ウォルド01
そいつと再会したのは偶然だった。
最初は、刑務所の中に、新しい犯罪者がやってきたとばかり思った。
けれど、そうじゃなかった。
知った顔だった。
俺「おい、あんた」
俺は向かいの牢から出たその女に声をかける。
すると、女が身じろぎする気配
穴でもあけるようにじっとこちらを見つめる。
間違いない。
あの時の女だ。
追手から逃げていた最中、俺を泉に沈めてかばってくれた女。
俺の事は覚えているだろうか?
いや、覚えていないはずはない。
あんな印象的な出会い方をしたのだ。
それに、つい最近の事だ。
忘れられる方がおかしい。
けれど、信じられない物を見たような顔で俺の顔を見て「ウォルド様だぁぁぁぁい?」と言った。
それどころか、出会った頃のような神秘的な雰囲気を微塵も残さない様子で、何事かをまくしたてられた。
少女「ふぁっ、ウォルド様! ヒロイック・プリンスの、あのウォルド様! 推しが私の目の前に!」
なんというか色々と忙しかったし、せわしない奴だった。
容姿はまったくおなじだけれど、これは別人だ。
俺はそう、直観した。
鍵開けの技術を持っていた女は、人の気配を正確に読み取った。
ずっと追われていた俺と、ほぼ同時に人が来ることに気がついたのだ。
ただ者じゃないと思った。
だから、警戒は怠らない。
けれど、そんなこちらの内心も知ってか知らずか、そいつはまるで素人のような身のこなしで脱獄する俺についてきた。
少女「おっ、これは法典! 生・法律の本! 一度手に取ってみたかったんだよねぇ! この鈍器みたいな分厚さ。うへへへへ、設定資料集通りに重い!」
これからもついてくるようだが、俺はその女に対してどう接すればよいのか、判断しかねていた。
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