第4話

…なかなか立派な町じゃないか!!


それが町に入って最初の感想だった。

あちこち眺めながら歩くとファンタジーチックな光る噴水や、猫耳、犬耳などいろんな種族とすれ違った。


やっぱり異世界って凄いな!

そんな事を考えながら歩いていると…どこからかいい匂いがする。


……そういえば転移してきてから何も食べてなかった。


あの謎空間では腹が減る事が無かったから、俺はすっかり食欲というものを忘れてしまっていた。


さっそく匂いを辿りながら歩いた。

そして一軒の店の前に着いた俺は看板に目を向けると、そこには「目からウロコ亭」と書かれていた。


ネーミングセンスに疑問を感じたが、空腹だったし匂いの誘惑に勝てず店に入る事にした。


扉を開けると他にも何組かの客がいた。

そこそこ繁盛してるみたいだし、味も大丈夫だろうと安心した俺はどこに座ろうか考えてると声が掛かった。


「いらっしゃいませ!お一人ですか?こちらにどうぞ」

なんと!

猫耳の店員さんが席を案内してくれた。


しかも……本物の猫耳の店員さんに!

猫耳というか獣耳ってだけで、女性の可愛さが2倍になると感じるのは俺だけだろうか?

実際目の前にいる店員さんはびっくりするほど可愛かった。


……まぁくだらない話はさておいて、店員さんに案内された席に座った俺は早速テーブルに置かれたメニューを確認した。


……のだけど分からない。


いや……文字は読めるんだけどどんな料理か想像がつかなかった。


パネーの香草焼き→パネー!?

パオパオの蒸焼き→パオパオ!?

マカンゴ煮込み →マカンゴ!?


何度考えても分からないかった俺はメニューを隅々まで確認した。すると下の方に「ランチセット」なるメニューを発見した。


これにしよう!

そう決めると店員さんを呼び注文してから待つ事10分。

待ちに待った転移後初めて食べる料理が到着した。


見た目はクラブハウスサンドとスープ……だが問題は味だ。

俺は恐る恐るサンドを口へ運んだ。


う……うまいじゃないか!


スープも飲んでみると薄味のオニオンスープみたいな味で普通にうまかった。


食事に満足した俺は、席を立つと支払いのため猫耳店員に話しかけた。


「美味しかったです。料金はいくらですか?」


「ありがとうございます!お会計は500Gになります」


ナビに500G出してとお願いすると、返事の代わりに500Gが出てきた。ほんと便利だよな…アイテムボックスとナビの組み合わせ。


俺は会計を済ませると店を後にした。

後ろから店員さんの「ありがとうございました。またお越しください!」という声が聞こえたので振り返って会釈をした。


店を出た俺は多くの人で賑わう通りを歩きながら、次に何をするか考え始めた。

……とは言っても日が傾いて来ていたので、暗くなる前に宿を探す事に決めた。


しかしなかなか見つからない……そもそもどこが宿屋なのか全く分からない。

どうしたものかと考えていたらナビが話し掛けてきた。


「マスター。宿はこの先に4件あります。案内を開始しますか?」

ナビ…君はホントに優秀だな!

俺は案内を頼むと直ぐにナビの誘導が始まった。


しばらく歩くといくつかの宿の看板が目に入った。 そんな中……ひときわ目に留まったものがある。


「宿屋 猫のくつろぎ」

……よし!ここにしよう。


俺はその看板の宿屋に入った。

……決して猫耳の店員さん目当てではない。


さっそく宿に入ると…普通の人が立っていた。

別に期待はしていなかったんだけどね……。


気を取り直して宿泊手続きを済ませた俺は、係りの人の案内で部屋へと向かった。

案内された部屋はなかなか広い部屋でベットも大きく寝心地も良さそうだ。

靴を脱ぐと早速ゴロンと横になった。


ふかふかのベッドに思わずウトウトしてると、ナビからびっくりする提案を受けた。


「マスター。アイテムボックスに入っている花嫁召喚キットex/pkg〜運命 は使用されないのですか?」

その提案に眠気が一瞬で消え去った。


そういえば買ったな!

いや……買わされたというべきか?すっかり忘れてた。


1億もしたんだ!

使わない手はないし善は急げ!

そう考えた俺は早速開けてみる事にするとナビに出すよう頼んだ。


すると目の前が激しく発光した。

あまりの眩しさに目を閉じた俺が再び目を開けると……


それはそれは美しい女性が立っていた。


……全裸で。



……


どれくらいの時間が経っただろう。

裸の美人さんは全く動かないし目も閉じられたままだ。


お陰で彼女の裸をじっくり眺め……いや落ち着く時間を取ることは出来たんだけど。


裸のままでは流石に目のやり場に困るので、俺はベッドのシーツを捲ると彼女に巻きつけた。


しかし一向に動く気配のない女性の様子にどうするか迷っていると、1つアイデアが浮かんできた。


そう……困った時はナビに聞いてみよう!俺はさっそくナビに尋ねてみた。


「ヘイ!ナヴィ!」

その呼びかけにナビは直ぐに返事を返してくれた。


「……お呼びですか?」

若干引き気味のナビに構わず聞いてみた。


「彼女が全く動かないんだけど…どうすればいいかな?」

そう尋ねる俺にナビは迷わず答えてくれた。


「ステータスボードを確認すれば良いかと思います」

ノータイムで答えが返ってきた…ホント優秀だな。


…ん、ステータスボード?

あるのそんなの?


試しにステータスボードと言ってみると目の前に2つのモニターが出てきた。


ナビに「こんな機能があるなら最初に教えてくれよ⁈」とツッコミを入れたが案の定無視されたので、俺は気を取り直すとステータスボードに目を向けて内容の確認を始めた。

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