第14話 だ、誰だ!?

 カーン……カーン……カーン……。


 「クソッタレ……あのガキども、死んでばかりいやがって……」


 四人が去った教会では今、奥にある部屋でレイジが一人作業をしている。


 そこは中央に大きなテーブルが置かれた鉄のガラクタ置き場の様。

 だが、最低限の歩くスペースと部屋の隅に冷蔵庫やら電子レンジやらベッドやらが置かれており、最低限の生活はできる様子だ。


 そんな部屋でレイジが行なっている作業。

 それはアキラやマオが教会送りにならない様にする為に防具を作っている。


 レイジは別に誰かに頼まれた訳ではない。

 ただ、レイジとしては残念すぎるステータスを持ってしまった二人が少しでも死なない様にと、何か装備を作ろう、そんな優しさなのだが。


 「あーチクショウ! いいアイディアが浮かばねぇ!」


 手を動かしながら考え始めても、結局何も浮かばなかった。

 そんな時だった。

 ガタンと祭壇に何かが届く音が聞こえたのは。


 「ん? 棺桶が来たな……。 まさか、またアイツらか!?」


 そう思ったレイジはハンマーを投げ捨てて祭壇の方へ向かう。

 するとそこには。


 ぐぅぅぅぅぅぅぅ……。


 「…………」

 「だ、誰だ!?」


 空腹の音色を奏でるジンレイが棺桶から静かにレイジを眺めているのであった。


 「……腹、減ってるのか、お前……」

 「…………」コクリ


 …………。


 「はふ、はふはふはふ、はふ!」

 「おーおー、凄い食欲だな、おめぇ!」

 「もがが、もがもが!」

 「あー喋るのは食ってからでいい、食ってからで……」


 さて、レイジにドンブリたっぷりのチャーハンを作ってもらったジンレイだが、それは凄まじい勢いでジンレイの口にかきこまれていく。

 そして。


 「おかわりが欲しいのだが……」

 「おい、うちは定食屋じゃねぇぞ!」


 更なるおかわりをジンレイは要求するのであった。

 しかし、それがダメと知ったジンレイは。


 「なら私は帰る……」


 そう言って立ち去っていくのだが。


 「ちょ、ちょっと待ててめぇ! 死因をまだ聞いてねぇぞ!」


 まだ神父としての仕事をしていないレイジはそう言って立ち去るジンレイを止めるのであった。


 …………。


 教会の神父の仕事を具体的に言えば、教会送りになった人々の死因を聞き、地域に危険なモンスターがいないか? 何か新たなダンジョンが出ていないかをまとめるのが、レイジの仕事である。

 まぁアキラやマオは、しょっちゅうつまらない事で教会送りになるので、最近ではレイジは話すら聞かず、適当に原因を書いている訳なのだが……。


 さて、それはさておき、レイジは今、教会の祭壇前の長椅子にノート片手に座り、目の前に腕を組んで立ち尽くすジンレイに、話を伺おうとしているのだが。


 「おめぇの名前は何だ?」

 「腹が減ったのだが……」ぐぅぅぅ

 「年は?」

 「食べ物をくれないか……?」ぐぅぅぅ

 「教会送りになった原因は何だ?」

 「肉まんならとても嬉しいのだが……」ぐぅぅ


 ジンレイは空腹でたまらないのか、腹の音を鳴らしながらレイジに食料を要求する為、話が進まない。

 なので仕方なく!


 「てめぇ、腹減った腹減ったうるせぇなクソッタレ! 肉まんだな! 肉まんでいいんだな! 持ってきてやるからちゃんと俺の質問に答えろよ!」


 そう言って奥の部屋に向かい、その中から冷凍食品の肉まんを取り出し、皿に乗せレンジでチンする。

 それも、袋に入っていた10個全部をまとめてだ。

 そして温めが完了し、熱々の肉まんの乗った皿を持って行こうとした時。


 「いただきます」

 「うおっ!?」


 待ちきれなかったのか、すでにジンレイは背後に立っており、皿の上のアツアツの肉まんを平然と食べ始めた。


 その様子はまるで熱さなど感じていないかの様。

 黙々と肉まんを口の中へと放り込んでいく。

 そして遂に。


 「少し物足りないが……これ位が頃合いだな」


 彼女の空腹はとりあえず治った様だ。


 …………。


 さて、二人は改めて教会の祭壇前に戻ると、ジンレイは長椅子に、レイジは奥の部屋から持ってきたパイプに座ると、神父としての仕事を開始した。


 「さて、おめぇ名前は?」

 「ジンレイだ」

 「年は?」

 「16だ」

 「おお、そうか! てっきり二十歳前後だと思ってたぜ! それで、教会送りになった原因は何だ?」

 「ニワトリ達に返り討ちにあった」

 「ニワトリだぁ? そりゃ仕方ないな、あれはガキ一人で倒せる相手じゃ……」

 「いや、落とし穴に落とされた後、数えきれないくらいのニワトリに攻撃されたんだ、私は……」

 「ああ!?」


 それは、レイジの予想し得なかった答えだった。

 確かに巨大ニワトリは頭が回る。

 しかし、落とし穴を作ったり、複数の巨大ニワトリが群れをなし、そして一人の人間を複数で攻撃するなど、聞いた事が無いのだ。


 「……おい、その事しっかり話してもらうぞ」


 そんな異様な話を聞いたレイジは、真剣な顔を浮かべる。

 もし、それが事実なら、相手は人間並みの知性を持つ群れと思っていいかもしれない。

 そうなってくると、群れで集落を襲う可能性も出てきた訳で、地元民も危険にさらされる。

 それに祭も、その生徒達も……。


 だからレイジは、ジンレイの話を聞きながら、祭に。


 《やばい事が起きるかもしれねぇ、とりあえず生徒を守れ。 俺は情報をまとめる》


 そうメッセージを送るのであった。

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