがないので、貴音は少し不思議に思う。

 体調が悪いのかな? とも思ったが、顔が赤いわけでもないので熱はなさそうだ。


「いえ、何でもないですよ」


 有栖がボーッとしているのには理由がある。

 今日は既に貴音に抱きつかれて寝ることがわかっているので、気持ちを落ち着かせている。

 その結果、ボーッとしているように見えただけだ。

 貴音がお風呂に入っていない間はきっと有栖の顔はニヤけていたことだろう。


 貴音はそっかーと言い有栖の横に座る。

 有栖のパジャマはピンク色でワンピースタイプだ。

 夜だと太陽光を気にしなくても大丈夫なので、夏に着るパジャマは基本的に半袖だ。

 少し丈が短いので白くて綺麗な太ももが見えている。


「またスマホゲームする?」

「しませんよ。兄さんのせいでどれだけ負けたと思っているんですか?」


 二人がさっきやったゲームは貴音のせいでほとんどがボスに行く前にゲームオーバーになった。

 貴音は「何故だー?」と頭を抱えていたが、弱いキャラしか使ってないからである。

 有栖が言うように見た目だけに拘らず、能力やレベルが高いキャラを使えばマシになる。


「テレビでも見るか」

「それが妥当ですね」


 机の上にテレビのリモコンが置いてあったので、貴音は手に取って電源ボタンを押してテレビをつける。

 テレビをつけたらバラエティーがやっていて、それをBGM代わりにして二人は話すことにした。


「抱きつきたいー」

「では、これに抱きついてください」


 有栖が渡してきたのは枕だ。

 抱き枕がないのであれば、とりあえずこれに抱きついとけということだろう。


 貴音は何もないよりかはマシかなと思い、枕に抱きついた。

 でも抱き枕と違って抱きつくようにできてないから、やはり抱き心地は良くはない。


「じゃあ、こうしよう」


 貴音は枕を置いて有栖のことを後ろから抱きついた。


「ちょっ、兄さん?」


 いきなりのことで驚いて抵抗するが、貴音がしっかりと抱きついているので、離れることができない。

 でも、驚いて抵抗しただけなので、嫌ってわけではない。


「横にならなきゃ平気だよ」

「わかりましたよ」


 有栖は渋々了承したかのように見えるが、寝ないのであればむしろ抱きついてほしいと思っている。


「そしてこうする」


 貴音は有栖を自分の膝の上に乗せた。

 ご飯を食べる前に見たアニメでこうやって仲良くしていたことがあったので、貴音はこうしてみたいと思っていたのでやってみた。


「恥ずかしいです」


 嬉しい気持ちはあるが、有栖はそれ以上に恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。

 恐らくさっき見たアニメのことを思い出しているのかもしれない。

 あのアニメには二人がしたことないくらいにイチャついていたのだから、意識してしまうのも無理はないだろう。


「流石にあのアニメ以上のことはしないよ」

「わ、わかってますよ」


 二人は明らかに好き合っているが兄妹としてだ。

 だからアニメのように愛し合った行為はしないし、これからするこもないと今は思っている。

 貴音は横になっていないと寝ることはないようなので、有栖は安心して話すことができた。


「兄さん」


 もう恥ずかしさは大分なくなってきたようで、珍しく有栖が甘えた声を出した。

 そして自分の手を貴音の手に重ねる。


「可愛すぎる」


 あまり聞けない甘えた声を出されたので、貴音は嬉しすぎてニヤけてしまう。


「兄さん、女の子から手を重ねたんですから察してくださいね」


 貴音はその言葉でまたさっき見たアニメを思い出す。

 あの兄妹は恋人繋ぎをしていたから有栖もしてみたいのかな? て思い、貴音もそうすることにした。

 その予想は当たっていたようで、お互いの指を絡めた状態になった。


「えへへ」


 有栖の後ろにいるから貴音には良く見えないが、有栖の顔は緩みきっている。

 それは貴音と同様で、第三者からしたら恋人同士にしか見えないだろう。


 手を握った状態で二人はベッドで横になる。

 貴音はこの状態を味わっていたいのか、有栖には抱きついていない。


「兄さんの顔が緩みきって凄いです」

「有栖もね」


 今は向き合って顔が見えるので、どんな顔をしているのか丸わかりだ。


「電気消そうか」

「そうですね」


 こんな顔を見られるのは恥ずかしいので、電気を消すために貴音は有栖から離れようとするが、有栖は手を離さない。


「今日は、離したくない、です」

「じゃあ、一緒に消しに行こう」


 有栖は頷いて電気を消すだけなのに二人して消しに行った。


 電気を消してまたベッドに入る。

 部屋が暗くなったのか貴音に睡魔が襲ってきたのか有栖に抱きついた。

 昨日と同じように足も絡めてしっかりと抱きついている状態だ。


「おやすみ」

「はい、おやすみなさい」


 貴音はすぐに夢の中に入っていった。


 でも有栖はまだ寝れないので貴音の顔を見ている。

 寝ようと思えば寝れるが、兄に包まれているように感じて、しばらく味わっていたい。


「いつか兄さんにも彼女ができるんですか?」


 貴音は寝ているので反応はない。

 妹なのだから兄に彼女ができたら祝福すべきなのだが、素直に喜ぶことができなそう……と有栖は思ってしまった。

 貴音の言葉から彼女はいらないことがわかるが、男子高校生なのでそのうち欲しくなるかもしれない。 

 そう思うと少し複雑な気持ちになってしまう。


「でも、せめて今だけは独占させてくださいね」


 有栖は抱きしめられてうまく動けないが、頑張って自分の顔を貴音の首の部分に移動させた。

 そして有栖は貴音の首のとこに唇を当てて吸い付いた。


「キスマークつけちゃいました」


 強く吸い付いたので貴音の首のとこに赤い痕ができた。


「おやすみなさい、兄さん」


 そして有栖も夢の中へ入っていった。

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