第一幕

ライブ会場の幽霊



中央に椅子。

向かって右側にはギターの置かれた椅子と譜面台がある。

左手には三段の階段。

階段の上には、ド○え○んの ‘どこでもドア’ のようなピンクのドアがある。






 ――暗転。


暗闇の中、一つの強い照明が一点を照らす。

映し出されたのは、マイクを両手で持った星佳。椅子に座っている。


●星佳

「ええ、皆さま、こんにちは」


拍手が鳴り響く。

星佳、深々とお辞儀し、架空の観客に手を振ってみたりする。


●星佳

「本日は私のライブにお越しいただきまして、ありがとうございます。今日はね、歌を歌う前に、真夏にぴったりの怪談なんかを一つ、皆さまにお届けしようと思っているんですの」



 ――突然、暗転。


すぐに、星佳、手持ちのペンライトを自分の顎に当て、また消す。

辺りは再び暗闇に包まれる。


●星佳

「びっくりした?」(くくく、と笑う)

星佳、ペンライトを付けたり消したり自由にしながら話し続ける。


●星佳

「皆さん、怪談ですよ」

 

青白い照明が、左側後方の階段を照らす。


●星佳

「あ、階段ですね。でも、それは違います。照明さん、ふざけないでくださいね」

星佳、冷静に言う。


 ――再び、周囲が明るくなる。



●星佳

「え~私、歌うたい、星佳ちゃん。こうやってね、ライブハウスで歌うとね、あ~必ず現れるんです。はい、気配っていうんでしょうかねえ……今も。いるはずがないんですけどね、おかしいなあ、おかしいなあって振り返ると誰もいないんです……とにかく、歌えば分かるんです。何しろ、自己主張の強い奴でしてね。まあまあ、聞いてくださいよ。ここで一曲、○○」(稲川淳二風に)



 ――星佳にスポットライトが当たる。


星佳、一曲歌う。(○○)


ギターの伴奏とともに、右側の椅子に座ったミュージシャンの手元をスポットライトが照らす。

ミュージシャンの顔は暗くて見えない。

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