第2話 友情シールド
倒すとレベルの上がる、ヒヨコを生みだすニワトリがいる。
凍りついた男子をよそに、最後尾中央に隣り合って座る二人は何だかんだその話に興味深々だった。
アキラは。
(レベルが上がればHP1から卒業できるだろうな……。 これは冒険者としての生活の夢に近づくチャンスだな……!)
と期待に胸を膨らませる。
そしてマオも。
(絶対アキラのレベルを上げさせない……。 絶対邪魔して……、あ、私だけレベルアップすれば、アキラ煽れるし、一石二鳥かも!?)
とこちらも期待に胸を膨らませつつ、アキラを想う。
そんな目標が違う二人が出した目的達成への手段は共通したものだった。
(……仕方ない、ここはマオに援護してもらうしかないな……)
(アキラを友情シールドにして教会送りにすれば、アキラに嫌がらせできる上に私はレベルアップ独り占め〜って出来ちゃうじゃん!)
友情シールド……!
それは、友情が作り出す夢の低コスト攻撃機能付きのシールド……。
それに違い存在として、タンクと言う役割も存在するが、この二つには決定的違いがある、それは。
仲間の盾になるか、仲間を盾にするか?
と言う事である。
だがしかし、装備品である盾が壊れる可能性がある現実社会では、この友情シールドは。
蘇生させれば何度でも使用可能!
と言う大変なメリットがある為、割とダンジョン攻略でも使用されている。
なお余談だが、友情シールドの最上位に位置する者達はドMと呼ばれている。
なので世間は、ドMを再評価すべきではないだろうか?
さて、その友情シールドについて、稀に一つの問題が発生する。
それは、誰が
そしてここから、隣り合う席の二人は、ヒソヒソ声で熱い思いをぶつけ合う!
「……マオ、一つ頼みがあるんだが、レベルを上げる為にヒヨコ狩りに付き合ってくれないか?」
「ふふ、私にいい考えがある!」
「……何だ、考えって? つーか、声が大きいぞ……」
「アキラ、私の盾。 アキラ、攻撃食らう。 アキラ、教会送りになる。 私、ニッコリ、アキラ、グッタリ、みんなハッピー、ラッキー、イェーイ」
「イェーイじゃねぇよ! ラップみたいに言いやがって。 絶対盾にならないからな、と言うかお前を盾にしてや……!」
「「ぎゃ!」」
しかしながら、只今休み時間でなく、昼の授業の時間。
なので二人のこめかみに、ゴリラ教師の投げたチョークが直撃し。
「てめーら、痴話喧嘩を授業中にするんじゃねぇ!」
白く丸い痕跡が痛々しく残るのであった。
しかしながら四季祭、ゴリラにしては見事なスピードとコントロールではなかろうか?
もし、再就職するのであれば、是非プロ野球選手かダーツ投げのプロにでもなってほしいものである!
「さて、バカ二人は置いておいて、この時間は授業を中止して、新しい仲間との交流の時間にするぞ! さぁ入ってこい」
そして、ゴリラAは仲間を呼んだ! 訳だが、その呼び声で現れたのは、なんと人間だった!
「えー今日からこのクラスの仲間になる
「……ワン・ジンレイです……」
「「「うぉぉぉぉぉぉ!」」」
長身短髪の大人びた姿をした彼女が、刺す様に鋭い瞳を生徒達に向け、そう冷たさ感じる声を出すが、そんな冷たさに刺激されたのか盛り上がる新鮮な童貞達。
だが。
「……ん? 何で学校の制服を着ずに私服を着けているんだ?」
どうやらアキラ君はジンレイの美しさより、彼女の着ている、黒の開けた上着、黒のシャツ、黒のジーンズが気になる模様。
さて、そんな発言を聞いたマオは、メガネを掛けてないのに、メガネをクイックイッと上げる仕草をした後。
「ふふん! アキラが童貞だからじゃない? あと、アキラがヘタレだから」
「は? 何言ってんだマオ?」
真っ直ぐ顔を前に向け、ドヤァと言わんばかりの顔を浮かべそう言った。
それを示す根拠はこうだ。
「だって私みたいな超美少女に対して、手も足も、ついでにアレも出せないなんて、ヘタレ以外の何者でもないもん! だから転校生ちゃんはあの格好でヘタレなアキラの治療を……って痛! 痛いから足を、足を蹴らないで!」
それは、アキラ君が実はヘタレである事をアキラかにする歴史的瞬間!
そう、それはベルリンの壁が崩壊したかの様な歴史的衝撃!
その衝撃の大きさは物理的にも現れる。
アキラは真っ直ぐ前を向きつつマオをキックキックキック!
そう、キックなのであります!
ここで有権者の方に訴えたいのが、アキラのキックはマオが涙目になる程、なかなか痛いという事!
そしてその衝撃は当然ゴリラの怒りを買うのであります!
「うるせぇぇぇぇぇ! アキラ、マオ、お前らいい加減にしやがれ!」
そんな怒号と共にゴリラ教師の祭が二人に制裁のチョークを投げつけヒットヒットヒット!
「痛! ま、マオお前! 俺を盾にするな! 痛、痛!」
がココでマオの奥義、友情シールドが発動した為、チョークは全てアキラに直撃する事になった。
なおこの出来事を目撃したジンレイは後に。
「祭先生は忍者の末裔かもしれない。 そして、クラスの男子の殆どが変態かもしれない……」
と僅かながら呆れた表情を浮かべてそう語り、クラスの男子達は。
「HP1なのに、チョーク攻撃を三発受けても教会送りにならないとは!?」
と、HP1の奥深さを思い知らされるのであった。
そう! HP1でも、彼はス○ランカーではない!
特性を持たないヌ○ニンでも無いのだ!
そう彼は今、トゲキャノンの如く放たれたチョーク投げに耐えたのだから、彼はス○ランカーを超えたのだから!
だがしかし、その事実はHP1が教会送りにならないギリギリがどの程度なのか?
その事実は、ギリギリなマスターを目指す生徒達の探究心に火をつける結果を生んだのであった。
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