第4話 秘密結社は永遠に

 そんな訳で仕事を片付けた俺達は、株式会社 悪の秘密結社マステマ団 八王子営業所へと帰ってきた。

社内にはシャワー室も完備され、俺達が以前務めていたブラック企業やバイト先と比べれば、天国のような職場環境だ、これが本来あるべき職場と言うものだろう。戦闘員達の表情にも笑顔がこぼれている。やはり、仕事の後のビールに勝る幸せはないのだ。


 営業所には社員寮も隣接されているし、仕事帰りにコンビニで用意した酒とさかなで皆、思い思いに打ち上げをしている。「お疲れ! 今日もいい汗掻いたな」


 既にほろ酔い気分のみんなは、タイムカードを押して、続々と寮や送迎バスで帰宅して行く。これが人間らしい充実した生活と言うものだろう。




 

 しかし、班長である俺にはまだ終業後の書類作成が残っていた。それも今日は、69班が全滅してしまったので、いつもの倍の書類と、死亡者全員の労災申請書類まで用意しなければならなかった。 今日はタイムキーパー兼事務員である773番と残業になる。


 気晴らしに、事務所のテレビを点けると早速、俺達の今日の活躍が報道されていた。


『連続銀行強盗犯は、小泉銀行で十人、竹中中央銀行においては二十人もの罪の無い市民を殺害し、現金三十億円を奪って今も逃走中です! 現場からは以上です』


「随分と盛ってない? うちの犠牲者もカウントされてるよね」


「でも、書類には公式発表を書いときますね。見栄えがいいし」

 773番は、ほんとに仕事の出来る奴だ。





『ここで、犯人たちを取り押さえようとして殉職された警察官、浜田伴次はまだばんじさんの御遺族と上司へのインタビューです』

『浜田さんは一人で、それも素手で犯人に立ち向かったそうですね~』

『彼は善良な市民を守る、我々警察官の鏡です!』


「へ~あのゴリラ、人間だったんだ。でもなんかイメージ違うよね。問答無用で殺しまくってたのに」

「じゃあ、労災申請は、『凶悪サイボーグ・ハンマーパンチに接触した事故が原因』に、しておきますね」

 773番は、ほん~とに出来る子だなぁ。


『次は、小泉銀行でのインタビューです』

『犯人は早漏でした!』

『三分もたないなんて、なんて恐ろしい……』

『早漏のレイプ犯とは、凶悪ですね』





 773番のおかげで、なんとか早い時間に業務を終える事が出来た。今日は773様々の一日だったな。


 そんな訳で、時間に少し余裕が出来た俺は、机の後片づけをしている773番のうしろにまわると、まだ着替えていない773番の強化全身タイツの、テカテカと鈍く光る柔らかな曲線を描く黒タイツの上から掌を這わせ、全身を優しく揉みしだいた。

「今日はよく頑張ってくれたから。これはご褒美のマッサージだ」


「774番駄目ですよー」

 口でこそ嫌がってはいるが、戦闘員強化手術により、駄目と言われると余計にしたくなる事はお互い承知のうえだ。それは「もっとして」の意味だと理解する。

 

 

 

 

 タイツを押し上げている柔らかな膨らみを、両手で丸く円を描きながら刺激してゆくと、先端がぷっくりと硬くなるのを感じる。


 やがて、773番の背中に押し付けた俺のジャージの一部も硬直し、773番のあやしくくねる刺激が布を介して伝わってくる。


 牛乳瓶の底の様なメガネをずらし、細い指が外した事務員の仮面の向うから現れた素顔は、意外なほどに整っている。 

 

 

 

 

 通気性のよい悪の秘密結社謹製強化全身タイツから、高まった773番の体が発する熱と湿気が感じられる。そして、俺達は一つになった。

 

 改造人間戦闘員である俺達の愛のいとなみは激しい。もう摩擦で火が出るのではないかと心配になる程に激しく、千切れてしまいそうな程に快感が高まってゆく。だって、戦闘員なのだから。

 

 常人を遥かに超える愛を求めあった俺は、シャワーを浴びて着替えた773番を家まで送ってゆく。

 

 この会社に就職するまでは夢物語だったリア充全開の幸せを今、俺は感じていた。

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ショッカーさん 宮埼 亀雄 @miyazaki3

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