第2話 あまり良くない感情
図書室へ行ったら、幹さんが
天野は彼らに見えないように回れ右をして図書室から出た。
なんだろうこのモヤッとした感情と、グサリと胸に杭でも打たれような痛み。別に逃げる必要もないのに自分が悪者みたいな気がして現実とは一歩離れたところで逃げるよう勝手に体を動かされた気がする。
放課後、幹さんに聞いた。
「幹さん、昼休みどこにいたの?」
「昼休みといえば…図書室で勉強してたよ」
「一人で?」
「ううん。宮岸くんと一緒」
「なんで宮岸くんと?」
「私、数学がちょっと他の科目よりも苦手でね。その点宮岸くんは理工学部を受験するだけあって得意なの。だから教えてもらったの」
「へえ、オレも数学はわりと得意な方なんだけど? 話さなかったっけ?」
「知ってるけど、天野くんは天野くんで忙しいと思ってさ」
「まあ確かにオレはC判定だから、余裕ブッこいて他のヤツに教えるヒマなんか無いよな」
「どうしてそういう言い方をするの?」
「わからん。そういう性格だ。なんなら宮岸と付き合った方がいいんじゃないの?」
「なに? ヤキモチ焼いてるの?」
「なんだヤキモチって。んなわけないだろ」
「ヤキモチ焼いてるならはっきりそう言ってよ。逆にそう思われてるんなら、女子としてはうれしいから」
天野はしかしヤキモチとは言わず、ただの気まぐれだと言ってごまかした。
受験勉強をしながら幹との交際を続けているうちに、三学期が終わり、冬休みに入り正月がやってきた。
初詣には二人で出かけ、絵馬に合格祈願を書いて参拝した。おみくじは末吉だった。破魔矢も買った。その帰り、幹がこう告げた。
「ちょっぴりさみしいけど、今日から受験が終わるまでは会わないようにしましょう」
「え、どうして?」
「そろそろ本格的に受験勉強に集中しなきゃ」
「だけどオレ、樹菜ちゃんに会えなきゃよけい集中できないかもしれない」
「ダメ。ちゃんと集中して。私だって本当は会いたいけど、ここが人生の前半の正念場だと思うから」
適当に返事をして天野の方からキスを欲しがり、神社を出てから人気のないところへ行きキスをした。これが受験前最後のキスだと思うと天野はがっかりするばかりだった。
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