第13話 うわ! お、俺の車が真っ赤に!?
「お前ら、行くぞー! あとバカレイジ、もう仕事軽視する様なマネすんなよ……。 全く、結婚後の生活の事も考えやがれ……」
「う、うるせぇ祭……」
さて、結果として昼休みの間に、祭が迎えに来た訳だが、どうやらレイジは結婚に関する事を言われると何も言えなくなる様。
現に今も結婚後の生活について言われ、歯に引っかかった様な物言いしかできなくなっているのだから、結婚後は
さて、そんなレイジのいる教会を後にした三人と気絶している一人は、祭の軽自動車に乗り、学校へと向かい始めた。
その道中での事。
「先生と不良神父ってどういう馴れ初めがあって付き合い始めたの?」
助手席に座るマオはそんな事を尋ねた。
確かに不良とゴリラのカップルと言うのは歴史を振り返っても前代未聞のことではないだろうか?
だから、准教授であるマオがその馴れ初めを解き明かそうと知的好奇心の泉が湧き出るのは仕方のない事だろう。
そして祭はその疑問について、運転しながら笑みを浮かべ。
「ん、俺とアイツの馴れ初めか? 俺が高校時代の時にアイツに昔、喧嘩で負けてな! そんで俺、強い男が好きだったから ガンガン迫って落としてやったんだ!」
「へ? ガンガン迫るって?」
その大胆な行動の数々を口にし始めた。
「そりゃ、クラスの仲間たちの前で『レイジ、俺と付き合えよ!』って言ってキスしてやったり、二人きりになったところで裸で飛びついてやったり、あと家に押しかけて、風呂の中のアイツに『一緒に風呂入ろうぜ!』なんて言って入ったり、まぁ色々したな!」
「痴女じゃないですか先生!」
しかし、それはマオにとって祭の『ガンガンいこうぜ!』作戦は、どう考えても痴女としか思えなかった。
勿論、一般人から見てもだが……。
だが、それには祭なりの考えとして。
「甘いなぁお前は……。 アイツな、ムッツリで、いわゆる理由なきゃ女に手ぇ出せないタイプだったんだぜ。 だからアイツに理由を持たせる為に俺が一肌脱いだ訳だ!」
と言う考えがあった訳だが。
「なるほど、ならば私が一肌脱げば、アキラは私に欲情してくれる訳だな?」
「うわ!? ツカサ兄起きてたの!? と言うか、その発想はおかしい!」
「ふふ、お前はムッツリで理由が無ければ手を出せないタイプだったんだな……。 安心しろ、私も初めてだがお前に女を教えてやる……」
「いや、ツカサ兄は男だろ!」
それを中途半端に聞いていたのだろうか?
先ほどまで後ろの席にて、アキラの膝を枕にしていた変態がガバッと起き上がると、突然服をゆっくり脱ぎながらアキラに迫り、そして惨事は起こった。
「あぁ、私はアキラと一つになるのか……、アキラと……ひとつに……うっ!」
「うわぁぁぁぁぉ! またツカサ兄の鼻血が!?」
「ぎゃぁぁぁぁ! ツカサお兄ちゃんの鼻血が私の制服にも!?」
「うわ! お、俺の車が真っ赤に!?」
ツカサの吹き出した鼻血は、後部座席とアキラを真っ赤に染めた。
何の変哲もない白の軽自動車が、まるで何か事件に巻き込まれたかの様な車へ生まれ変わる一瞬のビフォーアフターであった。
…………。
「おい着いたぞ!」
そんな祭の言葉の後、学校へ到着した赤い内装の車から四人は降り立った。
そして。
「くそったれぇぇぇぇぇぇ!」
祭は車を右足で思いっきり蹴とばしながらそう叫ぶと、真っ赤な内装にアフターされた車が、元の白い車へ戻っていく。
そんな破壊と再生の哲学には、アキラたちでも感じるものがあったらしい。
「先生、蹴って直すさなくていいでしょう……」
「うん、アキラの言う通りよね……」
「私も二人と同意見だ。 わざわざ蹴りながら
勉強熱心な三人は、そう言って破壊と再生を同時に行う必要性について意見を述べる。
そんな生徒たちの疑問に対する祭の答えはと言うと。
「だってスカッとするだろ、蹴っ飛ばしながら直したら?」
実に知性のかけらもない完璧な答えだった。
当然、そんな答えをするものだから。
(((凶暴なゴリラの思想だ……)))
と呆れられてしまうのである。
がしかし、祭は人型ゴリラである為、この答えは100点だったと言っていいのかもしれない。
キーンコーンカーンコーン……。
そんな時、哲学の授業の終わりと、昼からの授業の始まりを告げる鐘の音が鳴り響き、四人は。
「お前ら、急いで教室に行くぞ!」
「「「はーい!」」」
急いで教室へ向けてかけていくのであった。
「待てツカサ、お前は隣のクラスだろ?」
「わ、私だって一緒に受けても……」
「ごちゃごちゃ言ってねえで自分のクラスに行きやがれ!」
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