クラスメイトと妹ーク
午後の授業は眠気を誘う。
ご飯を食べた後だからというもあるが、この授業は自習になったこともあり寝ている人もいる。
本来なら自習でも先生がいるはずだが、今回に限ってはいないので配られたプリントをやってる人は少数だ。
貴音もやっておらず、この時間を使って有栖に何をプレゼントしようか考えていた。
「何も思い浮かばん」
スマホで検索をかけてみるが、財布やネックレスといった物が多い。
なんせ『異性にプレゼントされて嬉しい物』なんて検索をしたら、そんなものが出てくるだろう。
「何が思い浮かばないの?」
貴音の隣の席である女子生徒が話しかけてきた。
「えっと~、どなた?」
「もう、同じクラスになってから二ヶ月たってるんだから名前くらい覚えてよ」
貴音は興味がないことについての記憶力がない。
逆に興味が少しでも出れば物凄い記憶力を発揮するが、その興味の対象のほとんどが妹にだから、クラスメイトの名前をほとんど覚えていない。
一馬という例外はあるが、あくまで例外だ。
「一度しか言わないから覚えてよ」
貴音の方に身体を近づけて自分の名前を名乗る。
「私の名前は
貴音に近づいて名乗ったのは、二ヶ月も一緒の教室で勉強したのに、全く名前を覚えられていないから覚えてもらうためだ。
「苗字も見た目も日本人っぽいのに、名前だけは外国人っぽいね」
「それを言わないで~」
樹里の見た目は髪は染めているのか金に近い茶髪だが、童顔で少し薄い顔をしている。
化粧をしているので年相応に見えなくもないが、スッピンになると中学生と間違えられてしまう。
髪を染めているのはせめて年相応に見られたい想いからだろう。
そんな見た目と名前が合わないと、貴音は思ってしまったようだ。
「それで何が思い浮かばないの?」
「ああ、妹のプレゼントを何にしようかと思って」
樹里に聞かれたことにより、貴音は答える。
「プレゼント? 誕生日か何かの?」
本当は違うが貴音は頷く。
抱き枕代わりになってくれたお礼なんて言ったら、何を思われるかわかったものじゃないからだ。
「何となくモテそうだから聞いてみるけど、今まで男から何を貢いでもらったの?」
樹里は可愛いからクラスの男子から人気がある。
可憐よりは劣るが告白もされたことあるし、気さくな性格をしているから男からしたら親しみやすい。
ただその性格のためか勘違いをされることが良くあるのだ。
「凄いイラつく質問だね。貢いでもらったことないし」
貴音の質問に少し不機嫌な顔になる樹里。
女子高生に何を貢いでもらっているの? なんて聞いたら誰だって不機嫌にはなるだろう。
「有栖以外にはどう思われてもいいからあえて?」
「あえてとか酷い」
貴音にとって有栖以外の女の子はどうでもいいことなので、遠慮が全くない。
可憐を抱き枕代わりした時は明らかに自分が悪いから謝ったが、基本的には相手に嫌われようと知ったことはないと思っている。
「有栖って高橋くんの妹だよね? 確か銀髪の子の」
貴音はそうだねーと言ってまたスマホで検索をする。
「あの子は凄いよね。何回か見たことあるけど、綺麗を通り越して神秘的というか……」
樹里は有栖のことを知っているのかそんなことを言う。
有栖の銀髪は限りなく白く美しいので、女性から羨ましがられている。
その容姿のせいで敬遠する人もいるみたいだが、本人はあまり気にしていない。
「キミはいい子だ。もう一度名前を教えてくれ」
妹を褒められて貴音のテンションが上がり、つい樹里の手を握ってしまう。
それにより樹里は驚いてしまったのは目が見開いだ。
「えっと……シスコン?」
「断じてシスコンではない」
「いや、どう見てもシスコンだよ……」
妹を褒められてテンションが上がるのだからシスコン以外の何者でもない。
「それで名前は?」
樹里は数分前に教えたばっかなんだけどな……と呟いた後にまた自分の名前を言った。
「苗字も見た目も日本人っぽいのに、名前だけは外国人っぽいね」
「それ数分前にも言われたよ」
樹里は盛大なツッコミを入れた後に、頭を手で押さえてため息をついた。
貴音に呆れてしまったのだろう。
「大丈夫、もう覚えた。妹好きに悪い人はいないから」
「いや、私は妹好きではないよ。ただ高橋くんの妹を褒めただけだし」
樹里は貴音のことを凄い変わった人だと思った。
シスコンの人は探せば見つかるだろうが、貴音のシスコンは何か異質なのだ。
何が異質なのかはわからないが、他のシスコンの人とは違うと樹里は感じた。
「それに私に妹いないし」
「大丈夫。妹がいなくても妹が好きな人はいる」
「妹がいないのに妹が好きっておかしくない?」
「何にもおかしくない」
それから妹についての説明が入る。
でも貴音が説明しているのは妹のことというより、ほとんど有栖のことだ。
いかに有栖が可愛くて神秘的なのかを延々と説明をしている。
そんな話を苦笑いしながらでも聞いている樹里は凄いなとクラスメイトから思われた。
「そ、それより、プレゼント決めたいんじゃないの?」
流石に聞いていられなくなったのか、最初の話題に戻ることにした。
「そうだった。妹ークはまた後ほどで」
「できれば遠慮したいな……」
樹里の切実な願いだ。
しかも貴音のは有栖のことをただ褒めているだけなので、また聞きたいとは全く思えない。
「普通に考えて普段から使う物をプレゼントされたら嬉しいんじゃないの?」
「お兄ちゃんが攻略対象の乙女ゲームとか?」
「それはないわー。普段使う物でもないし」
貴音の言葉に樹里は思いきり引いてしまう。
兄から乙女ゲームをプレゼントされて喜ぶ妹などいない。
有栖はブラコンだが、貴音が兄だからブラコンになったのであって他の人が兄ならブラコンになっていない。
だから乙女ゲームを貰ってもすることはないだろう。
「あ、有栖はパソコンを持っていないからプレイができない」
「そこは本当にどうでもいいことだよ」
二人はそんな話をしていたら授業が終了のチャイムが鳴った。
「じゃあ、プリント回収するわよ」
クラスの学級委員が配られたプリントを回収して職員室まで持って行った。
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