魔王再会

「久々だな。勇者クミコ」

「何でアンタがこんな所に」

「昔からここに住んでたわ」

「お姉ちゃん、この人だれ?」

「ああ、この人は魔王、以前は王宮で魔法教官をしてたの」

「なんで魔王が魔法教官なんか」

「むすめ、我は5000年生きた魔王ぞ、されば、王都で魔術を教えるのに我ほど相応しいのはあるまいに」

「おねーちゃん、異世界で魔王を倒したって」

「ああ、それは災厄の魔王といって、天変地異を呼ぶ魔王だったの、この人は違う」

「魔王とは強大な魔力を持ち魔属を従えた王のことだ、疫病神と俺とを一緒にしないでほしいな。」

「人を食わない?」

「人を食うのはダンジョンの魔物の仕事だ、魔王は人の肉なんぞ食わん」

「え〜なんでダンジョンなんてやってるのですか」

「ダンジョンは魔王の城だ。そこの部屋に宝物やレアアイテムを置いておくと人間が入ってくる、いわば泥棒だ。その泥棒を魔物がやっつけて、肉は魔物が、冒険者の魂は我が頂く。魔王のエネルギーは恐怖や苦しみに歪んだ人間の魂だからな。魔物にいたぶり殺されて丁度美味しく仕上がるのだ」

「何か怖い」

「当たり前だ、お前は勇者の妹だからな、まあ特別に返してやる」

「相変わらずの負け惜しみね」

「お前と俺がやりあうとダンジョンがボロボロになるからな、そうすると困るのは俺だ。それに、お前が自分の世界に帰るのに力を貸してやったのは俺だぞ」

「そうね、初めてこの城にきた時に、どっかで見た覚えがあったのよ、それで、外に出て気がついたの、この城、フランスの某城にそっくりなのね、周囲の風景も」

「それで、魔王の城が異世界に繋がってて、そこを通路に行ったり来たりできるって事がわかったわけだな」

「でもまあ、普通は、みんな気が付かないもんね、この世界では誰かが気がついたりしないの」

「魔王の魔力で結界張ってあるからここを攻めて来るやつはおらん」


それは魔王の力の特長。

魔王の力で、異空間を開いてそこに魔王の城の部屋をつくる事ができるのだ。


そして時には魔王の城が異世界、人間世界に顔を出すという事もある。

でも普通は魔王城の開かれた異世界が人間世界に繋がるというのは、よっぽどの偶然でしかない。それと意図的に自分の望む世界に空間をつなごうとすると、有力な魔王1人分の魔力をすりつぶす事になったのだ。

「おねえちゃんが、この城が人間の世界に繋がってるとかいってたけど、そうなんですか」

「それは残念ながら、少し違う世界だったのだ。この城は『天空の城』ぞ」

まどの外をみると真っ青なそら、そしてどこまでも続く海

「この城は海の上に浮かんでおる」

「ひえつ」

「お前の姉の言ってるのは、姉の世界にこの城と似た城があるらしいな、それは我と似た異世界の我の城だ」

「そうなの、私、この城がモンサンミッシェルそっくりだとわかってね」

「でも違っただろう、この城はお前の世界と似た世界に繋がっていたけど、お前の世界にそのまま繋がってるわけではなかった」


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