宝物が首塚に戻る


「昨日、私の家に妖怪が出現しましたが、周辺をパトロールしていた警官が即座に対応し、妖怪はすぐに殺されました。警官隊に敬意を評します」

知事の記者会見にマスコミが質問する

「昨日の妖怪は知事が首塚の宝物を泥棒し、それに首塚の神様が怒っているからという噂がありますが」

「私が首塚の遺物を泥棒したという事実はございません、それに、首塚だけでなく、色んな場所で妖怪が発生しています。アナタは、それらの場所の地主のみなさんが宝物を横領したというのですか?」

失笑が漏れる

「とにかく、私の家に妖怪が現れたのは、偶然、たまたまだということでしょう、ですから・・・・・・・・・」

そこにいきなり男性と女性が現れる

「皆さんに謝罪します、知事、○○は確かに宝物を横領していました、これがその宝物です」

二人は知事の奥さんと息子さんだった。二人が風呂敷から取り出したのは20センチメートルくらいの金の聖杯だった、ふたりは知事を横に押して、マイクの前に立つ

「・・・・・・・・・・・もうお父ちゃんは黙ってて!そんな欲の突っ張ったことばっかり言ってると、最後はホントに死ぬで!、この通り!これが宝物です!これは、都庁の開発事業の時にあの塚を掘り出した時に石室の中から出来てたんです、ここに江戸時代の年号と、○○首塚 って書いてありますね。これが証拠です。

みなさん、どうもすみませんでした」

二人が土下座する

よこで、都知事が座り込んでいた。


翌日のニュースでは、

知事が辞職した事

知事に汚職や横領事件に関して検察が動き出した事

近日中に宝物を首塚に戻し、近隣のお寺の住職や神社の神主があつまって立派な法要がいとなわれること。

今度こそ盗まれないように頑丈な宝物室が神社の、首塚の横に作られる事になった

ということを各局がやっていた

「聖杯」といったけど、写真を見るとどっちかというと、湯呑みに近かった、寿司屋のでっかい湯呑み、純金製、そしてその表面には首塚のもととなる有名な武将の名前とその経緯、そして供養のお経が記されていた。その内容は、新聞には全文とその現代語訳がかいてあったけど、読んで3行目には目がチカチカしてきてそのまま睡魔に襲われてしまう。


「これで妖怪は出ないんだろうねえ」

私がテレビを見ていうと

「やと思うわ、あ〜これで引っ越しはしなくていいよね!私、やっぱり東京に居て東京の大学に行きたい!」

と妹が、何か声が明るくなっていた

最近はまた高校時代の教科書を持ち出して勉強を始めているらしい


私もそうだ、他に仕事が見つからないし、通勤時間が伸びるのはやーだ!


それから3ヶ月後、大々的な法要がとりおこなわれた。

あの宝物が返されて、臨時のでかい金庫みたいなものが神社の社務所に据え付けられ、宝物はそこに収められていた、その間、妖怪の出現や被害はテレビで報道されなかった。

多分本当に妖怪は出なかったし、そして被害も本当になかったんだろう。


都知事の選挙もあった。

毎回の通り、なんかおかしな人が出てきて、そして、大方の予想通り、保守系の、60近いおっさんが知事になっていた。

なんか、魚市場がナントカって言ってたけど、よくわかんないや。



私は今日も会社に行く。

最近、少しずつ、夜、暗くなってから、集まったり、店でお酒のんだりする楽しみが、人々に、増えてきているように思われた。

そんなある日、繁華街からの帰り

「ねぇ彼女~~、遊ばなーい?」

と、ブサイクな男が三人、まるでタコのような動きでナンパしてきた、はやりの恋愛工学ナンパだ

「あ、ごめんなさい、私、用事があるんで」

と、横を通り過ぎようとすると、フニャンと前に立ちふさがって、

「ホレホレ〜〜、お姉さんも遊びたいでしょ~~~」

と、

「うーんもう、家族が待ってるんで」

「はアーン」

と、腕を掴んでくる

「ちょっと、やめてよー」

と、腕を振りほどくと

「ううびゃあーやめてよーだってよーあははははー」

と、抱きついてくる

周囲はゲラゲラ笑って見てるだけだ


このやろう、宇宙に吹き飛ばしてやろかと、思った、その時

「うがぁあぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜」

と、

男の背中に白い妖怪が

「うわっ!!」

男も私も逃げようとする

「うあーなんだなんだなんだー」

男を追う白い妖怪

「ライトアロー!!」

私は魔法陣から白い光のやりを発射する

白い妖怪は光に包まれる

その瞬間、妖怪の正体が判明する

・・・え?ナニコレ・・・

その意外な正体に私は驚く

そして妖怪は光の中にきえていった

いや、退散したということか

光が消える

そこには

腰を抜かす男

目を見開く見物人たち


やっべ!やっちまったい!

みんなが目が眩んてるうちにそこを離れる。

そのまま駅に



一週間ほどして

会社から駅に向かってるときに

「ああー見つけた見つけたーーあなたあなたー」

と、40歳位の女性が

「はあ、何ですか?」

「あなたのような人を探してたのよー、ねえ、あなた、人助けしない?」

「は?」

「あ、私、こういうの」

名刺には

「女性の人権NPO 代表 弁護士 」

とあった



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