SS「私の世界」



 自分の部屋の中では。

 息をひそめて過ごすのが日課だった。

 存在を主張しない事が、ただ言われたことをやる事が、生き延びるための近道だった。


 私、学生なのに、楽しい事あんまりしてない。

 友達はいた。

 名前も覚えてる。

 でも、顔は思い出せない。


 もっと話をしたかったな。

 年頃の女の子らしい事をしていたかったな。


 恋愛の話とか。

 話をする時は、皆ひとみをキラキラさせていて、とても楽しそうだった。

 私は、そういうのその時はよく分からなかったから、聞くだけだったけど。

 ステキな事だと思う。


 恋をした人達はみんな見違えるくらい変わっていった。


 髪留めをさわる。

 冷たい感触だ。

 でも、あたたかい。


 私も恋をしたら、そんな風になれるんだろうか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る