だるまさんが転んだ

ガタガタと、階段を転げ落ちる音が聞こえる。


舞台は再び、あのライブハウス。


 ―― 一瞬、照明が付き、星佳を照らす。


●星佳

「キャーー、腕しか持ってこれなったーー!」


星佳の手に、千切れた腕が二本。驚きのあまり腕を投げる。


 ――ここで再び暗転。



 ――ゆっくりと照明。まだ薄暗い。


あの世に繋がったままのどこでもドアが開いたままになっている。


軽快なテンポの曲が流れる。

星佳と、ギターを弾く倫太郎の手元だけが照らされている。



●星佳

「恋人が死んだ。今まで、私の後ろでギターを弾いてくれていた。私は、ライブをしているときだけ、あなたに会える」(軽快な伴奏とは反対に悲しそうに)


暫く、演奏が続く。


●星佳

「ほら、皆さんにも、聞こえているでしょう、ギターの音がするでしょう」

星佳、目をしばらく硬く閉じ、目を開けた瞬間に後ろを振り向く。


しかし、振り向いた瞬間に倫太郎の手元の照明が消えて真っ暗になる。演奏も止まる。


星佳が前を向くと、再び、演奏が始まる。遊ぶような、ギターの音色。


星佳、頭を掻き、少し微笑む。


●星佳

「だるまさんが、転んだ」(音楽に体を揺らせながらふざけて)


振り向く。


また音楽が止まり、倫太郎が消える。


また正面を向き、立ち上がる。


音楽が始まり、後ろ向きで少しずつ移動しながら、倫太郎との距離を縮めていく。


●星佳

「だるまさんが~、転んだ!」(振り返らない。)


(アドリブで何回か)


●星佳

「だるまさんが転んだ!」(早口で)

振り向き際に抱き付くが、失敗。


倫太郎の姿は再び消え、ギターのビーンという音が響くき、星佳、派手に転ぶ。


●星佳

「くっそー、手ごわいな、やっぱり駄目か。こっちの世界では、やっぱり触れないし話もできないんだね、もう二度と」


星佳、いざりながら、ステージの中央へ。うずくまる。


●星佳

「私が歌って、彼が弾いて…私が歌って、」


星佳に当たる照明が弱くなり、右側の椅子に置かれたギターが照らされる。

もう、そこには誰もいない。


しばらくギターを見つめているが、立ち上がり、そちらへ歩いていく。


星佳、ギターのネックを掴み、椅子に座りギターを鳴らしてみる。


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