彼に会う方法

曲が終わり、まだ余韻に浸っている星佳。


しかし突然、瞬時に後ろを振り向く。

星佳が振り向くと、バックのミュージシャンは照明とともにぱっと消える。


星佳、観客に向かって必死で訴える。


●星佳

「ほら!ほらー!ほらほら!」(興奮気味に喚く)

椅子から立ち上がる。


●星佳

「見たでしょ、何かいたでしょ、ってか、弾いてたでしょう」

足元に転がっているペンライトで辺りを照らし、先ほどミュージシャンがいたらしき場所を隈なく探す。

星佳の照らすペンライトで、アコースティックギターの輪郭が映し出される。


●星佳

「ここでライブをするとね、こうやって必ず、いるはずがないのに、誰も触っていないのに、このギターが伴奏を弾くんです」


●星佳

「私一人なんですよ、ここにいるの」

ペンライトでいろんなところに照らす。客席にも光を当てる。


●星佳

「恐いでしょ、ほんとなら……」


●星佳

「お化け」


お化け屋敷風のひゅーどろどろの音に合わせて、星佳、お化けの身振りをする。


 ――不気味な照明。


先ほど、ミュージシャンが弾いていた場所の後方スクリーンに、映し出された男のシルエットが奇妙な動きをしている。

(男のシルエット、思い付く限りの気持ち悪い動き)


星佳、きーっ、とシルエットを威嚇すると瞬時に消える。


●星佳

「でもね、私の知り合いなの、このお化け」

向き直った星佳が、そちらを指さす。


●星佳

「そして、もう一つ、どうして私は一人なのにこうしてべらべらとマイクを使って、誰もいないのに語っちゃっているのかっていうと、」

マイクをスタンドに挿し込むと、後方の階段を駆け上がり、ドアの前に座り込む。


●星佳

「こうしないと会えないから」



 ――暗転。

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