昼休みは妹と一緒に過ごす

 本日の昼休みはコンビニで買ったおにぎりとお茶を持って、有栖といつもご飯を食べている所まで行く。

 場所は階段を上がって行くと屋上があるが、その屋上の入り口の前のとこだ。

 屋上は立ち入り禁止で行くとこができないので、ここまで来る人はほとんどいないから二人で食べることができる。


「待ってましたよ」


 一年の方が上の階に教室があるので、大体は有栖が先に着いてしまう。

 なので既に有栖が待っていた。


「じゃあ、食べようか」

「はい」


 貴音は有栖の横に座り、ビニール袋からお茶とおにぎりを出す。

 二人が買ったおにぎりは同じ具だった。

 いつも同じ物を食べているからか好みが似てしまったのだろう。


 ご飯を食べ終わり残りの時間は二人でまったりと過ごす。

 昼休みは二人でいれる貴重な時間なので、食べ終わってもすぐに教室に戻ることはない。


「兄さんって彼女とか欲しいと思います?」

「いらない。有栖がいるし」

「本当にシスコンを拗らせてますね」


 いつものシスコン回答に有栖は素っ気ない態度だが、自然と笑みがこぼれてしまう。


「それを聞くってことはもしかして有栖に好きな人が?」


 いつもならシスコンではないと反論するところだが、貴音の目は血走っており、今にもどうにかなってしまいそうだ。

 好きな人の名前を聞いたら貴音はその人を抹殺しに行きかねないほどだ。


「いませんよ」


 それを聞いて貴音は一安心する。


「私が好きなのは家族の皆ですから」


 特に兄さんのことが好きっていうのは言わないことにした。

 今、有栖がこうやって生活できているのは家族のおかけだし、何より兄の存在があったからなのが大きい。

 だから有栖にとって家族が大切だし、これからもずっと一緒にいたいと思っている。


「ありがとう」


 貴音は有栖のあたまを撫でながらそう言った。

 撫でられたことで恥ずかしくなって頬を赤らめて下を向いてしまう。

 恥ずかしいものあるが、ニヤけてしまい緩みきっている自分の顔を見られたくないっていうのが大きな理由だ。


「兄さん、そろそろ撫でるの止めてほしいです」


 このまま撫でられていては、有栖は貴音の顔を見れなくなっていまう。

 撫でられたい気持ちもあるが、最愛の兄の顔が見れないのはもっと嫌なのだろう。


「え? やだ」

「何でですか?」


 まさか嫌と言われると思っていなかったみたいで、有栖はつい貴音の顔を見てしまう。

 思わず見てしまったので有栖はすぐに顔を伏せる。


「わかった。止める」


 どうして止めてほしいか有栖の顔を見てで察したのか、貴音は撫でるのを止めた。

 止めると少しだけ残念そうな顔をしたが、これで貴音の顔を見ることができる。


「あ、今週末は少し出掛けようと思ってるんだ」

「そうなんですか?」

「うん。抱き枕買いに行く」


 ネットでは中々良さそうなのはなかったので、貴音はお店まで行って抱き枕を買いに行くことにした。


「てことは、それまで私は兄さんに抱きつかれながら寝るってことになるのですか?」

「うん。ダメ?」

「ダメではないですけど、学校終わったら買いに行けばいいのではないですか?」


 最もな意見だ。

 学校は日が暮れる前には絶対終わるので、それから買いに行ったって充分に時間がある。


「それは抱き枕買ってしまったら有栖を抱きしめながら寝れないからだよ」


 そんな理由ですかと、有栖はため息をついてそう言った。


「だからよろしくね」


 そんなことを笑顔で言われたら有栖は頷くしかなかった。

 嫌ではないにしろ、この年で一緒に寝ると思うと自分が本当にブラコンなんだなと、有栖は思わずにはいられない。


「有栖も一緒に行く? 予想では週末の天気は良くないってでてるから外出れそうだし」


 貴音はスマホで天気予想を見ている。

 紫外線が強い晴れている日は有栖にとって厳しいけど、曇りや雨であれば雲で紫外線が抑えられるので問題は少ない。

 今調べた天気予報だと土曜は曇り、時々雨だ。

 これなら有栖も外で遊ぶことができる。


「そうですね。きちんとした抱き枕を買ってもらう必要がありますからね」

「じゃあ、決まりね」

「はい」


 今週の土曜は二人して抱き枕を買いに行くことが決定した。


「有栖は何か欲しい物とかないの?」

「欲しい物ですか」


 貴音に言われて有栖は考えこむ。


「お礼に何か買ってあげようかなって思って」

「そうなんですか? でも何か見返りが欲しくてしたわけではないですし」


 有栖にとって貴音が側にいてくれるだけでいい。そう考えているので、何か欲しいとかはない。

 誕生日とかクリスマスにはプレゼントを貰うことはあるが、自分からこれが欲しいなどは有栖は言わないし、これからも言うつもりはない。


「ないなら俺が勝手に選ぼう」


 貴音はどうしても有栖にプレゼントがしたい。

 抱き枕代わりになってくれたのもあるが、今までの感謝の気持ちも込めてだ。


「別に無理にプレゼントする必要はないですよ」

「じゃあ、現金あげればいい?」

「何でそんな考えになるんですか?」


 何も欲しい物がないのであれば現金をあげるしかないと貴音は思ってしまい、つい口に出てしまった。


「あははは、ついね」

「お金はいりません。どうしてもプレゼントしたいのであれば、当日までに兄さんが考えてプレゼントしてください」


 そう言われて次は貴音が考え込む。

 プレゼントを考えるというのは難しい。

 有栖のことだから余程変な物でもない限り嫌がることはないけど、貴音は何にしようか迷っている。

 今までプレゼントした物といえば服や小物が多いが、今回は別の物にしたいと思っている。


「ちなみに何が欲しい?」

「それを言うわけないですよ」


 貴音はですよねーと呟いて再び考え出す。


 少し考えても何も思いつかなかったので、貴音は考えるのを止めた。

 今は有栖が隣にいるし、考えるより二人で話した方がいい。

 貴音はスマホで時計を確認するとまだ時間があったので、もう少しだけ話すことができる。


「昨日の昼ご飯もここで食べたの?」

「ええ。誰かさんが保健室で寝ていたので、一人で食べる羽目になりましたけど」


 有栖は貴音のことをジト目で見てそう言った。

 それを見て貴音は苦笑いするしかなく、有栖も怒ってはいないので昨日のような棘はなかった。


 二人で過ごす時間も終わり、予鈴が鳴ってしまった。

 五分後に次の授業が始まるので二人は片付けをして教室まで戻った。

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