第20話 生きて帰ってくるんじゃぞ……
「それで、どうするんだ? 人間の娘よ? 同胞はどこのいるんだ?」
「そう言えば先生、場所まで言ってなかったからなぁ……」
さて、教会の見える崖の上についたマオは、リーダー格のニワトリから作戦を訪ねられるが、冷静に思い出してみると、祭の話が途中で途切れているせいで、ニワトリ達がどこに捕らえられているか全くわからない。
なのでどうするのか、マオは腕を組んで静かに考え。
「そうだ! アンタ達さ、私を倒して! それで教会で蘇ったらさ、レイジに場所を聞いてさ、ここに戻ってくるから!」
そんな作戦をニワトリのリーダー格へ提案するのであった。
そして、それを聞いたリーダー各は。
「よし、ならば死ね」
「へ? ぎゃ!」
早速マオを教会送りにするのであった。
そんな姿を、リーダー格の上に乗るセラティアは。
「マオ……生きて帰ってくるんじゃぞ……」
と、まるで魔王との最終決戦に向かう勇者を見送るお姫様のように、マオを見送った。
…………。
「夜遅くに教会送りになるな、大バカ野郎!」
「死んだ人間に言う言葉じゃないと思うんですけど!」
それが棺桶から顔を出したマオに告げられた最初の言葉だった。
そしてイライラ気味なジャージ神父は、棺桶の前に座ると、まるでヤンキーのようにピクついた表情をマオに近づけて会話する。
「どうせ、部屋の角に足の指をぶつけて教会送りになったんだろ! 帰れ!」
「アキラと一緒にしないでほしいんだけど! つーか別に、ゆっくりしていっても良いじゃん! この人間失格神父!」
「うるせぇ冒険者失格! つーか、何でゆっくりしたいんだ!」
「そりゃ、噂のニワトリを見たいからでしょ、バカ神父!」
「うるせぇ、言葉遣い悪いやつに教える事はねぇ!」
「言葉遣いの悪い不良神父に言われたくないんだけど!?」
そんないつもの二人の会話だが、マオは自分の目的の為、聞き出そうとしている。
だが今日の不良神父は何より機嫌が悪かった。
と言うのも。
「うるせぇ眠いんだ! 帰れ!」
どうやら寝不足の様だ。
確かによく見れば、レイジの目の下にはクマがテリトリーを作っており、レイジの足取りは、ややふらついているようにも見える。
だが、それでも諦めきれないマオは、それを逆手にとったようなことを口にする。
「じゃあ、ニワトリの事話すまで帰りませーん!」
それは、今のレイジの弱点を的確につく言葉だった。
レイジは思う。
(きっとコイツは俺が話すまで扉のドアを叩き続けるかもしれないな)
と……。
だからレイジは、猫を掴むようにマオの首元を持つと。
「よし分かった説明してやる、ニワトリは奥の部屋から降りた地下室にいる、以上帰れ!」
「ぎゃ!」
早足出歩きながら早口でそう口にし、マオを教会の外へ蹴飛ばした。
そしてバタンと扉が締まり、ガチャっと鍵をかけられた扉に。
「クソ神父! 乙女のお尻を蹴飛ばすなんてなにかんがえてるのよ! おかげでHPが21しかないじゃない! このバカ! カス! 祭先生が居ないと何もできないダメ人間!」
「うるせぇ帰れ! 二度と来んな!」
「こっちこそ二度と来てやんないからね!」
そう喧嘩をうって協会を去るのであった。
…………。
「あークソ神父ムカつくわ……。 一回犬に股間を噛まれてくれないかな……」
「ま、マオ、落ち着かんか! 一体どうしたというんじゃ!?」
「だってセラちゃん、あの不良神父、いろいろ失礼なこと言った挙げ句、私のお尻を蹴飛ばしたんだよ! もう許せないんだけど絶対!」
さて、崖の上に戻ったマオは怒りを露にする。
どうやら、彼女はお尻を蹴られた件に関して、大変ご立腹なご様子である。
だがしかし。
「おい、俺の足を叩くな!」
八つ当たりとしてニワトリのリーダー格の足を叩くのは、いかがなものであろうか?
しかも。
「マオ、お主に調べた結果も教えてもらってないぞ! こ、このままでは我の命が……」
まだ、調査結果の報告をしていないのである。
ただ、さすがにセラティアの泣きそうな顔を見たマオは、自身の怒りの熱が覚め。
「だ、大丈夫だから! いい報告が出来るからね!」
セラティアに両手をブンブン振りながら、慌ててそう伝えるのであった。
…………。
「つまり、俺の同胞達は地下にいるわけだな?」
「そう言う事!」
セラティア達はマオの報告を受けた訳だが。
「じゃが、扉は閉まっている訳じゃな? どうする、マオ? 教会の扉は頑丈と聞くぞ?」
セラティアはその問題についてどうするのかマオに訊ねる。
しかしマオには考えがあった。
「そこはまた、私が教会送りになって、扉を開ければ問題ないわ!」
「「「お~!」」」
以外な事にそれは名案だった為にその場の全員が声を会わせたようにそう声に出す。
そして。
「お主ら、マオの意見に意義のあるものはおるか?」
「「「…………」」」
そうセラティアが訪ねた時、反対するものはいなかった。
…………。
「では、早速作戦を開始するぞ! その前にマオ、少し術をかけさせてくれ……」
「へ?」
作戦開始前、セラティアはそう言うとマオに両手を伸ばし、何かを呟く。
するとマオの白目が充血したように真っ赤になり、口から尖ったキバが吸血鬼のように飛び出した。
「我の術で、見た目を魔属風に変えさせてもらった。 これで、マオがもし人間に見られても魔物化させられていたという事であまり咎められないじゃろう」
「でも、そうしたらセラちゃん達は人間に敵視されるんだよ、それでも良いの!?」
「大丈夫じゃ! いざとなったら我が責任を取れば、こやつ等は許されるじゃろうよ。 それが魔王の責務のひとつじゃ……」
「セラちゃん……」
それはきっと、マオの事を思うが故だったのかもしれない。
その言葉はきっと、魔王だからこそ言えた言葉なのだろうが。
「顔……鳴きそうだよ……」
「ぐす……我は魔王……怖くない、死など怖くない……。 やっぱり怖いぞ!」
まだまだ精神は魔王にほど遠い様だ。
「おい、そろそろ教会送りにしてもいいか?」
流石に長話が過ぎたのだろうか?
ニワトリのリーダー格は二人の側へ寄ってそう訊ねる。
「ごめん、待たせちゃって。 じゃあ始めて!」
そして遂にその時が訪れる。
マオは両手を大きく広げニワトリの前に立ち。
「そうか……では行くぞ!」
ニワトリのリーダー格はマオ目掛けてくちばしを降り下ろすのであった。
…………。
「てめぇまた……。 夜に来るなってあれほど……ってお前、その目はどうした!?」
棺桶から起き上がったマオの姿を見たレイジは驚きを隠せなかった。
その様子に初めボーッとするマオだったが。
(せっかくセラちゃんに見た目を変えてもらったのに、それらしくしないのは勿体ないよね! ……ついでに蹴られた仕返しをしないとね!)
そう思ったマオは。
「なぁに~その顔~! 魔族は素敵よ……あっはっはっはっは!」
そう不気味な声で笑い、魔族に操られたフリをしながら教会の扉の鍵を明け。
「コケェェェェェェ!」(お前ら、半数に別れるぞ! 半分は俺と救出に、半分はそこの人間を足止めするんだ!)
「コケェェェェェェ」(おーーーーーー!)
鶏たちを招き入れた。
「……くそ、簡単にやらせるかよ!」
しかし、レイジもそれを許すほど甘くはない。
急いで奥の部屋に戻り、細長い槍を手にし、それで戦おうとする。
だが。
「ひひ……ねぇバカ神父……。 一緒に神の元へ言ってみない~?」
「わ、は、離せ!?」
「離さな~い! 一緒に地獄へ旅をしましょう、何度でも何度でも!」
魔族に操られた演技に力が入ってきたマオに背後から抱きつかれ、思うように動けなくなり。
「さぁニワトリ達! 私たちを何度も殺しなさい、さぁ何度でも!」
「コケェェェェェェ!」
「くそったれー!」
レイジはその日、マオと一緒に何度も教会送りすることになってしまった。
…………。
その頃、巨大ニワトリ二等分のスペースを進み、地下室へ向かうリーダー格が指揮するニワトリ達は、遂に仲間が捕らえられた牢獄を発見し。
「む? きっとこのレバーを上げれば……」
リーダー格は次々と牢獄のとなりのレバーを上げ、次々と同胞達を救出していく。
喜ばしいことに、捕まっていたニワトリ達は皆、怪我ひとつなく無事だった様子。
「お前ら、他に捕まっているやつはいないな!」
「「「はいボス!」」」
そして、彼らは来た道を戻り、マオ達と合流しようとしていた。
…………。
「バカ神父~、ねぇ雑魚と一緒に殺されるってどんな気持ち? ねぇったら~」
「うるせぇくそったれ……」
その時、マオはレイジと23度目の協会送りを一緒に堪能しようとしていたのだが。
「コケェェェェェェ!」(てめぇら、引くぞ!)
その掛け声が聞こえた為、マオはレイジから離れ、ニワトリ達と走り去ろうとしていた、だが。
「逃がさねぇ! てめぇを逃がしたら、アイツに申し訳がたたねぇんだよ!」
そんなマオにレイジの手が迫る。
5センチ、4センチ、その手の距離はどんどん縮まっていく。
それが遂に2センチ、1センチとなり、マオが(捕まる……)と思ったときだった。
「うわ!」
「……俺は借りを返すだけだ、仲間を助ける手伝いをしてくれたお前にな……」
マオの体がフワッと浮いた。
それはニワトリのリーダー格がマオをくちばしで掴み、レイジの魔の手から助けたからだ。
そして彼らは、守りへと去っていく、完全な勝利を握り染めて……。
だが、それが招く事態は誰も気づかなかった。
主人公であるアキラが、ツッコミを入れる空気になりだしているという事を……
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