第8話 推しが真実を知った日
ばばーん!
ヒロイック・プリンスの序盤ではとある事実が判明する。
天使の神殿に行くときに判明する、超重要なその事実はぁぁぁ!
推しが王族の血を引いていた!
みたいな話だ。
王族といっても、五、六代前の血なんだけどねっ。
ウォルド様は、(他の登場人物)他の人とは何かがちょっと違っていた
!!王子様!!
だったのですっ。
道理で恰好よくて、気品があって、素敵で、私が惚れるわけですねっ。
ともかくこのまま旅が進めば、天使の神殿を探している私達は、知る事になる。
ウォルド様の体に流れている王族の血が必要だという事を。
青狼の里
神狼「わふっ」
私の目の前には情報屋のわんちゃん。
神の狼と書いて、特別な生き物なんだけど、見た目はわんこと一緒。
だから、もふもふするとすっごく気持ちいい。
おう、おう。わおーん。
神狼「わふっ、わんわんっ」
わふーん。
わしゃわしゃ。
もふもふ、気持ちいいっ。
あっ、ミュセさんももふもふしてみますん?
こいつわんこの分際で、ものすっげぇふわっふわですよー。
なんて、調子にのっていたら。
目の前のわんこが、口をあけて……。
がぶり。
私「いたたたたっ」
ミュセさん「イツハさんっ、大丈夫ですか?」
私「へっ、へいひれす」
ウォルド様「何やってんだあんたら」
おっと、すみませんウォルド様。
推しを放っておくなんて、私にあるまじき失態。
ちょっとこのわんこがあまりにも、超絶見た目がもふってたので、ついもふってしまいやした。
私は情報屋の看板を首からさげてるわんこを指さして、ウォルド様に報告っ!
さすが情報屋のあんちゃんっ!
今情報が必要な人の目の前に、現れてくれるとは。
でも、わんこの手柄は私のものだっ!
私「えっと、どうやら天使の神殿はあっちにあるらしいです。このわんこちゃんが案内してくれるそうですよ! 私すごい!」
ウォルド様「そりゃ、助かるけどよ。犬の言葉なんて、なんで分かるんだ?」
私「フィーリングですっ。ウォルド様の愛があれば、何でもできるっ」
ウォルド様「だったら、掃除とか洗濯とか炊事ももうちょいできそうだけどな」
ぎくっ。
そこを言われるとちょっとあれですねー。
ほら、そのー。
……。
すみませんっ、調子に乗ってました。
そういうのはミュセさんに全部やってもらってますねっ。
へぇ、頭があがらねぇよ。姉御。
私は神狼をもふもふしながら、ウォルド様に向かって謝ります。ミュセさんを拝みます。
ゲームでは、神狼の言葉を理解するためのアイテムがあったんだよね。
それをゲットしてから、神狼と会うのがセオリーなんだけど、私うっかりさん。
そいつのゲットイベントを無視してここまで来ちまったんでい。
旅で立ち寄った町か村の中に笛が売られてる屋台があったんだけど、私が騒ぎを起こして兵士やら何やらから逃げなくちゃいけなかったんだわさっ。
てへぺろっ。
まあでも、ゲームやってたからこのわんちゃんが大体どんな事を言ってたか分かるし。
大丈夫でしょっ。
私「さあっ、行きましょうウォルド様。いざっ、天使の神殿へっ。るんるんらら~ん」
ウォルド様「ごまかしてねぇか? 何か秘密にしてんだろ。お前」
私「ぎくっ。な、なんの事やら……、わーかりませんー」
失態なんて言いたくありませーん。
だって、ただでさえ低い評価がさらにマイナスに天元突破してしまうじゃないですか。
冷や汗書いてると、ミュセさんがくすくす。
おう、美女を笑顔にしたなら、私の奇行それでおっけいってことで良くないです?
そうしとかないです?
天使の神殿
というわけで、艱難辛苦、山あり谷あり、仏の顔も三度まで!
色々あって、やってきた天使の神殿。
ウォルド様の血を使って、開けゴマっ!
王族の血を引いてるウォルド様が扉に手をふれたら、ぱっかーんとザ
オープン。開いたのでした。
ウォルド様ご来訪!
……をしたあと、興味本位にあちこち見回ってたら、あららうっかりさん。
ここから私急展開!
入口からちょっと進んだ先にトラップがあったみたい。
落とし穴にはまって、仲間と分断されちまったよ。
うぉぉん。
私の視界に推しがいないっ。
癒し成分のミュセんさんもいないっ。
今の私は深刻なウォルド様産ウォルニウムABC+ミュセさん式マイナスイオン不足なんでいっ。
私「ウォルド様ーっ、ウォールードーさーまーっ!!」
しーん。
私「ミュセさーん。ミュッセさーーーん!!!」
しーん。
しかし、推しよ。
分断される前に、穴に落ちるシーンがあったが、普通に見送ってましたな。
私をかばって、一緒に落っこちてくれたりはしなかったんですね。
ヒロインだったら、とっさに手を伸ばしてくれたのに。
私かなしいっ!
ヒロインでもない女を助ける義理はないと。
ううっ。
いいですもん。
これから、じっくり時間をかけて、好感度あげますもん。
これから、みっちり時間かけて、魅了していきますもん。
そうと決まったらこうしちゃいられない。
さくさく進んでウォルド様と合流しないと。
ゲームの内容通りに進んでいったら、ヒロインも分断されてたし。まあそんなに悪い事にはならないっしょ。
ウォルド様がいない事でちょっとは、かなり、ものすごく、とっても寂しいけれどもっ。
原作の流れを考えると、ウォルド様そろそろ三人目の攻略対象に出会っている頃合いかなー。
私あの人好きじゃないんだよね。
オラオラしてるし。
序盤で投獄されてなかったら、三人目の攻略対象に出会って、そのルートに入ってるんだけど、お断わりですよっ。
私はウォルド様一筋なんでねっ。
そういうわけで、合流を急ぐべく、あっちへ行ったりこっちへ行ったり。
神殿の中をうろうろ。
そうしたら何か薄暗いところに入り込んでしまった。
まっくら!
ちょいちょい、何も見えないんですけどーっ。
入ってきた入口どこだっけと思いながら、わたわたしてたら、急に部屋が明るくなった。
そこでようやく、部屋の内部がきちんと見えてくる。
目の前にあったのは光り輝く水晶だった。
水晶の中には、羽が入っている。
おっ、これは原作でのイベント発生だぁぁぁ!
おおおっ、ちょっと興奮。
ここで、真実が分かるんだよねっ。
『異界から来た少女よ。私の声が聞こえていますか?』
声が聞こえてきたのは水晶から。
この水晶を使って話しかけてきているのは、本物の天使だ。
天使の居場所と謳われているこの場所だが、この遺跡を管理している天使ではない(天使の中身は悪魔だからだ)。
だから、遠い昔に悪魔にやられて、悪魔(の体)になってしまった天使が、遠くの地から私に話しかけてきているのだ。
「はいっ、異界から来た美少女ですっ。天使さんですよねっ!」
『どうかこの世界を救ってください。あなたがこの世界にまぎれこんでしまったのは偶然の産物のようなもの。ですけど、ここまで来たなら、あなたに託す他ありません』
おや、私が転移してきたのは、誰かの思惑とかそういうのではない?
ちょびっと気が楽になったかな。
じゃあ、思ったより好きに動いて良さげって事?
天使と悪魔の壮大すぎる諍いに巻き込まれたのはちょっと遺憾ですけど。
まあ、いいか。難しい事気にしない!
推しに会えたし。
『どうか、悪魔を倒してください。それができなければ、せめて人々に真実を』
「わっかりましたっ」
『そのために、あなたには力を与えましょう』
天使が言葉を言い終わると、光っていた水晶の中から羽が抜け出てきて、私の体にすっぽり入ってしまった。
うぉぉぉっ、不思議な現象っ。
これって原作でヒロインが力をもらうっていう、イベントじゃないっすか。
確かヒロインは、治癒の力だったかな?
うひょーい、テンションあがるぅ。
どんな力が使えるようになるんだろう。
これでウォルド様の力になれば、ウォルド様からの好感度あげあげだぁっ。
そしてら、お嫁さんにしてくれるかなっ。
うへへへへっ。
『もう話をしている時間が残されていないようですね。どうか、この世界を……』
おっとと。
もう時間切れのようだ。
天使様(本物)に感謝の言葉を伝えておかないと。
あっ、あと言っておかないといけない事があった。
「天使様ありがとうございます。真実は必ず皆さんに伝えておきます。ですけど……私が頑張るのは世界の為とか皆の為とか、そんな大仰なものではありません。ただ一人愛する人がいるから、だから頑張るんです。天使様にはごめんなさいですけど」
しーん。
おやぁ。
せっかく恰好つけたのに、もしかしてとっくに時間きれてらっしゃった?
え、私誰も聞いてないのに、真面目な声で喋ってたとか。
何それ恥ずかしいっ。
友達から、よく人として恥ずかしいみたいな事言われてるけど、これ程の恥ずかしさそうそうないよっ。
話せなくなるなら話せなくなるって言ってくれればいいのに、もう天使様のうっかりさんっ。
まぁ、終わった事を長々と考えてたってしょうがないよね。
後を引かないのが私の魅力ですしっ。
さーて、ウォルド様やミュセさんと合流するぞーい。
三人目の攻略対象と、悪魔と天使の事について会話してるはずだよね。
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