第23話
さて、買い物を終えアキラの部屋に戻ったアキラとジンレイだが……。
「……あぁ、何か金持ちの凄さを感じてしまったな……」
アキラは調理の準備をしながらそう呟いてしまった。
と言うのも、あれから買うものを決めてレジを通るときも。
「あ、お嬢様! 買ったものを袋にお詰めしますよ。 あぁお兄さん、お代入らないからね!」
と言われていたし、店の外に出たときも、店長と思わしき男性が。
「お嬢様、車の準備ができましたのでお乗りください! さぁお連れの君も後ろに!」
と言われ、車に乗せてもらい、寮まで送ってもらったわけで……。
それはある意味、貴重な体験だったのかもしれない。
さて、そんな貴重な体験に浸る時間は、調理の準備が終えた事によって発生した気持ちの切り替えによって終わりを迎えた。
そして彼は今から調理を始める。
初めて激辛麻婆豆腐の肉まんを作るために。
「そういえば、この唐辛子の粉、どれくらい辛いんだ? ……し、舌がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
が、それは一時中断となる。
それは、ジンレイの選んだ唐辛子の粉が予想を遥かに上回る破壊力を持っており、それによってアキラはトイレと水分補給を繰り返すハメになったからである。
…………。
その頃、魔王城では。
「ツカサ、何が不満なのだ! この魔族のドレス、チャイナドレスの様な見た目に、魔族の紋章をちりばめた素晴らしいものだぞ!」
「甘いぞセラティア、もっと布の面積を狭くしなければマオの妖艶さは表現できないぞ! もっと下着みたいに!」
セラティアとツカサがテーブルの前で、マオの衣装について熱い議論を交わしていた。
「馬鹿者! お主、魔族の衣装を変態的な物と勘違いしておらぬか!? エロのアクセルを全開にするのは良いが、少しはブレーキを覚えぬか、ツカサ!」
「断る! 好きな相手にエロくて何が悪い! それに私の学校の先生は、好きな相手に全裸で迫ったそうだ。 つまり、エロとは愛情表現の最高峰に位置する行為なのだ!」
「そうなのか!? ツカサ、お主が正しいのか!? 我、間違っているのか!?」
「そうだセラティア、貴様が間違っている! さぁセラティア、古い考えは投げ捨て、私と共にマオのエロい衣装を作ろうではないか!」
そして、熱い議論の結果、ツカサの主張が通ることになったようだ。
しかし。
「いや、私今のチャイナドレスみたいな衣装の方がまだ良いんだけど……。 と言うかセラティアちゃん、超騙されてるんだけど……」
それを着るハメになるマオは、今の衣装のままの方が良いらしい。
それは当然だろう、誰が好き好んで、警察のお世話になる様な衣装を着たいだろうか?
しかし、エロのブレーキが故障どころか、最初から搭載していないツカサは、そんなマオの発言を聞くと、両手を机に叩きつけ。
「マオ、お前は間違っている! エロのない衣装などただの布のか溜まりにすぎん!」
そう強く主張するが。
「エロなんて要らないし、私は求めてないって!」
とマオに否定されてしまう。
だが、アクセルを踏むしかないツカサは、そんなマオに対し、驚くべき事を口にするのであった。
「分かった! ならばエロの大切さを理解してもらうために、私のTバック姿を見てもらい、エロスについて理解させてやろう!」
「へ? ちょ、ちょっと待ってツカサお兄ちゃん! 脱がなくて良い、脱がなくて良いから!」
「マオ、止めるな! は、離せ!」
「絶対やらせない、絶対やらせないからね!」
それは、発想が狂っているとしか言いようがない行動だろう。
当然マオはツカサを止めるために羽交い締めにし、服を脱ぐ行為を止めようとするが。
「む……マオの胸が当たって……。 こ、これはマオから襲われてると考えるだけで……うっ! 鼻血が……」
「ぬぉぉぉぉぉぉぉ、ツカサ貴様! わ、我が魔王城を汚すでないわ!」
「セラちゃん、魔王城、元からゴミ一杯で汚れてるからね……」
変態がエロへのアクセルを全開にした結果、魔王城の中はは真っ赤な血でさらに汚れることになった。
…………。
「さて、気をとりなおしてマオ、今から魔王の力を授けるぞ!」
「セラちゃん、いつでも良いわ!」
さて、鼻血の出しすぎで気を失っているツカサをロープでぐるぐる巻きにしたマオは、魔王の力を受けとるため、机を挟んでセラティアの前に立つ。
そして今。
「では……受けとれ、マオ!」
黒く丸いエネルギー体はマオの胸の間から、徐々に徐々に飲み込まれていった。
「……特に変化は……あ……」
マオの全身にドクンと言う衝撃が走る。
「お、おいマオ、大丈夫か!?」
「あ、うん……たぶん大丈夫……う!」
そして、また体にドクンと衝撃が走った時、マオの体に影響を及ぼし始める。
「えっとさセラちゃん……、年のために聞くけどトイレってあるかな……」
グルルルルル……と腹の下る音と共に、マオの顔色が悪くなる。
どうやら、貧弱な体に強大な魔王の力は強烈だったのか、体の調子が悪くなった。
頭痛、発熱、腹痛、手足の痛み等々……。
それは、一つのものを得るにはその対価を支払えというルールを自然が教えているのかもしれない。
ものには適量があると言う言葉を示す良い例だ
「マオ、我は元の姿に戻って、外でするからだな……」
「分かった……ありがとう……。 あぁぁぁぁぁぁ!」
そしてマオは苦しそうな声で、セラティアに訪ねたが、予想通りの悪い答えが帰ってきた為、魔王城の扉を明け、どこかへと走り去る。
そんな中、残されたセラティアは。
「マオ……何かすまん……」
大変申し訳なさそうにマオが開けっぱなしにした扉を見ながら、そう謝るのであった。
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