Dark in closet

山上短歌

第1話 はじまり

世界は曖昧で埋め尽くされている。正しいとは言うけれど、間違いだとは言うけれど、なぜ正しいのか、なぜ違うのかなかなか説明できないのだ。そんな世界に革命を起こしたい、私の夢はいつしか厨二病臭いものになっていた。叶えられるわけがないと内心気づいているけれど、「世界を変えたい」という私の欲求は、解消することができなかった。明日からは高校生、もうこんな夢も通用しない年頃である。せめて最後に夢でいいから世界を変えてみたい、そんなことを考えながら床についたのだった。

 目が覚めると、何度も見た天井が見える。

「まぁ、そんなもんだよな。」

独り言にしては大きすぎる声で呟いた。私は昔から、独り言が多く、周りから不気味に思われるほどだった。何度も気をつけようと努力はしたのだがなかなか直せなかった。

「そろそろ着替えるかぁ」

大きな欠伸をしながらクローゼットを開く、

「な、なんだよこれぇぇぇ」

私は目の前に広がる光景に唖然とした。

そこにはいつも着ている衣服はなく、何かの石で作られた階段があるはずもない上の階につながっていたのである。私の家は1階建てであり、屋根裏部屋もない、一体この階段はどこにつながっているというのだろうか。恐る恐る上を覗くと、ただ暗く見ているだけで引き込まれてしまいそうな闇が広がっていたのだった。私はその闇に心奪われ、あろうことか階段を登っていたのだった。体が言うことを聞かない、まるで自分の体ではないようだった。ただ闇の中を進んでいるうちに私はあることを思い出した、今日は高校の入学式だったのである。パジャマのままで今何時であるかもわからない、いつも5時には起きているが流石に遅刻だろう、私はなんとか我に返り、踵を返して早急に自室に戻った。自室に帰るまで体感1キロメートル程歩いたように感じられた。やっとの思いで帰ってきた私にまたもや信じられない事が起こったのである。

朝5時に起きてからまだ10分も経っていないのである

「どうなってんだよ!?」

それしか出てこなかった。しかし、これで入学式に遅刻せずに済むと思うと何故か救われたように感じた。

このクローゼットについては入学式のあとに考えようと自分に言い聞かせ、入学式の準備を始めた。

「どんな高校生活が待っているか楽しみだな」

ワクワクした口調で呟いた。

自然と口元も緩むものだ。

鏡に映る男の顔がニタリと笑みを浮かべる。

「あっ、服どうしよう…」

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