ゆかた祭りのお誘い


 そしてとうとう、『えさ』がぶら下げられたのです。

「フランソワーズさん、宜しくお願い致します」

「分かっています、ヴィーナス様と間近くでお話されたのですから、断るのなら大変ですが、誘うのでしょう、簡単ですよ」


 最後にフランソワーズさんの出番で、あっさりと決まったのです。

 ついでにもう一家族も望みましたが。


 六月十五日、浮田貴子、浮田京子、浮田明子の三人は釆女、つまり梓巫女(あずさ巫女)に昇格しました。

 勿論、山野五十鈴、山野乙女も同様です。


 とりあえず蓬莱を管轄する、バアル・ゼブルが昇格の挨拶を受けてくれました。

 そのほか蓬莱御巫(ほうらいみかんなぎ)に新しくなった、または昇格した方は、全員蓬莱ステーションに招待され、生まれて初めて惑星蓬莱を外から見たのです。


 相変わらず聖ブリジッタ女子学園山陽校で、クリちゃん、お京ちゃん、乙女ちゃんの三人は、仲良くいつも一緒です。


 今日は金曜日、乙女ちゃんは、お母さんの婦人服会社のモデルに、放課後から動員されて、お京ちゃんと二人で、油揚げ専門店コン太のお菓子などをいただき、宇賀ビルの喫茶室でお茶をしています。


「ねえ、クリちゃん、明日は用事があるの?」

「何もないわ、暇が有るだけね」

「じゃあ家に遊びに来ない、お祭りがあるのよ、縁日が出るわ、二人で行かない?」


「縁日って、何なの?」

「たこ焼きとか金魚すくいとか、色々なお店が出るの」

「面白そうね」


「ゆかた祭りといってね、姫路のゆかた祭りをまねたのよ」

「浴衣でいくとね、色々と得点があるのよ、家は毎年浴衣でいくのよ」

「でも……私、浴衣なんか持っていないし、着方も分からない……」


「私の浴衣を貸してあげるわ、クリちゃん、外人さんにしたら小さいものね、私と同じ背格好だから大丈夫よ、着つけぐらい、私がしてあげる」

「明日ね、必ず行くわ!」


「そうだ、お祭りは今夜から始まるのよ、だから今夜、家に泊まりに来ない」

「えっ、いいの?」

「歓迎するわ」


「でも、ご迷惑ではないかしら?」

「大丈夫と思うわ、なんなら、お母さんに聞いてみましょうか?」

 

 お京ちゃんが電話で聞いてみますと、『歓迎します』との事、しかもフランソワーズさんもヴァランちゃんも、一緒にいかが、との事です。


 今度はクリームヒルトが、フランソワーズさんに都合を聞いてみますと、『うかがいます』との返事でしたね。


 で、急遽、浮田家にお泊りとなったのです。


 お綺麗な外人さんご一家は、約束どおり午後六時に、タクシーで浮田さんのお家に押しかけます。


「よくいらっしゃいました、お食事はまだでしょう、ご用意していますのよ」

 貴子さんが歓迎してくれます。


 豪華なお食事が並んでいます、完全な和風ですね。

「いつもこんな御馳走を?」

 明子ちゃんが、

「初めてみたわ、いつもは焼き飯とかよ」

「明子!」

 と、貴子さんの雷が落ちました。


 フランソワーズさんが、

「恥ずかしながら、私は料理なんて出来なくて、立派ですね」

 などと、云っています。

「お嬢さんも、お料理はお出来になるの?」

 

 お京ちゃん、完全に下を向いています。

 あわててクリームヒルトが、

「私たち、まだ子供です、お料理はこれからです」

 などと云っていますが、出来ないといっているようなもの。


 ヴァランちゃんが、

「私はこの間、目玉焼きをつくったわ、でもクリームヒルト姉さまは、できなかったのよ」

「だって卵が、うまくわれなかったのですもの」

 この一言で、クリームヒルトもお京ちゃんの横で、下を向いてしまいました。


「私はだし巻きがつくれるのよ」

 と、明子ちゃんが胸を張って云います。

 どうやら二人の妹の方が、料理はましなようですね。


「まぁまぁ、ご飯を食べませんか?」

 貴子さんが話題を変えようとしてくれました。

「早く頂きましょう」

 とフランソワーズさん、こちらは本当にお腹が減ったようです。


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