第19話 ならば我に捕まれ、飛ばして行くぞ
時間は昨日の夜に戻る。
ニワトリ達に小屋を囲まれ。
「コケコッコッコ」(なんだコイツ)
「コケコケコケ」(確かバカみたいに弱い人間の一匹だ)
「コケェェェェェェェ」(我々に殺される覚悟は出来たか!?)
と騒ぐニワトリ達にマオはグッとサインを掲げ不適な笑みをこぼし。
「騒がなくても分かってるわ……」
そう口にする。
それは、自信に溢れていると言う言葉がピッタリの表情で、流石にその様子にニワトリ達も。
(に、人間なのに我々の言葉をわかっていると言うのか……)
と思わせ、冷や汗を流す。
そしてマオは、そんなニワトリ達にニヤっと笑みを浮かべたまま、話し出す。
「ふふ……つまり私を祝ってくれているわけだね!」
「「「コケェェェェェェェェ」」」(何言ってるんだ貴様~!)
だが、それは雰囲気だけだった様子。
さて、ニワトリ達からの険悪な空気を察したセラティアは急ぎマオとニワトリ達の間に入り、仲を取り持とうとする訳だが。
「待て貴様達! マオは悪い人間ではない! マオも手を出すでないぞ!」
「ねぇ、私もニワトリと会話してみたい! 何とかできない?」
「ん? 話してみたいのか? その、魔法で出来んことはないが……だが、その……そのじゃな……」
マオの予想もしない一言にセラティアは困ってしまう。
と言うのも、せっかく仲良くなったのに、ニワトリの言葉を理解できる様にしては出ていってしまうかもしれない、もしくはニワトリ達が去ってしまうかもしれない。
そんなセラティアの思いをニワトリ達は察したのだろう。
「コケ、コッコッコッコ」(しかたない、その嬢ちゃんと仲良くすれば良いんだろ?)
「コケ!」(大丈夫、私たち綺麗な言葉を使うから!)
「コッコッコッコ」(だから安心して
ニワトリ達は、そう優しい笑顔を浮かべ、そう語りかける。
そして、そんな言葉は、セラティアを感動させるには十分な威力を持っていた。
「うっうっう……、お、お前達、我は嬉しいぞ……。 いつも『役立たず』だの『お飾り魔王』だのとバカにしていたが、それは冗談だったんだな……。 分かった、早速
そして、セラティアは感動しながらマオに魔法をかけ、ニワトリ達の言葉をわかるようにした、その瞬間。
「コケ!」(バーカ)
「コケ!」(ブス女)
「コーコッコッコッコ」(と言うか、そんなゴミみたいな戦闘力で生きるの、どんな気持ち? ねぇったら~)
「何よ、このフライドチキン軍団! アンタ達、白髪のおじさんの店に並んでみる!?」
「コケ!」(おうおう出来るもんならやってみろ!)
ニワトリ達は一斉にマオにそう罵倒し始め、それに反応したマオもそう言い返し、そこから争いが始まる雰囲気に包まれていたが。
「や、止めんかお主ら! 第一クックキング達よ、お主達は言い争いをしている暇などあるまい!」
「コケェェェェェェェェ!」(そうだった! 俺たちは同胞達を助けにいかなければ! てめぇら行くぞ!)
「ま、まさか!? おい待てお前達!」
セラティアの言葉に目的を思い出したのか、ニワトリ達は一回り大きいリーダー格のニワトリのそんな一声を聞くと、そのまま森の中へ走り去っていった。
だが、そのニワトリ達の行動はセラティアの望む事ではない様子、目に見えて動揺しているのがマオには分かった。
「どうしたのセラちゃん? アイツらどこに行ってるの?」
だからマオは訪ねる、その理由に興味をもったから……。
「あやつ等、捕まった仲間を救助しに行ってるんじゃ! じゃが、二人の老人は強い、じゃから落ち着いて作戦を練るべきと言ったんじゃが……」
「あ!」
その時マオは思い出した。
前に祭が。
「それと今、教会には近づくなよ、捕まえたニワトリを保管し……」
と言っていたことを。
そんな忘れていた記憶が頭のなかに浸透し終わったとき。
「セラちゃん、ニワトリ達は教会だよ! アイツら急いで止めよう!」
マオは無意識にそう口走っていた。
そして二人はニワトリのもとへ向かっていく。
「それは移動しながら説明するから! セラちゃん早く!」
「分かった! ならば我に捕まれ、飛ばして行くぞ!」
夜の闇広がる大空から……。
…………。
「つまり、同胞達は教会にいるからそっちに向かえと?」
「そうよ、ニワトリ達! アンタ達が仲間を助けようとする気持ちはよく分かるわ、だからついてきなさい!」
「そうか、分かった……等と言うわけがないだろう! 貴様、我々をハメる気だろう! 第一人間など今まで我らの子達を狩り続けてきた者共、元より貴様の話など聞く耳持たんわ!」
「あーもう!」
セラティアとマオは、森林の途中を走っていたニワトリ達の集団に追い付き、彼らのリーダー格へ説得を始めた。
しかし、リーダー格は一向に話を聞こうとしない。
だが、それは仕方のないことではないだろうか?
それまで人間は、彼らの子供を狩り続けてきた。
それも、彼らの思いなど考えずにだ。
そんな不満が蓄積され、蓄積され……。
だから彼らは人間など信じない、それは当然の結果だろう。
だが、このままでは説得しようもないのはセラティアは理解していた。
だから彼女は。
「お前達の気持ちは分かる。 ならば、その信頼の対価に我の命を賭けよう」
マオと言う人間の言葉に、信頼の価値を持たせるべく、自分の命を賭けると口にした。
それは、ニワトリ達だけでなく、マオをも驚かせる。
マオとセラティアの付き合いは出会って1日も経っていない。
なのに、そこまで自分の為にそこまでやってくれるセラティアの言葉にマオは。
「セラちゃん、そこまで言わなくても良いって!」
そう言って遠慮する。
それは、セラティアを思って言ったことだったが。
「マオ、我はお主との友情を信じたいのだ。 だから遠慮しないでくれ……」
それはセラティアの思いを否定する行為である事に気がつかなかった。
そしてセラティアは、マオの両肩にそれぞれ手を置き、自分の表情を見せつけて無言で自分の思いを訴えた。
「ねぇセラちゃん……。 ホントはさ、死ぬかもしれないって思って怖いんでしょ?」
「……うむ、我、やっぱり死ぬのは怖いぞ……。 で、でも我はマオを信じる!」
しかし、その目は怯えきって涙を流していた為、セラティアの本心はすぐにバレてしまった。
だが、それでもマオを信じようとする気持ちがキチンと伝わった。
だからマオはニッコリと笑みを浮かべて。
「セラちゃん大丈夫だって、絶対死なせないから!」
そうセラティアに告げるのであった。
「結論は出たか?」
リーダー格のニワトリは、ゆっくり近づきながらそう訪ねてくる。
そんなニワトリをマオは睨むように見上げ。
「セラちゃんの命と引き換えに、私の話を聞いてもらうわ!」
「面白い、ならばお前の話に従ってやる! よしてめぇら、教会へ行くぞ!」
そんな態度をリーダー格のニワトリも気に入ったようで、マオの言うことを聞くと宣言し、一行は教会へと足を進めるのであった。
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