第36話
「アキラ、我はダンジョン攻略のため、お主に伝えた通りの方法で支援するが、もう少し人手が欲しいのう……」
「その為に俺は、祭先生を助っ人にするつもりだ」
「我は苦手じゃよ……あのおなごは……。 我、生徒じゃないのに説教されたし……」
さて、迷宮型ダンジョンに潜り、調べることにしたアキラは、セラティアと共に魔王城へ向かうのだが、その前にもう一人、助っ人として祭を呼ぶ為、電話を掛けながら歩いている。
……のだが。
「先生、あの……」
「お前……今度は俺にどんな不幸をもたらす気だ……」
「は? 何いってるの先生?」
「今度はどんな不幸をもたらす気だと言ってるんだ……」
「…………」
どうもこの前呼び出され、デートが潰れたことを根に持っているのか、電話の向こうからは呪わんばかりの祭りの声が聞こえてくる。
不幸を他人のせいにするとは、大変心の狭いゴリラではなかろうか?
しかし、マオの為(という建前の為)にもアキラは諦めるわけにはいかない。
ツカサは少し考えると。
(情に訴えよう!)
という考えに至り、アキラは祭の情に訴えかけることにした。
「せ、先生聞いて! マオはあと十日で消滅するんです、このままじゃいなくなってしまうんですよ!」
「…………」
「良いんですか!? このまま会えなくなっても……」
「あぁ分かった、分かったってんだよクソ! 生徒のピンチほっとくってのも出来ねぇしよ俺は! ええいクソ、疫病神共、学校へ来い! そこで待ち合わせだ!」
そしてそれは、結果的には上手くいったらしく、学校で祭と合流することになった。
だが、その一部始終を聞いていたセラティアは、ふと思ったことがあった。
それは、合っていたら絶望的な、想像の話だった。
(待て……。 疫病神って事は運が低いのか? それって目的のものが見つからないフラグではないのか?)
…………。
「おうお前ら……。 今回は何をやるつもりなんだ。 なお、今日の夜はダメだぞ、アイツの仕事が終わった後、デートの振り替えがあるからな!」
「あーそうだったんですか……。 いや、手伝ってもらいたいのは、願いを叶える宝石探しでして……。 先生も聞いたことがないですか?」
「あーあの噂の……。 なるほど、それでマオが消え去らないようにするんだな?」
「そういう事です。 なので、手伝える範囲で手伝ってもらえれば……」
「ところで、お前の仲間達はどうしたんだ?」
「ツカサ兄もジンレイも手分けして探していますよ」
「あぁ分かった……。 ん、待てよ! どうせならレイジも呼ぶか!」
「へ? 良いんですか?」
「なーに、そうすれば、デートも出来て一石二鳥だろ! よし、そうするか?」
「では先生、お言葉に甘えます!」
学校の校門前では今、アキラから話を聞いた祭がそのような提案を行い、アキラもそれに同意したようだ。
だが、そんな中で、セラティアはげんなりした顔で二人を見つめていた。
それは、こっそり二人に
ツカサ 幸運 2
祭 幸運 3
と言う数値を見てしまったからである。
さて、この数値の低さ、つまり幸運が一桁という事を分かりやすく説明すると。
《トラブルや不幸に巻き込まれやすい。 しかも、近くにいる他人も、相当運が良くない限り、トラブルや不幸に巻き込まれる恐れあり》
と言えば通じるだろうか?
もっと分かりやすく言えば。
《なすりつけ不可のハ○ケーンボ○ビーが常についてきている》
と言えば、分かる人は分かるのではないだろうか?
つまり、セラティアは今、目の前の二人について。
(……疫病神の最強タッグじゃな……)
と思わざるを得ないのである。
しかも、疫病神Aである祭は、仲間を呼ぼうとしている今、セラティアはとある決断をするのである。
「なら我は、お前達をダンジョンへ案内した後、情報収集して回ってくるぞ」
それは、遠回しに言えば別動隊としての情報収集。
ストレートに言えば、疫病神の分離作業。
そんな苦渋の決断をしたのは、セラティナなりに考えた末に結果だろう。
それも傷つけないよう言葉を選んで……。
だが、疫病神達は自分の運の無さを頭にいれていないらしい。
「落ち着け、別に一緒でいいだろ? 一緒に探すのは不満か?」
「そうだぞセラティア、先生のいう通りだぞ? それに俺たちと一緒の方が、図書館やインターネットで調べたりする時、便利だろう? 多分、インターネット、なれないうちは難しいだろうしな!」
(「おーい、我だってインターネットできるぞ~。 我、人間の文化を知る為ネットカフェによく行ってたし」っと言いたいけどのう……。 こんなキメ顔で言われると、さすがに気を使って言いにくいのう……)
しかもアキラに至ってはキメ顔で気遣いした為、セラティアがそれ以上の気遣いをする負の遺伝を引き起こす。
だが、それでも諦めきれないセラティアはここで、第二の分離作業へ入る!
「そ、そうじゃ我! クックキング達に領土獲得の報をせねば!」
「落ち着け、それは今やらなくてもいいだろ?」
「そうだぞセラティア、先生のいう通りだぞ! 冷静さを欠いているのは分かるが、こんな時だからこそ、今やるべき事をやる必要があるだろ?」
(ぬぐぐ……。 なんでこんな時に限って何故、上手くいかんのだ……!?)
しかし、残念ながら第二の分離作業も失敗に終わるのだが、ここでセラティアは最後の切り札を出す。
「じ、実は我、お手洗いに行きたくて!」
それは、ダメとは言いずらい言葉のトップに入る言葉ではないだろうか?
そんな魔法の言葉を駆使した脱出、成功するはずだったのだが……。
「落ち着け、トイレの場所わからないだろう? それに私もトイレ行きたかったからな」
「そうだぞセラティア、先生のいう通りだぞ! それに二人でいけば、なにかと安全だろう?」
「あ、あははははは……」
どうも不幸のハリケーンに巻き込まれた時点で逃れられようもなかったらしい。
セラティアは悲しさのあまり、ただ不器用な笑みを浮かべて笑うしかなかった。
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