怪しい男が現れた!

◎死神

「…開けて…」(小さな声で、可愛く)


●星佳

「え?」


◎死神

「開けてください」


星佳、再び張りぼてのドアの後ろに回り込む。


●星佳

「やっぱりいない!」(叫んで)

「あなた、誰?」(今後は震えた声で)


◎死神

「僕は、あの世から来ました死神です」


●星佳

「はあ?何、言っちゃってんですかあ」

星佳、ドアからますます遠ざかる。

「やばいわ、キチガイがすぐそこに……どうしましょ」(小さく呟く)

辺りを見回し、逃げ道を探す。

「そんな、危ない人のために、ドア、開けるわけがないじゃないですか」


◎死神

「……そうですよね、じゃあ、もう一度、仕切り直しです。悪ふざけが過ぎました。僕は、不思議の国から来ました、白うさぎです」


●星佳

「へ、変態!」


◎死神

「じゃあ、何て言ったら開けてくれますか?」(投げやりに)


●星佳

「私は、開けないですよ」


◎死神

「そんなあ」(本当に凹んだような声)


●星佳

「だいたい、そのドア、作り物ですもの、鍵なんて掛かっていないですし」


◎死神

「え、そうなんですか」


●星佳

「あなた一体どこにいるんですか、このドアは、どこにも繋がってはいませんよ、セットだもん」


◎死神

「いえいえ、お嬢さん、ちゃんと繋がっています」


●星佳

「繋がっているって、どこに?」


◎死神

「どこって……それは、誰かが望めば望むところに繋がる」


●星佳

「誰かが望めば?」


◎死神

「そう、今だって、あなたとあなたに関係する誰かが望んだからここに繋がった」


●星佳

「嘘よ、私は望んでない」


◎死神

「あの世は、時間の流れに支配されていません。この世の時間軸で今現在、あなたがそうでなくても、いずれあなたは望むようになる」


●星佳「じゃあ、私が開けたら、このドアはどこに繋がっているの?」


◎死神

「どこにでも」


●星佳

「どこにでも?」


◎死神

「このドアはどこでもドアなんですよ」


●星佳

「ど、どこでもドア~?」


◎死神

「違う違う、どこでもドア~」(死神、ドラえもんっぽく)


●星佳

「…黙れ変態!どっか行ってよー!」(ドスのきいた声で)

星佳、どこでもドアを蹴る。


◎死神

「うわ、乱暴なお嬢さん」


●星佳

「あっ……」

 

蹴った拍子にドアがゆっくりと開いた。


ドライアイスの煙がもくもくと出、そこには怪しい風貌の男が立っていた。

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