第18話 お前はなにを言いたい? もぐもぐ……

 「わははははは! マオ、我はますます貴様を気に入ったぞ! 人間の男の苦悩に満ちた顔を見たいとは、お主みたいな愉快な側近が欲しかったぞ……」

 「いやーセラちゃんも話が分かるね! セラちゃんみたいな友達がいれば、仲良くおもちゃ……じゃなくて、アキラに嫌がらせ出来るのに……」

 

 さて、周りが真っ暗になったも二人はまだ仲良く話していた。

 そんな時だった。


 『コケコケ!』(おい、ポンコツ! 人間を連れ込んでいるみたいだが、もしや俺たちを売る気でないよな!?)

 『コケー』(ポンコツ、裏切ったのか!?)

 『コケェェェェェェェ』(ポンコツ、事の次第によってはタダではすまさんぞ!)

 「わ、我をポンコツ呼ばわりは止めろ! 貴様ら!」


 外からニワトリ達が、セラティアにそう鳴き声を上げたのは。


 そんな状況の中、マオはニワトリ達が何を言ってるかは理解出来なかったが、セラティアの泣きそうな表情を見て、何かを悟ると古屋の外へ。


 「コケコッコッコ」(なんだコイツ)

 「コケコケコケ」(確かバカみたいに弱い人間の一匹だ)

 「コケェェェェェェェ」(我々に殺される覚悟は出来たか!?)


 そして、小屋を囲んでそう騒ぐニワトリ達を前にマオはグッドサインを高く掲げ、不敵な笑みを浮かべるのであった。


 …………。


 それから数時間後、エーテリアルのアキラの部屋では。


 「ま、マオが帰ってこない……。 あぁぁぁぁ、マオに何かあったら私は……」

 「もぐもぐ……落ち着けツカサ、とりあえず食べていれば落ち着くぞ……」

 「ふざけるなジンレイ! 私はな、マオを愛しているが故に、マオが無事に帰ってこなければな、何でワンナイトしなかったんだと後悔するかもしれないんだぞ!」

 「お前はなにを言いたい? もぐもぐ……」


 奥で肉まんをつくるアキラをよそに、ジンレイにツカサは強く当たっていた。


 それは、マオに対する愛情が強すぎるが故。

 だが。


 「ジンレイ! 私が持つ、マオやアキラへの愛情など貴様には分かるまい! 私はな、アキラやマオの事を考えると、今の体の感じを想像したり、二人が私に迫ってくる妄想をしたり、はぁはぁ……」

 「ツカサ、お前が変態なのは理解出来たぞ……」


 もしかしたら、ツカサにとって愛情と発情は表裏一体なのかもしれない。

 なお、そんな二人の話を聞いていたアキラは肉まんを作りながら静かにこう思っていた。


 (ジンレイ、ツカサ兄が迷惑かけてすまん……。 それにしてもマオの奴、コンビニ寄った後どこ行ったんだ? とりあえず明日土曜だし、帰ってなかったら探しに行くか……)


 …………


 「マオ! 私は怒っているんだぞ! 黙って夜遊びして帰ってくるなんて、皆がどれだけ心配したと思ってるんだ!」

 「んー知らない!」


 さて、そんなツカサの思いをよそに、その日マオは遅くまで帰って来ず、帰って来たのは明方の事だった。


 だが、そんな不良染みた行動をツカサは許せなかったらしく、珍しくマオを自分の部屋へ呼び出し、説教をしているのだが。


 「マオ、一体相手は誰だ!? どんな男だ!? どんな男に食べられたんだ!?」

 「ツカサお兄ちゃん、私そんな事はしてないんだけど……?」


 愛情と発情が表裏一体なツカサは、どうやらマオが男遊びしてきたと勘違いしている模様。

 そんなツカサの誤解を解く様に、マオは一つ深呼吸を置き。


 「あのさ、事情説明するとね、昨日帰り道、モンスターに何度も襲われちゃって教会送りになった、みたいな?」


 自分が遅く帰ってきた理由を説明した。


 「そ、そうなのかマオ!? それで体は大丈夫か!? 怪我はないか?」

 「うん、それは大丈夫! だからツカサお兄ちゃん、ベタベタ触らなくていいから!」

 「バカを言うな! 私は、マオが怪我してるのに、私に心配かけまいとしてるんじゃないかと不安なんだぞ!」

 「だから大丈夫だって! それじゃ!」

 「あ、マオ!」


 そしてマオはベタベタ触るツカサの手から逃れると、そのまま司の部屋を後にした。


 …………。


 さて、それから少し経った頃。

 寮の中では、とあるニュースが話題となっていた。


 『聞いたか? ニワトリが教会襲撃した事件!』

 『聞いた聞いた! おかげで捕まえられてたニワトリが全部逃げたらしいな』

 『教会で働く不良神父が、教会送りって笑い話かよ〜』


 それは、教会をニワトリ達が襲撃し、捕まえられていたニワトリを逃したとの事。

 勿論、レイジも抵抗はしたが、ニワトリの集団の前では手も足も出ず、一方的にやられるだけだった。

 念のため補足すると、それが普通である。

 返り討ちにしたチート爺二人の方がおかしいのである。


 さて、そんな噂はアキラ、ジンレイ、ツカサの耳にも当然入ってくる。

 そして、現在アキラの部屋の床に座り、目的、分け前についての話が始まった。


 「ジンレイ、ツカサ兄、これはチャンスなんだ! ニワトリを多く捕まえて、大金を手にする……これが目的だ! それと分け前なんだけど、1.4.4.で良いかな? 勿論、戦力にならない俺が1だけどさ。 そして残りの1割はマオに渡してやりたい……。 あれでも長い付き合いがあるからさ」

 「もぐもぐ……アキラ、私はお前に美味しい肉まんを作ってもらっているから構わないが……」

 「あ、アキラ……、私に4割もお金を渡し、しかもマオにも渡そうとは……。 分かった、これでお金を手に入れたら、国外で三人の新婚生活を始めよう! なに、私は6カ国語話せるから会話する分には問題ない!」

 「もぐもぐ……もっとマトモな人選は出来なかったのか?」

 「ジンレイ、ツカサ兄が一番マトモなんだよ……。 その、ツカサ兄は3割もマトモだし……あの、知り合いの中ではさ……」

 「もぐもぐ……付き合う相手を考え直した方がいいぞ、アキラ……」

 「ジンレイ、薄々感じてたけど直に言われると傷つくぞ……」


 だが、そんな中でアキラの周りにマトモな人間がいない事が発覚するとは、誰が予想しただろうか?

 作戦会議はいきなり、自身の人望の無さにアキラが落ち込む事態となってしまった。

 そんな時だった。


 「おいお前ら! マオを知らないか!?」


 部屋に祭が慌てた様子で飛び込んできたのは。

 そして、ジンレイが肉まんを食べながら祭に尋ねるのだが、そんな祭から帰ってきた答えは衝撃的なものだった。


 「もぐもぐ……どうした先生? マオに肉まん取られたのか?」

 「そんな訳ねえだろ! それより、マオが魔族になってしまったみたいなんだ! しかも魔族になったマオの奴がな……教会の中へニワトリ達を招き入れ、捕まえていたニワトリを強奪したって言うんだ!」

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