第12話 言って分かる奴なら苦労しねぇんだよ! バーカ!
ニワトリが二羽いる、これはおかしな事ではないだろう。
多くの生物はオスとメスがいてこそ、未来に子供という遺伝子を残せるのだから……。
それなのに。
「いやぁぁぉぁぁぁ! 何で、何でニワトリが二羽いるの! 何でニワトリが二羽いるのぉぉぉぉぉ!」
マオは「ニワトリが二羽」と言うダジャレを言う余裕はあっても、そんな答えを出す余裕はないらしい。
しかも、自分に迷惑をかけるのであれば問題ないのに。
「あ、アキラみっけ! 男子ファースト、男子ファースト!」
「ん? げ!?」
「あ、待ちなさいってアキラ! せっかく振り返ったんだから、ちょっとニワトリと戯れてきなさいよ! 一発、ほんの一発で良いから!」
「マオお前! 俺は一発でも食らえばアウトだぞ、俺は! しかも背中にツカサ兄担いでるんだぞ! ツカサ兄を巻き込むわけにはいかないだろ!」
「ん、言われてみれば……。 じゃあ、ツカサお兄ちゃんを置いて、とりあえず教会へ行ってきて!」
「お前は何が何でも俺を教会送りにしたいのか!?」
前を走っていたアキラ達にまで迷惑をかけようとしているのだ。
実に疫病神この上ない。
だが、実際ピンチになってしまったのだから仕方がないだろう。
なので、走りながら手を考える二人であったが。
「コケェェェェェェェ!」
「「ぎゃ!」」
そんな暇もないまま、三人は教会送りになってしまった。
…………。
「ふふふ、私も二人と仲良く同時に教会送りを体験できるとは思ってなかったな! あぁ、二人と運命を感じるぞ! あ、鼻血が出過ぎて意識が……」
「いや、ツカサ兄、運命じゃないから。 それにツカサ兄が教会送りになったタイミング、違うからね。 ツカサ兄、結構時間経ってからここに来たからね? と言うか、いい加減ニワトリの対策とレベル上げの為の行動を……」
「アキラの話はどうでも良いけど、ジュースはまだなの不良神父? 私ノド超乾いたんだけど〜?」
「テメェら! ごだごだ言ってねぇで学校行きやがれ、この不良生徒共が!」
さて、教会送りになった三人は学校へ行かずに教会でのんびりしているのだが、別に学校に行きたくない訳ではない。
と言うのも、戦闘力皆無のアキラとマオだけでは、また教会送りになる可能性が高い上、最悪無限ループな展開が二人を待っている。
なので、ツカサと三人で登校することで安全を確保しようとアキラは考えているのだが、残念な事に鼻血を出しすぎたせいか、ツカサは動けない。
なので、ツカサの復活を待っている訳だ。
しかし。
「…………」
当の本人は、定期的に蘇っては、興奮して鼻血を出し、貧血で気を失う……を繰り返しており、今も白目を向いて気を失っている。
だから彼らは仕方なく教会でのんびりしているのだ。
だがしかし、不良神父のレイジもこのまま三人を置いておく訳にはいかないと考えている。
と言うのも、彼はゴリラ教師である祭の彼氏である。
なので、このまま置いておけば、祭に後々『てめぇ俺の生徒をダメにするつもりか!?』などと文句を言われる可能性がある訳で……。
そんな時だった、レイジがとある考えに至ったのは。
「……よし、仕方ねぇ! 俺が学校まで送ってやる!」
「「へ?」」
それは二人にとって予想外の申し出だった。
と言うのも。
「へ? 良いんですかレイジさん? 神父なんですから教会離れる訳にはいかないですよね?」
「そうよ不良神父! もしクビになったらただの不良になるのよ!?」
神父は、教会送りになった人々の対応をする為、労働時間内は常に教会にいなければいけない、と言うルールがあるからである。
それを破った場合、クビになるのが普通である。
だから二人はそんなルールの事を気にして、そう言うのだが。
「クビ〜? 上等だ! 第一俺は人間様だ、ロボットじゃねぇ! そんな訳の分からねぇルールにこの俺は黙って従う気なんか全くねぇからな! それにバレなきゃ良いんだよ、んな事は! ……っと祭に連絡しておかなきゃなっと!」
どうやら本人は覚悟の上の様子。
そう言ったレイジは二人を送る前に、祭に連絡を入れる為、スマートフォンを取り出した。
さて、そんなレイジを見ていたアキラは。
(レイジさん、カッコイイ……)
レイジを尊敬の眼差しで眺める。
それは、レイジの主張に輝きを感じたからかもしれない。
しかし、それを皆、輝きに感じる訳では無い。
「おう祭! お前んとこの学校のガキ三人、今から送りに行くからよ……」
『レイジお前、バカだろ? んな事すりゃクビだぞ?』
「クビ〜? 上等だ! 第一俺は人間様だ、ロボットじゃねぇ! そんな訳の分からねぇ……」
『訳が分からねぇのはレイジおめぇだろ! 人間だからこそルールを守るべきだろうが! 第一不満があるなら上に堂々と言いやがれ! それにお前がそんな事すりゃ俺の顔に泥を塗ることになるんだぞ、ボケレイジ!』
「言って分かる奴なら苦労しねぇんだよ! バーカ! 第一お前の力がなくとも何とか働けるに決まってんだろバカ祭!」
『うるさいハゲレイジ! 言い訳言ってねぇで俺の話を聞け!』
「何だと、てめぇ!」
少なくとも電話の向こうの祭はそう感じていない様子である。
だが、これは仕方のない事なのかもしれない。
人間とゴリラの世界観は違うのだから……。
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