人理赫灼騎士団

著:フランジャス


 こんにちは皆さん! 今日はとても嬉しい知らせがあります!


 なんとわが祖国、騎士王国デインに五つ星の傭兵団が誕生しました!

 これを描き切っている頃には既にその名が近隣諸国に知れ渡っているだろうが、情報の鮮度とその後にまで気をかけていられないほど僕は興奮しているのだ!


 輝ける五つ星! 星持ちの上位団体に仲間入りを果たした偉大なる組織の名は!

 『人理赫灼騎士団じんりかくしゃくきしだん』!

 人としてあるべき道理、人間として進むべき道を、光り輝き明るく照らす騎士団……というありがたそうな意味だ。

 生粋の英雄愛好家であるこの僕は現地で戦闘を見てきたんだが、いやはやあっぱれという他なかった。

 僅か十人にも満たない数で人狼を倒すとは思わなかった。闘位七星の上位、五つ星の人狼といえば、


※追記修正※ -------------------------------

 馴染みある者にはよく知られた指標だが、そうでない人達のため説明させて頂く。

 闘位七星とは、立強委員会の定めた『強さ』の階位である。

 闘位七星の制定は戦闘力だけではなく、危険度や達成の難度も観点に含んでいる。

 大型の魔物であれば戦闘力、冒険者が挑む秘境や迷宮であれば踏破の難度が見地というわけだ。

 具体的にどれくらいの力があれば星を得ることが出来るのか、立強委員会の公式階位図を用意したので、これを見て感覚だけでも知ってもらいたい。


 初位  ★       一つ星    正規訓練を受けた兵士1人以上

 中位  ★★      二つ星    兵士5人以上

 中位  ★★★     三つ星    兵士10人以上

 上位  ★★★★    四つ星    兵士50人以上

 上位  ★★★★★   五つ星    兵士100人以上

 最上位 ★★★★★★  六つ星    兵士1000人以上 

 最上位 ★★★★★★★ 七つ星    兵士10000人以上(測定不能)

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 兵士100人以上の損害を与える紛れもない化け物だ!

 僕がこの目で見た人狼はかなりの経験を積んだ強力な個体だった。

 六つ星の位には届かないものの平均的な兵士で換算して500人は下らない強さだったように思う。

 (これを読んで下さる兵士の皆さんへ、いつも物差しのように扱って申し訳ありません。)

 それをわずか九人ばかりの人間が切った張ったと流れるような連携であげく勝ってみせるのだから、心が震えずにはいられなかった。人理赫灼騎士団の各人が持てる力を全て出した死力の総力戦だったが、絆の力か誰も欠けることなく栄光を手にした姿には熱い涙を禁じ得ない。決着が着き、荒地に堂々と倒れる彼らを見て祝杯を挙げずにはいられなかった。(実はこれを書く今も二日酔いで頭が痛いんだ)


 さて、それではこの辺りで人理赫灼騎士団の紹介もしておこう。

 結成して僅か一年! 短い時間でここまで強くなったのには、やはり理由(噂)がある。

まず、人理赫灼騎士団団長のバトは今まで秘せられていた騎士王の隠し子! らしい。流石に僕も本当のところは分からない。もちろん聞いてみたが相手にもされなかった。

騎士の国でただの傭兵団が騎士団を名乗り結成できたというのもひっかかるところだ。厳格さが風に流れてよく冗談にされる我が祖国の気風からいって、物言いが付かないわけがない。

 隠し子説を押す理由は他にもある。それは彼ら人理赫灼騎士団の身に着ける武器装備だ。

 騎士王国は王都の南に大きな銀鉱山を有している。諸手の山とも呼ばれる銀鉱山でとれる特殊な銀。

 通称、灰銀と呼ばれる希少鉱石で武器防具の一式を固めているのだ。団長だけでなく団員全員がだ。灰銀は軽く、硬く、そして美しい。灰銀装備を揃えた九人の猛者、煌めく銀色がざっと一列に並ぶ様は圧倒的なものがある。こんなに金のかかる物をどこであつらえたのか、しかも、王家が押さえている銀鉱山の希少鉱石をだ。ただ金を回すだけで灰銀を手にするのは難しいだろう。背後に王家との縁があるのでは? と予想するのも頷けるのではないだろうか。

 噂はとかく尽きないものだ。

 書き手の私すら真偽も問わずこうして無遠慮なことを書いている。

 (ともいえ、元々それほど配慮するほうでもないのだが)


 これは特に個人的な意見なのだが……。

 騎士王国デインは王家の抱える正騎士団が一強に過ぎる。名うての冒険者や武芸者が生まれることが非常に少ない。腕に覚えのある者のほとんどが正騎士団へ行くからだ。英雄好きの僕としては騎士物語も悪くないのだが、ふらり現れた竜殺しの豪傑とか、そういう派手な人物も祖国から出てきて欲しい。騎士はどうもお綺麗すぎて物語には弱い。礼を尽くし、弱きを助け、強きを挫く、騎士道こそ正道とはあまりに不変だ。

 騎士の国にあり、正騎士ではない騎士団

 彼らが名を挙げれば挙げるほどに周りの声も大きくなるだろう。

 そんな中でも人理赫灼騎士団が己の芯を見失わず、その名に違わぬよう人の道を照らし続けてくれることを祈るばかりだ。


 彼らの行く末に幸あれ!

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