家でまったり

 学校が終わり家のリビングのソファーに座っている貴音と有栖。

 この家は二人の両親が結婚した時に建てた二階建ての一軒家で、四人で暮らす分には問題ないくらいの広さがある。

 今は両親が旅行中で家にいないので、二人には少し広く感じているのかもしれない。


「何かテレビ見ようかな」

「この時間はアニメやってませんよ?」

「確かにアニメばっかり見てるけど、そう言われるとは思ってなかった」


 貴音が見るテレビ番組はほとんどがアニメだ。

 しかも兄妹とか銀髪ヒロインが出るアニメばっかり見ている。

 そんなアニメを見るのは完全に有栖が妹だからであって、もし有栖と出会ってなかったら他のアニメを見ていただろう。


「それで何見るのですか?」

「アニメだよ」


 貴音の部屋にあるレコーダーにはWi-Fiに接続すると他のテレビやスマホで録画した番組が見れる機能がある。

 それを使ってリビングにあるテレビでアニメを見るのだ。


「兄妹が異世界に行くというありふれた設定のアニメだけど」

「本当に兄妹のアニメが好きですね」

「今年の春からやってるのだけど、録画だけして見てなかったんだけど」


 まだご飯を作る時間には早いので、有栖もアニメを見ることにした。

 一話だけ見たらご飯の準備に入るつもりでいる。


 これから見るアニメの話はこうだ。

 とあるお金持ちの家庭で生まれ育った二人の兄妹がメインの話だ。

 二人は順調に育っていたが、血が繋がっているのに愛し合ってしまう。

 流石に禁断の愛なので周りには黙っていたが、そのことが一番上の兄にバレてしまう。

 本来なら引き離されてもおかしくないが、ある仕事をしてくれたら一緒にいてもいいと言う。

 その仕事は裏の仕事だった。

 この家はヤクザと繋がっており、麻薬や人身売買などの手助けをして利益を得ている。

 この仕事をしないと一緒にいれなくなるということで、二人はその仕事をこなしていく。

 一緒にいるためなら手段を選ばず、時には殺人の手助けなどもした。

 そんな仕事をこなしているうちに妹に許嫁ができてしまった。

 一番上の兄に話が違うと言うが、これは当主の決定なので、どうすることもできないと言われてしまう。

 これでは最愛の兄と一緒にいれなくなるし、二人は罪悪感から自ら命を絶つ。

 そしたら神のイタズラなのか二人は魔法が使える世界の貴族の家に双子として転生をする。

 前世の記憶がないまま仲良く育っていくが、十歳の誕生日の時に二人は前世の記憶を思い出した。

 思い出してしまったことにより、二人はまた愛し合ってしまう。

 今回はバレずに過ごしていたが、この家も裏社会の人間と繋がっていて、法で禁止されている麻薬の取引や奴隷の売買をいてたことを知りまた絶望に陥る。

 でも今回は魔法という力があるので家に刃向かうことを決意する。

 たとえ罪がないのに裁かれようとも、死んでしまうことになったとしても。


 これが一話の内容だ。


「何て言うか、凄いシリアスそうなアニメですね」

「そうだね。てか、転生したんだから妹の髪は銀髪にしてほしかった」


 このアニメの妹は青色の髪だ。

 顔は転生前と同じだが、髪は転生後の世界に合わせた色にしたようだ。


「本当に銀髪が好きですね」

「そうだね。でも有栖が黒髪だったら黒髪のキャラが好きになってた」


 いつものシスコン回答にはいはいと流す有栖。


「俺は有栖フェチだからな」

「意味不明ですから。そんなフェチはありません」

「俺がそうなの。スマホだってスマホケースだって有栖の髪の色に合わせたし」


 机の上に置いてある貴音のスマホは白だ。

 これは有栖は白いからその色にしただけで、機能面などは気にしないでこれにした。

 逆に有栖のスマホは貴音のと同じ機種だが、色は黒にした。

 これは貴音には言ってないが、貴音の髪の色に合わせて黒にしたのだ。

 もし貴音の髪の色が違ったら有栖のスマホの色は違っていたことだろう。


「まあ、兄さんだからしょうがないですね」


 有栖はそう言いながらキッチンに向かい、晩ご飯の準備をした。


☆ ☆ ☆


 今日のご飯は貴音が好きなおかずでいっぱいだった。

 鶏の唐揚げやポテトサラダなど、カロリーが高そうなもが多いが、自分で頑張ると言ってしまったのでこれになってしまった。


「有栖の料理は美味しいよー」

「ありがとうございます」


 自分の作った料理を褒められるのは素直に嬉しいので有栖の顔から笑みがこぼれる。

 その顔は貴音を萌えさせるには十分で、いつも可愛くって思ってしまう。


 ご飯を食べ終わると貴音は食器などの洗い物をする。

 有栖の肌は洗剤などの成分でも手が荒れてしまうので、洗濯や洗い物は貴音がするようにしている。

 家事は二人で分担をしてやっているのだ。


 洗い物を終えたので有栖の部屋に行く。

 有栖はベッドの上でのんびりとスマホのアプリでゲームしていた。

 有栖は女の子らしいピンク色が好きなので、ベッドやカーテンはピンク色だ。


「どうしました?」


 キリが良かったのかスマホを置いて貴音に話しかけてきた。


「もう有栖に抱きつきたくなって」


 昨日、有栖に抱きつきながら寝たことにより、貴音は抱きつきたくてしょうがなくなってしまったようだ。


「確かに寝る時に抱きついていいのは了承しましたけど、まだ寝ないのであれば抱きつかないでくださいね」


 家にいたら抱きつけると思っていたので、貴音はショックを受ける。

 まだ寝る時間ではないので寝ることはないが、有栖には抱きつきたい。


「何でダメ?」


 その理由を聞いてみる。


「抱きついてきたらすぐ寝てしまうでしょう。そしたら私が何もできなくなってしまいます」


 確かに昨日は有栖を抱きついたらすぐに寝てしまった。

 だから有栖は寝るまでは貴音に抱きつかせる気はない。

 有栖は昨日抱きしめられて寝た時に嬉しい気持ちでいっぱいになったが、それは後でも堪能できる。

 なので今はこうやって話していたい。


「部屋にいるのは別にいいですけど、大人しくしていてくださいね」


 少し残念になりながらベッドに座る貴音。


「久しぶりに一緒にゲームでもする?」


 貴音はポケットに入れていたスマホを取り出した。


「しませんよ。兄さんは能力無視して銀髪キャラをいつも選んでしまうので弱いですし」


 貴音の提案をアッサリと断る有栖。


「好きなキャラを使うのは当たり前だろ?」

「それはそうかもしれませんけど、少しは能力を優先してくださいよ」


 二人は人気アニメがスマホゲームになったので、それをしている。

 もちろん貴音が有栖に勧めたのだが、そのゲームは面白いので有栖の方がハマっているくらいだ。

 オンラインで協力プレイができるゲームで、有栖が使っているキャラは能力が高いが、貴音はビジュアルでキャラを優先しているから弱い。


「銀髪キャラを出すためにお年玉を全てガチャに使うとは思いませんでした」

「褒めるなよ」

「今の話で褒めている要素がどこかにありましたか?」


 有栖は本当にこの兄は良くわかりませんと思いながら、スマホゲームを再開した。


「一緒にやろうよ」


 貴音はどうしても一緒にしたいのか有栖の肩に触れて言う。


「はあ、わかりましたよ」


 有栖はため息をつき貴音と一緒にゲームをした。

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